8月経常黒字4兆620億円 海外投資収益5兆円超が牽引 貿易収支は赤字転落

2026/10/08
更新: 2026/10/08

財務省が10月8日に発表した2026年8月の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資などの取引状況を示す経常収支は4兆620億円の黒字となり、前年同月から4339億円増加した。

海外子会社からの配当金や外国債券の利子などを含む第一次所得収支が5兆1332億円の黒字となり、経常黒字を押し上げた。一方、原油や半導体関連製品などの輸入増加を背景に、貿易収支は前年同月の黒字から6877億円の赤字に転じた。

経常収支を構成する4項目のうち、黒字を確保したのは海外からの配当や利子などの第一次所得収支のみだった。モノの輸出と輸入の差を示す貿易収支が6877億円、旅行や特許などの収支であるサービス収支が1158億円、海外への送金や拠出金である第二次所得収支が2677億円のそれぞれ赤字となったものの、海外投資から得られる収益がこれらを上回った。

前年同月の経常黒字は3兆6281億円で、今回の黒字額はこれを約12%上回る水準となった。季節変動の影響を除いた季節調整値でも、経常黒字は2兆9794億円と、前月の2兆5231億円から18.1%増加した。

海外子会社の配当と外国債券の利子が増加

経常黒字の拡大を支えた第一次所得収支は、前年同月の4兆2227億円から9105億円増加し、21.6%増となった。

特に伸びが大きかったのは、日本企業が海外子会社などから受け取る配当金である。直接投資の配当金収支は前年同月の1兆1957億円から1兆6991億円へと5034億円増加した。配当金の受取額も1兆4321億円から1兆9925億円に拡大した。

外国債券などから得られる利子の収支は1兆8192億円となり、前年同月から2117億円増加した。外国株式や投資ファンドからの配当金収支も1874億円増の6403億円となった。

一方、海外子会社が利益を配当せず、現地事業への再投資に充てた収益は9346億円で、前年同月と同額だった。

2025年8月には直接投資収益の黒字縮小などを背景に、第一次所得収支が前年同月から5609億円減少していたが、今回は配当金や利子収入の増加が黒字拡大に寄与した。

こうした海外投資収益への依存は、2026年上半期の国際収支にも表れている。1~6月の経常黒字は17兆4292億円だったのに対し、第一次所得収支の黒字は20兆4914億円に達していた。

輸出増を上回る輸入拡大、貿易収支は赤字転落

海外投資収益が拡大する一方、モノの輸出入を示す貿易収支は悪化した。

国際収支ベースの輸出額は前年同月比16.9%増の9兆8623億円だったが、輸入額は26.7%増の10兆5500億円となった。輸入の伸びが輸出を上回った結果、貿易収支は前年同月の1138億円の黒字から6877億円の赤字に転じた。前年同月からの悪化幅は8015億円に上った。

9月16日に公表された8月の貿易統計でも、同様の傾向が確認されている。

通関ベースの輸出額は前年同月比19.3%増の10兆484億円、輸入額は28.0%増の11兆1,540億円となり、貿易収支は1兆1056億円の赤字だった。赤字は4か月連続で、輸出額と輸入額はいずれも比較可能な1979年以降、8月として過去最高となった。

輸入額の増加に大きく寄与したのは原粗油で、前年同月比58.7%増加した。半導体等電子部品は82.1%増、電算機類は54.2%増となり、エネルギー関連品目に加えて電子機器関連の輸入も大幅に伸びた。

輸出では半導体等電子部品が52.3%増、自動車が16.5%増、半導体等製造装置が40.1%増となった。

大和総研は、中東情勢を受けた原油供給の制約が続くなか、代替調達が進んだことで8月の原油輸入数量は前年同月をやや上回ったと分析した。一方、供給制約による原油価格の上昇が輸入金額を押し上げていると指摘している。

為替相場も輸入額に影響する要因となった。8月の税関長公示レートの平均は1ドル=160.64円で、前年同月の147.73円に比べ8.7%の円安だった。

なお、国際収支ベースの貿易赤字6877億円と通関ベースの貿易赤字1兆1056億円には差がある。これは輸入額に運賃や保険料を含めるかどうかなど、統計上の計上方法が異なるためである。

旅行収支と知的財産収入は黒字拡大

サービス収支は1158億円の赤字となったものの、赤字幅は前年同月の2667億円から1509億円縮小した。

赤字幅の縮小には、特許やライセンスなどの対価を含む知的財産権等使用料の収支改善が寄与した。同収支の黒字額は前年同月の4362億円から6823億円に拡大した。

訪日外国人旅行者の国内消費などを反映する旅行収支の黒字も、前年同月の3624億円から3999億円に増加した。

一方、クラウドサービスなどを含む通信・コンピュータ・情報サービスの収支は、前年同月の1932億円の赤字から2464億円の赤字へと悪化した。

国際機関への拠出金や海外への送金などを含む第二次所得収支は2677億円の赤字だった。前年同月の4417億円の赤字からは1740億円改善した。

外貨準備は15兆円超減少、為替介入との関係も

国際収支の金融収支では、8月の外貨準備が15兆907億円減少した。7月には3764億円増加しており、大幅な減少に転じた。

財務省は、7月30日から8月26日までの期間に15兆3993億円の外国為替平衡操作(為替介入)を実施したと公表している。

経常黒字拡大も、貿易赤字との対照鮮明に

今回の国際収支は、日本の経常黒字を海外投資収益が大きく支える一方、モノの貿易では輸入額の増加が輸出額の増加を上回る構図を示した。

第一次所得収支の黒字額5兆1332億円は、経常黒字4兆620億円を1兆円余り上回った。海外子会社からの配当や外国債券の利子などが増える一方、原油や半導体関連製品などの輸入拡大によって貿易収支は赤字に転落している。

サービス収支は旅行収支や知的財産権等使用料の黒字拡大によって改善したものの、赤字解消には至らなかった。

8月の経常黒字は前年同月から拡大したが、その内訳を見ると、海外で蓄積した資産から得られる収益と、国内外のモノの取引による収支の違いが一段と鮮明になっている。