中国で成人の玩具消費が拡大 若者の「感情消費」と市場成長の実態

2026/06/14
更新: 2026/06/14

近年、中国では成人がぬいぐるみやブロック玩具、ブラインドボックス、キャラクターIPとのコラボ商品などを購入する動きが広がっている。18歳から39歳の年齢層が、特定の玩具カテゴリーで主要な購買層となっている。こうした消費は「自分を喜ばせる消費」や「感情消費」と呼ばれている。  

専門家の中には、この背景について、経済の低迷や雇用環境の厳しさ、社会的な圧力の高まりがあると指摘する声がある。若者が手頃な価格の商品を通じて、一時的な心理的満足感を得ようとしているとみられる。  

中国メディア『第一財経』は6月12日、広州や深圳などの商業エリアで、ハリー・ポッターのコラボ商品やレゴのパーツ、ポケモンカード、アイロンビーズ、IPコラボの金製アクセサリーなどが、成人の間で人気を集めていると報じた。店舗の売り場も、子ども向けから成人の嗜好に合わせた構成へと変化しているという。  

EC大手の淘宝と天猫は2026年3月、トレンド系ぬいぐるみや組み立て玩具を最上位カテゴリーに引き上げた。ぬいぐるみでは、18歳から29歳の購入比率が45%を超えている。  

『21世紀経済報道』は4月10日、ぬいぐるみ市場で最も成長が速いのは18歳から29歳の年齢層で、30歳から39歳も規模が大きいと伝えた。商品によっては、18歳から39歳の購入比率が50%を超え、70%近くに達するものもあるという。  

同報道によると、2025年の淘宝と天猫における玩具関連の取引額は1千億元近く(約2兆円)に達し、3年連続で増加している。ぬいぐるみやブロック、パズル、持ち運んで遊べる商品などが成長しており、特に成人向けの携帯型玩具は前年同期比で203%増となった。  

「感情消費」とは何か 若者心理と購買行動の変化

複数の中国メディアは、成人による玩具購入の理由として、感情的価値や懐かしさ、交流のきっかけになる点などを挙げている。新華社系の『半月談』は、マーケティング関係者の話として、ストレスの軽減や郷愁といった心理的ニーズが背景にあると伝えている。  

また、子ども時代の記憶やキャラクターへの愛着が、企業によって商品価値として活用されているとの指摘もある。  

成人の利用が増える中で、価格にも変化が見られる。ぬいぐるみの中心価格帯は、およそ5年前には19.9元前後(約400円)だったが、現在ではバッグチャーム型の商品で90元から100元程度(約1800円から2千円)となっている。  

ポップマートやJELLYCAT、ディズニーなどのブランド参入により、商品にはコレクション性やSNSでの共有のしやすさといった付加価値も加わっている。  

IP商品はぬいぐるみにとどまらず、バックパックやスマートフォンケース、美容製品、飲料、ジュエリー、家電、衣類など幅広い分野に広がっている。  

景気減速と将来不安 消費行動に影響する社会背景

こうした動きの背景には、中国の景気の減速や若年層の就業環境の厳しさ、消費の慎重化といった状況があるとみられる。  

アメリカ在住の経済学者、黄大衛氏は大紀元の取材に対し、感情消費は政治や経済の圧力が個人の消費行動に表れたものだと指摘している。若者が状況を変えにくいと感じた場合、個人的な消費に時間や資金を振り向け、心理的な満足を得ようとする傾向があるとしている。  

また、台湾の研究者、呉瑟致(ご・しつち)氏も、中国経済の低迷により若者の将来不安が高まり、消費が慎重になっているとしたうえで、短期的な心理的解放を求める動きが強まっていると指摘している。  

こうした「自分を喜ばせる消費」は一時的な満足をもたらす一方で、その効果は長く続かない可能性もあるとみられている。