中国負担の訪中交流に米教育団体が警鐘 日本の現状は

2026/08/17
更新: 2026/08/17

米報告書は、中国共産党が孔子学院縮小後、費用負担付きの訪中交流「YES」を通じて米国の若者に影響を及ぼそうとしていると指摘。日本でも孔子学院や教育・青少年交流が続く。

米国の教育政策団体「DefendingEducation」は8月13日、「LittleRedClassrooms(小さな赤い教室)」シリーズの続編となる報告書を公表した。報告書は、中国共産党(中共)が孔子学院の閉鎖や縮小が進んだ後、「青年使節奨学金(YoungEnvoysScholarship、YES)」などの交流事業を通じ、米国の若者の中国や中国共産党に対する認識に影響を与えようとしていると指摘している。

報告書は、中共当局や関連機関が「一帯一路」などのソフトパワー政策を通じ、政治的、文化的な目的を推進してきたと主張している。対象は幼稚園児から高校生、大学生まで幅広いという。

報告書によると、「青年使節奨学金」には米国内の83校以上の大学と26校のK-12教育機関が参加し、対象地域は30州に及ぶ。参加者向けのニュースレターには、中共当局が支援する交流事業を肯定的に評価する体験談も掲載されているという。

中国側が負担する渡航費・滞在費と支援内容

YESは、習近平が2023年に示した「5年間で5万人の米国青年を中国に招く」との構想を具体化する事業として、2024年に始まった。

プログラムには、大学生向けの短期交流、大学間の交換留学、視察、教員交流、夏季・冬季キャンプ、短期・長期留学などが含まれる。

事業によっては、国際航空券、宿泊費、授業料を中国側が全額負担する。参加者が往復航空券代を負担する場合も、中国到着後の学習、視察、宿泊、食事、移動にかかる費用は中国側が負担する。中国駐米大使館は、「青年使節奨学金」参加者の査証申請手数料も免除している。

「青年使節奨学金」を運営する中国教育国際交流協会(CEAIE)は、各国の人々の相互理解と友好を深めることを目的に掲げている。一方、中国語版のウェブサイトには、「共産党の指導を堅持し、共産党の活動を協会の運営・発展の全過程に組み込む」と記されている。

2025年、アメリカ共和党のジョン・ムーレナー連邦下院議員は地元ミシガン州の学校関係者に書簡を送り、中国共産党と関係する組織が資金を提供する訪中プログラムについて、「真の文化交流ではなく、宣伝・影響工作である」と警告した。

ムーレナー氏は、CEAIEを含む複数の組織について、米国の情報機関が中国共産党の統一戦線工作に関係する団体と位置付けていると指摘した。

訪中交流で浮上した懸念

報告書は、米国で孔子学院の閉鎖や縮小が進んだ後も、中国共産党が無料の訪中交流を通じ、米国の生徒や教育関係者との接点を維持しようとしていると指摘している。

2024年1月、アイオワ州マスカティン学区は、生徒24人と教育関係者4人が中国の教育相の招待を受けて訪中すると発表した。費用は中共当局が全額負担したという。

報道によると、習近平は同地の「古くからの友人」に書簡を送り、教員と生徒を中国との交流に招いた。中国国営メディアは、この訪問を大きく取り上げた。

交流後、アイオワ州の州議員の一人は、今後予定されていた訪中交流の中止を求め、「中国共産党は友人ではない」と述べた上で、同党が世界各地で影響力を広げていると批判した。

共和党のマリアネット・ミラー=ミークス連邦下院議員も、訪問には国家安全保障上の懸念があると指摘した。中国共産党が米国で広範な影響力工作を進めていることの表れだとし、一部の学区は生徒の安全や国家安全保障へのリスクを十分に認識していない可能性があると警告した。

ただ、「青年使節奨学金」の発表によると、2026年3月にはマスカティン高校の生徒と教職員、計100人の代表団が無料で中国を訪問した。

報告書を出した団体

DefendingEducationは、調査や訴訟、政策提言を通じて、教育現場における特定の思想や政治的な影響に反対している全米規模の団体である。同団体は、政治化されていない教育の実現を掲げている。

今回の報告書は、「LittleRedClassrooms」シリーズの続編である。2023年に公表された第1弾報告書は、中国教育部や関連組織が孔子学院を通じて米国の小中高校や学区との関係を築き、中国や共産主義に対する米国社会の認識に影響を与えようとしてきたと主張している。

日本でも続く孔子学院 日中青少年・教職員交流

日本でも、中国側が費用を支援する青少年・教育交流が行われている。

日中友好会館は2025年、外務省が推進する「JENESYS2024」の一環として、中国に派遣する日本の大学生93人を募集した。参加者は日中青少年交流、中国の大学生との交流、企業や施設の視察などに参加する予定とされた。

募集要項によると、国際航空券や中国滞在中の宿泊費、移動費、食費などの主要な費用は、中国日本友好協会が負担する。参加者は日本国内の一部交通費やパスポート取得費用などを負担する。

一般社団法人日中国際交流協会は、中国駐日大使館教育処の助成を受け、東京都と近隣地域の高校生約40人を対象に、北京で5泊6日の友好研修旅行を実施してきたとしている。同協会によると、2016年以降、100人を超える高校生が参加した。

教職員交流や高等教育の分野でも、中国教育国際交流協会は日本の教育機関との協力を続けている。日本学生支援機構(JASSO)は過去にCEAIEと協力覚書を結び、留学生の派遣・受け入れ、大学間交流の促進、情報交換などで協力するとしている。

2024年に開かれた第10回日中教育交流会は、CEAIEが主催し、JASSOが共催した。日本の文部科学省と中国駐日大使館も支援した。

日中間の教職員交流は複数の団体が長年行っている。ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)は、中国教育部やCEAIEと連携し、両国の小中学校教職員による相互訪問、教育現場の視察、交流活動を行っているとしている。

日本の孔子学院はピーク時から減少したが、現在も10校ある。設置先には、早稲田大学、立命館大学、立命館アジア太平洋大学、桜美林大学、愛知大学、大阪産業大学、岡山商科大学、北陸大学、札幌大学、山梨学院大学などがある。

李思斉