カナダ対中人権外交、中国側が態度を急変、再び会談を要望

2006/11/19
更新: 2006/11/19

【大紀元日本11月19日】APEC首脳会議の期間中に予定されていた、カナダハーパー首相と中国胡錦怒涛・総書記との単独首脳会談が中国側により直前に取消されていたが、中国は16日、態度を急変し、会談に応じると表明した。ハーパー首相が人権問題を棚上げにして中国との貿易関係を発展させる意向はないと発言したことを中国側が重視したものと見られる。カナダ政府関係筋によると、中国側の急変は、ハーパー首相の会談メモにあげられている法輪功学習者を狙った臓器狩りの問題と関連しているという。

カナダの主要メディア、グローブ・アンド・メール紙(Globe and Mail)は15日、ハーパー首相の報道官サンドラ・ボクラ氏の発言を引用して、今回の首脳会談は中国当局の要望に応じたものと報道した。サンドラ・ボクラ報道官によると、「中国側は我々と接触し、今回の会談を提案してきた。我々は同意したが、その後、この会談が取り消されたと知らされた」という。

その後、ハーパー首相は15日(カナダ時間)、ベトナムに出発する直前、「わが国が全世界に貿易関係を拡大することを、カナダ国民は願っていると理解している。我々もこのように努力してきた。しかし同時にカナダの重要な価値観…我々が堅持している民主、自由、人権を犠牲することを、国民は望んでいないと認識している」と発言、胡総書記との会談が取り消しになったとしてもカナダ政府が人権重視原則については譲歩しないと強調した。

ハーバー首相が中国側に妥協しない強硬な立場を表明した直後、中国外交部の姜報道官が定例の外交部記者会見で、胡総書記がAPEC会議中、ハーバー首相と会談を予定をしていると発表した。姜報道官は同時に、「我々は、他国が人権問題を理由に中国の内政に無責任な見解を持つことに反対する」とカナダ側をけん制する発言をした。

ハーバー首相の発言で「人権を犠牲しない」としたのは、会談で中国側に言及すると見られている法輪功学習者を狙った臓器狩り問題であるようだ。内情を知る専門家は、「カナダ国内において、生きている法輪功学習者の臓器が強制摘出されている問題に強い関心を示しているため、このことも会談の席で提起される可能性が高い。中国は公で人権問題を非難されるのを毛嫌いすると同時に、外交や貿易交渉の場で中国の臓器狩り問題が言及されるのを回避するために、一方的に今回の首脳会談を取消したのではないか」と分析した。

また、専門家は「ハーバー首相が中国当局の会談取消について妥協せずに毅然とした態度を示したため、中国は恫喝的な手段はカナダの態度をさらに硬化させるだけと認識し始め、事態が国際社会で騒がれ、臓器狩りの真相の蔓延を防ぐため、再び首脳会談を持つと言い出したのではないか」と推測した。

カナダ政府:人権問題の原則を犠牲しない

米ワシントン在住の中国問題専門家・石蔵山氏は、「今回、中国の態度が急変したのは、カナダ政府が原則を貫いた外交を堅持した結果であり、喜ばしい勝利である。カナダの行動は、国際社会が中国当局の人権問題を公で非難する流れを開拓したかもしれません」と見解を示した。

ハーバー首相の態度表明はカナダ国内でも大きな反響を呼んだ。グローブ・アンド・メール紙が行ったアンケート調査では、2万3千あまりの回答のうち、62%の人がハーバー首相を支持しているという。

大学生らによる政治改革を求める平和的な抗議活動を武力弾圧した1989年6月の天安門事件で、中国共産党(中共)政権の残酷な弾圧に驚いた西側国家は、中国に武器禁輸などの制裁で抗議した。中共当局はそれに対し、公での人権問題の議論されるのを回避するために、経済利益をちらつかせて欧米国家に非公開で個々に意見交換するのを約束したが、西側国家もこのような中国当局の策略を暗黙に了解している。例えば、中国国内で多発している各地の人権抗争、法輪功やキリスト教地下教会への迫害問題など、西側国家は毎年中国当局に言及しているが、迫害は依然として継続している。

近年、一部の西側国家がこのような経済利益優先の見て見ぬふりをする対中態勢を変えてきた。今年1月にカナダ保守党政権が発足して以来、ハーバー首相は外交上、強硬にモラル原則を堅持し、中国の改善されない人権記録に率直な批判を続けてきた。

先月25日、駐カナダ中国大使館の二等秘書官・王鵬飛氏は、外交ビザの延長がカナダ外務省に却下されたため、カナダから帰国した。情報提供者の話によれば、同秘書官がカナダで法輪功学習者の情報を収集する活動に参加、法輪功への迫害活動に係わったとの疑いが浮上、外交官の職権範囲を超えたとして、ビザの延長が拒否されたという。

今年9月、カナダ議会は全会一致で、チベット亡命政府の指導者、ダライ・ラマをカナダの名誉国民と認定した。中国は、カナダのこの行動は両国の貿易関係にマイナスの影響を与えたと反発した。

今年5月、カナダ政府元高官のデービット・キルガー氏と人権弁護士デービット・マタス氏が、中国国内での生きている法輪功学習者の臓器を強制摘出するとの告発を調査し始めた際に、カナダ保守党議員連盟の議長ラヒム・ジャファ(Rahim Jaffer)氏は、国会で開かれた記者会見に出席し、調査を支持する意向を示した。カナダ保守党の国会議員は法輪功愛好者による平和的な嘆願活動を強く支持しており、法輪功迫害真相の連合調査団(CIPFG)に参加を申し出た国会議員もいるという。このように、カナダの国会議員が頻繁に公の場で法輪功への集団迫害を非難し続けてきたことについても、中国側は不快感を抱いているようだ。

また、今年4月、カナダマッケイ外相は、中国当局がカナダに大量の産業スパイを潜伏させたと非難したのに対し、中国側が強く否定する経緯があった。

カナダと中国の貿易関係

カナダ統計局が最近公表した両国の貿易統計によると、カナダ対中国の貿易赤字は1995年の12億カナダドルから2005年の224億カナダドルに達し、10年で18倍も増加した。

カナダの第二貿易相手国は中国であるが、対中国の輸出額はカナダの総輸出額のわずか1・6%しか占めていない、主な輸出品目は、木材製品と金属原材料。カナダの貿易の主体国は米国である。

専門家は、カナダと良好な外交関係を維持することは、中国当局にとって非常に重要であると指摘、「中国は大量の製品をカナダに輸出できると同時に、カナダの豊富なエネルギーと鉱業資源も、中国にとって最も必要なものである」と分析、中国は経済利益を考慮しても、カナダとの関係を安易に悪化させないはずと示した。

米RFA放送によると、人権団体アムネスティのトロント支部の中国ウォチャーであるクリカー氏は、カナダ政府が人権問題において中国に対して強硬な立場を取ることは両国間の貿易関係に影響しないと指摘。同氏は、中国の貿易関係をカードにして西側国家を脅かすような行為は辞めるべきだという。

(記者・文華)