【分析】米中AI競争が激化 東南アジアの「どちらにもつかない」戦略に圧力

2026/08/23
更新: 2026/08/23

米国と中国共産党を巡る人工知能(AI)技術とサプライチェーンの競争が激しさを増す中、東南アジア諸国が長年堅持してきた「どちらにもつかない」戦略が、新たな圧力に直面している。

『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が8月21日に報じたところによると、米中両国は最近、東南アジア諸国をそれぞれが主導するAI協力組織に参加させようと、積極的に働きかけている。

米政府はこれまでに「パックス・シリカ(Pax Silica)」構想の設立を推進し、AIモデル、半導体、重要鉱物のサプライチェーンなどの分野で協力を強化すると同時に、中国共産党(中共)のサプライチェーンへの依存を減らすことを目指している。現在、東南アジアではシンガポールとフィリピンの2カ国が同構想に参加している。

一方、中共政府は7月、上海で「世界人工知能協力機構(Waico)」を設立した。最初の加盟国は主にグローバルサウスの国々で構成されている。東南アジアでは、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマーの5か国がすでに加盟している。

米側「双方に頼ることはできない」と警告

ロイター通信が8月14日、米政府当局者と米国務省の内部書簡の草案を引用して報じたところによると、米政府は6月に行われた第2回パックス・シリカ・サミットで採択・署名された「人工知能機会声明」に署名した35か国に警告を発し、協力する陣営を慎重に選択するよう求める準備を進めている。

草案では、ある国が「パックス・シリカ」と競合する別のAI組織にも同時に参加した場合、米国主導のAI協力枠組みに引き続き参加できなくなる可能性があるとしている。

草案は、複数の枠組みに参加する国は、同等の加盟国としての約束を得ることはできないと強調し、関係国に対してAI協力を巡り「慎重に選択する」よう促している。米国務省は、メディアが報じたこの内部文書についてコメントしていない。

現在、米中双方の構想に参加していることが確認されている国にはカザフスタンがある。同国は重要な重要鉱物資源を有しているため、米政府から特に注目されている。

中共政府 影響力拡大を積極的に推進

一方、中共政府は世界人工知能協力機構を、主にグローバルサウス諸国で影響力を拡大するための重要なプラットフォームと位置付け、とりわけ東南アジアで積極的に推進している。

『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が消息筋の話として伝えたところによると、ここ数か月、中共当局者は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に対し、上海の世界人工知能協力機構への参加を働きかけ、創設メンバーになれば関連する「特別な特権」を得られると強調していた。

東南アジア、引き続き均衡維持を模索

ユーラシア・グループのシニアアナリスト、ジェレミー・チャン氏は、東南アジアが米中のAI競争における重要な争奪の場になる可能性があると指摘した。

同氏によると、現在も東南アジア諸国は米中の間で、どちらの側にも動ける選択の余地を維持したいと考えている。しかし、米政府と中共政府が圧力を強めるにつれ、こうした「どちらにもつかない」戦略を維持することは、ますます困難になっている。

シンガポールの南洋理工大学で外交政策を専門とするディラン・ロー准教授も、米中が東南アジアに圧力をかけること自体は新しい現象ではないが、現在では双方が各国に選択を求める姿勢を、より公然と示すようになったと指摘した。

AIモデル、半導体、重要鉱物が戦略競争の重点となる中、東南アジア諸国が、米国主導の技術体系と中共が推進する開放的なAIエコシステムの間でどのように立ち回り、同時に双方との協力を維持するのかは、「非同盟」政策にとって新たな試練となる。

高杉