知られざる臓器摘出の現実 渡航移植の闇とリスクを問うポスター展開催 

2026/10/05
更新: 2026/10/05

東京都武蔵野市の「武蔵野プレイス・ギャラリー」(最寄駅はJR武蔵境)で10月4日、海外での不透明な臓器移植(渡航移植)の問題点や深刻なリスクを視覚的に伝える「国際ポスターコンクール作品展」が開催されている。

会期は6日までの3日間。会場には、世界70か国のデザイナーから寄せられたポスター作品が展示され、出所不明な臓器をめぐる倫理的課題や、渡航移植に潜む医療上の危険性を浮き彫りにしている。

現地で来場者を迎えるスタッフたちの言葉からは、日本国内でこの実態がほとんど知られていないという危機感と、命の尊厳に対する切実な訴えが伝わってくる。

熱心に説明を読む来場者(写真:大紀元・大道)

「知られていない」という最大の危険

国際移植学会(TTS)や国際腎臓学会(ISN)が2008年に採択した「イスタンブール宣言」では、不当な臓器取引や移植ツーリズムの禁止、透明性の確保が強く求められている。

特に中国では2000年代、急速に臓器移植数を増やし、今や世界第2位の移植大国になっている。しかしその移植臓器が誰のものか知ることができず。英国で行われた2009年の独立民衆法廷「中国法廷」では、中国において長年にわたり大規模な強制臓器摘出が行われており、人道に対する罪に該当すると満場一致で結論づけられている。

また米連邦議会上院は9月28日、1999年から中国共産党(中共)政府から弾圧を受けている法輪功学習者や一部の宗教団体、少数民族の人々が不法に生体臓器を収奪されているとして「法輪功および臓器収奪被害者保護法案」を全会一致で可決した。臓器収奪に反対する立場で、米民主、共和両党が一致している。

一方で、日本国内において渡航移植の裏に潜む人権侵害や強制臓器摘出の問題についての認知度は、依然としてきわめて低い。

主催団体「命のバトンを守る会」スタッフの佐藤マチ子さんは「世間のほとんどの人はこの事実をはっきりとは知らない。会場で説明を受けて初めて『えっ』と絶句する人が大半だ」と語る(写真:大紀元・大道)

主催団体「命のバトンを守る会」スタッフの佐藤マチ子さんは、「世間のほとんどの人はこの事実をはっきりとは知らない。会場で説明を受けて初めて『えっ』と絶句する人が大半だ」と語る。

佐藤さん自身、中国などで行われている不透明な臓器調達の実態を初めて耳にした際は「信じられない」と強いショックを受けたという。言葉だけでは伝わりにくいこの問題を、ポスターという芸術作品を通じて提示することで「日本人にすっと理解してもらえる」と確信し、現場で「生の声」を届ける活動を続けている。

「見たくない現実」から「伝えなければならない真実」へ

現実に起きている事実だと確信したとき、「知ってしまった以上、伝えていかなければならない」という責務感へ変わっていったという古下仁美さん(写真:大紀元・大道)

会場で解説に立つスタッフ自身も、かつては目を背けたくなる葛藤を抱えていた。スタッフの古下仁美さんは、不当な臓器摘出の存在を初めて知ったとき、「想像もできない恐ろしい話で、耳を傾けることすら嫌だった」と振り返る。しかし、それが現実に起きている事実だと確信したとき、「知ってしまった以上、伝えていかなければならない」という責務感へ変わっていったという。

展示に足を運ぶ来場者の中にも、当初は「怖い話は見たくない」と拒む者が少なくない。しかし、ポスターを鑑賞しスタッフと直に言葉を交わす中で、涙を流しながら深刻な事態を受け止め、「来てよかった。事実を知ることができてよかった」と感謝して立ち去る姿が見られる。古下さんは「大手メディアで十分に報じられないからこそ、顔を合わせて対話し、人間の良心に訴えかける草の根の啓発が重要なのだ」と語る。

「命を救う医療」の裏に潜む不条理と深い後悔

海外で出所不明の臓器移植を受けて帰国した患者が、国内の病院でアフターケアや診療を拒否され、たらい回しにされる深刻な事例が相次いでいると警鐘を鳴らす王雪静さん(写真:大紀元・大道)

渡航移植のリスクは、倫理面にとどまらず医療現場での実害としても現れている。スタッフの王雪静さんは、地理的近さや適合率の誤解から中国などへ渡航する患者が多い現状に警鐘を鳴らす。

王さんによれば、海外で出所不明の臓器移植を受けて帰国した患者が、国内の病院でアフターケアや診療を拒否され、たらい回しにされる深刻な事例が相次いでいるという。移植後は拒絶反応を抑える投薬管理が不可欠だが、国内で適切な治療を受けられず状態が悪化し、「こんなことになるなら渡航移植を受けなければよかった」と激しく後悔する患者も存在する。

さらに王さんは、「自分が生きるために、出所不明の見知らぬ誰かの命が奪われているかもしれない。情報の透明性がない移植は、受ける側にとっても大きな不安と罪悪感を残す」と指摘する。過ちを防ぐためには、行政や国が事実関係やリスクについて100%の透明性をもった情報公開を行い、法整備や啓発活動を徹底することが不可欠だと強調した。

私たちに突きつけられた「命の選択」

展示会場のメインポスターには、「その『命のバトン』、どこからきたか知っていますか?」という問いかけが記されている。自分や家族の命を繋ぐための選択が、世界のどこかで誰かの命や尊厳を不当に奪った結果成り立っているとしたら。

ポスター展は渡航移植の危険性を伝えるだけに留まらず、知ろうとしない無関心がいかに恐ろしいかを私たちに静かに問いかけている。命のバトンを正しく繋ぐとはどういうことなのか。私たちはこの現実から目を背けず、透明性ある倫理観と命のあり方について、今こそ真剣に向き合う必要があるだろう。

最終日となる6日は10時から16時30分までの展示となっている。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。