【大紀元日本3月5日】戸籍上の違いで「社会保障」「教育」「就業」「交通事故賠償」が違うため、「同じ命だが価値が違う」などの種々の理不尽な不合理規定に対して、戸籍制度改革の声が日に日に増している。中国メディアの調査によると、調査対象の9割以上が戸籍改革の必要性を訴えている。
中宣部が新華社に委託刊行している評論誌「半月談」の報道では、戸籍制度の改革への関心と討論を再び呼び起こした。それよると、国務院14個部門から成る調査チーム6班が、2006年に全国省市26個に赴き、戸籍改革プロジェクトで総合調査し研究した後、戸籍改革の時期が基本的に成熟したとの認識に到達した。
中国青年報社会調査センターと某ネット新聞はこのほど、1万1168人を対象に調査を行い、91・7%の人たちが戸籍改革は必要だとの回答を寄せた。
戸籍で違う社会保障
都市部と農村部とでは差異が巨大なため、経済が発展した大都市では、戸籍に付随する種々の福利待遇が一種の誘惑になっている。
「中国青年報」によると、このたびの調査で、40・7%の人が戸籍の重要性を挙げた。23・0%の人は、「良い仕事」と「戸籍の解決」どちらかを選択するとしたら、「戸籍の解決」を望むという。
一般人の認識では、戸籍の恩恵は「子弟の就学に便利」(57・5%)が首位で、その次は「医療保障、社会保障の面で有利」(35・9%)だ。
中国社会科学院の専門家の指摘によると、北京市に戸籍を有する市民の場合、もし年収が2500元以下であるならば、最低生活保障の範囲に入る。これに対し、農村部に戸籍を有する人は、正直な話、北京市に引っ越したい状況だ。統計によると、年収2500元以下の農民は、2億人近くいる。
改革の声が停止
中国での都市部と農村部での収入格差は不断に拡大し続けており、その矛盾も露呈しているため、戸籍を改革する声が途絶えたためしがない。広東省が2001年10月に打ち出した政策は、都市部と農村部との「統一戸籍制度」は、社会各界から好評を得たが、半年もしないうちに低調になった。鄭州市は2003年に戸籍を完全に解放したが、2004年以降「人口の激増は都市部にとってストレス」の理由で急きょ取りやめた。
これに対して一部の人は、「現在の戸籍改革の多くは、公安局が農民に都市部への切符をきっているようなものだ。その他の部門は農民をコミュニティーの一員だと認めていないし、都市の中には農民の居場所など本当はないのだ。更に肝に銘ずべきは、都市部に居場所がないばかりか、畑が荒れて農林を補填するのが何だとか…農村の合同医療がどうだとか…そのようなことが農民には何ら補償されていないことだ」と明言している。
調査対象の一部によると、戸籍改革は世帯数の問題ではなく、都市部と農村部との差異、その不平等の問題を解決することだ。
中国人民大学の王太元教授の分析によると、大都市の市政部門は「マネーロンダリング部門」と「利権部門」に分かれているという。現在の状況では、農民工の多くが、「銀行」「商業」「サービス」などマネーロンダリング部門で勤労して、黙々として声を挙げないため、「教育」「住宅管理」「公安」などの利権部門は、農民工が都市部に入るとストレスになると嘯いている。
北京大学法学院のある教授によると、改革制定の手続きをしているのが全て都市部の人間で、改革を論述する人も都市部の人間だ。「田舎ものは蚊帳の外で、当然その中には入れてもらえない。私が思うに、この種の問題を解決する政策決定は、政府ではなく人大や全人大に委ねられるべきで、全人大は特に基本的な原則を示すべきだ。所謂、郷下人(地方出身者)の待遇が、都会人の慈悲による賜り物ではなく、一種の権利、一種の公民権として確立されるべきだ」。
ネチズンたちの声
農民たちは、共産党の革命に協力したが、党が一旦政権を掌握すると農民は二等国民に降格され、約束されたものは泡と消えた。近年来、農村部と都市部との収入格差は開く一方で、その矛盾も先鋭化しつつあり、少なからぬ人々がその不平等の根本である戸籍制度を見直そうとしている。以下は、そのようなネチズン(ネット利用者)たちの生の声だ。
「中国は中国人のもののはずだが、どうしてどこに行くのにもこう制限があるのか?どのような仕事をやったらいいのか?どのような仕事をやらそうとしているのか?」
「憲法の規定では、公民にはどこに住んでもいいということになっている。しかしこういった戸籍制度は、どう解釈したらいいのか?何だろう法律とは?」
「諸悪の根源である戸籍制度は、権力者が民衆を犬のように飼い馴らす道具だ」「あー憂鬱だなあ、そんなに悪いことばかりしていると造反するぞ!」
「私は社会主義社会で平等教育を受けたが、現実にはなぜこのように不平等が蔓延しているのか?現在の戸籍制度について言えば、わずか紙切れ一枚の戸籍証明で、数億の人たちが医療、子女教育、社会保険、住宅などの基本的権利において不平等を強いられている」
「農民たちが都市部に行って働き始めると、農民工(出稼ぎ人)、郷下人(田舎者)などの蔑称で呼ばれる。彼らは、昼となく夜となく、ビルの建設現場などで汗水たらして、惜しげもなく労働力を提供しているが、その報酬は雀の涙ほどだ。現地の人たちが所有しているような、住宅、保険、子女教育などの基本的権利など夢のまた夢で…」
戸籍制度は、現代中国の一種の人種差別制度だ。中国人は、生れ落ちた家庭の「種族」が、その人の種族となる。どこの家庭で生まれたかが、その戸籍となり、戸籍制度自体が差別となっているのが現状だ。
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