中国 成績より大切なものを 教育現場から上がった悲痛な声

「子供たちの目から光が消えた」 中国の終わらない教育競争

2026/06/25
更新: 2026/06/25

毎年6月、中国では大学統一入試「高考(ガオカオ)」が行われる。今年も1千万人を超える若者が受験に挑んだ。

17年間教壇に立つ高校教師は、中国の教育競争の現実を涙ながらに訴えた。「子供たちの目から光が消えた」という言葉が、多くの共感を呼んでいる。

教師は、自習が終わった夜、まだ灯りがともる教室を見つめながら胸が締め付けられたという。

「朝5時に教室で勉強を始め、夜12時になっても机に向かっている子供たちがいる。私はそんな子供たちを数え切れないほど見てきた。みんな親思いで、優しく、まじめな子ばかりだ。それなのに、成績という一つの物差しだけで『失敗者』にされてしまう。成績以外に欠点などない子供たちなのに」

教師が最も胸を痛めているのは、生徒たちの変化である。

「17年前に教師になった頃の高校生は、休み時間になると友達とお菓子を分け合い、将来への夢を語り合っていた。しかし今は、多くの子供たちの目から光が消え、少年少女らしい輝きが少しずつ失われている」

実際、その負担は大人以上ともいえる。北京大学の調査によると、中国の高校生の週当たりの学習時間は59.7時間、中学生は55.2時間、小学生でも46時間に達している。一方、2023年の中国の会社員の平均労働時間は週49時間で、高校生は社会人より約11時間も長く勉強している計算になる。

睡眠不足も深刻である。高校生の平均睡眠時間はわずか6.5時間しかない。SNSには「夜12時半まで宿題をして朝5時に起きる」「宿題が終わらず午前4時まで起きていた」といった声も少なくない。学校によっては眠気を防ぐため、立ったまま授業を受けたり、腕を高く上げながら音読したりする光景もみられる。

その代償は、子供たちの心に重くのしかかっている。SNSには「私の学校では毎学期、誰かが飛び降りる」「クラスに抗うつ薬を飲んでいる子が何人もいる」といった深刻な声も寄せられている。

中国の精神・心理の実態をまとめた2025年の報告書によると、抑うつ傾向は小学生で10%、中学生で30%、高校生では40%に達した。また、2024年上半期の青少年自殺率は前年同期比76.9%増加し、自殺や自傷行為をした子供の多くは13~14歳前後だった。

背景には、中国の教育制度がある。大学入試が事実上、唯一の成功ルートとされているため、学校も家庭も試験対策に集中せざるを得ない。子供たちは大量の問題集を解き続け、早い段階から終わりの見えない競争に巻き込まれている。

しかし近年は、必死に勉強して大学を卒業しても、希望する仕事に就ける保証はない。就職難が続き、「ここまで頑張る意味はあるのか」という声も広がっている。

教師は保護者にこう訴えた。

「子供が『つらい』と言えた時は、助けを求めているサインである。静かに抱きしめ、『大丈夫、あなたの味方だ』と伝えてほしい。この世で子供たちの目の輝きほど大切なものはない。心からの笑顔ほど尊いものもない」

未来を育てるはずの教育が、子供たちの笑顔を奪っているのだとすれば、その競争は本当に必要なのか。教師の問いかけは、中国社会全体に向けられている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!