SpaceXの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏は、「スターリンク(Starlink)」計画を大幅に拡張し、現在軌道上で運用されている約1万基の衛星を、10万基へと増やす方針を明らかにした。
「我々は、さらに多くの衛星を軌道に投入する。およそ10万基、あるいはそれ以上になる可能性もある。これらは通信専用である」とマスク氏は述べた。さらに、6月4日にはX(旧ツイッター)への投稿でも、次世代のV3衛星を活用し、スターリンク衛星群の規模を10倍に拡大する方法について言及した。
マスク氏は、このスターリンク計画について、JPモルガン・チェースのCEOジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)との会談の中で説明した。この会談は、SpaceXが今後のIPO(新規株式公開)に向けて実施するロードショーの一環として行われたものである。なぜこのタイミングで上場を進めるのかについて、同氏は、同社が「顕著な成長局面」に入りつつあり、さらなる資金が必要になるためだと説明した。
V3衛星がもたらす通信性能の進化
この中には、最大で100万基に達する可能性がある軌道上データセンターの配備も含まれる。一方、現在、宇宙軌道上で稼働しているアクティブ衛星の総数は、わずか1万5000基余りに過ぎない。さらにマスク氏は、近く投入されるV3衛星によってスターリンクをアップグレードする計画にも触れた。V3衛星は今年後半、SpaceXの大型ロケット「スターシップ(Starship)」によって打ち上げられる予定である。
「これらは第3世代衛星およびその改良型であり、現在軌道上で運用されている第1世代および第2世代衛星に加わる」とマスク氏は述べた。「別の試算では、第3世代衛星の性能は第2世代の10倍から20倍に達する」
V3衛星は、ギガビット級の通信速度の実現を設計目標としているとされる。マスク氏はまた、この新世代衛星が「現在の最先端技術を大きく上回る」3基のチップを採用していることにも言及した。さらに、この新型衛星により、ネットワーク帯域幅は従来の100倍に拡大し、より低い軌道の衛星を活用することで、通信遅延も半減できるとの見通しを示した。
続けてマスク氏は、次世代のV3スターリンクシステムについて「帯域幅が最大で、遅延が最も少ない通信手段になると考えている。人工知能やロボットの今後の発展には、現在を大きく上回る帯域幅が必要になる」と述べた。
現時点では、この10万基という数に「スターリンク・モバイル」、すなわち携帯電話向けの直接通信サービス用衛星が含まれるかどうかは明らかになっていない。ただし、SpaceXは昨年、米連邦通信委員会(FCC)に対し、携帯接続専用の衛星1万5000基の打ち上げ・運用計画を申請している。現在、スマートフォンとの直接接続機能を担うスターリンク衛星は約650基にとどまっている。
10万基という目標はやや意外でもある。というのも、SpaceXの社長グウィン・ショットウェル(Gwynne Shotwell)氏は今年3月、『タイム』誌の取材に対し「スターリンク衛星の総数は1万5000基から2万基を超えることはないだろう」と述べていたためである。これは、この衛星インターネットコンステレーションの規模が、一定水準で安定する可能性を示唆する発言であった。
「ただし、我々は多様な技術を保有していることを忘れてはならない」とショットウェル氏は付け加えている。
IPOと資金調達戦略の背景
スターリンクはSpaceXの主要な収益源である。同社が上場企業となれば、より高い財務実績が求められることになる。規制当局への提出資料によれば、2025年のSpaceXの売上高187億ドル(約2兆9000億円)のうち、スターリンク関連事業が約60%を占めている。
スターリンク衛星の規模を10倍に拡大すれば、データ容量は飛躍的に増加し、より多くの世界中のユーザーにサービスを提供できるようになる。会談の中で、JPモルガンのダイモンCEOは、将来的にスターリンクが海底ケーブルに取って代わる可能性にも言及した。
SpaceXはロードショーにおいて、スターリンクの潜在的市場規模(TAM)が最大1.6兆ドル(約250兆円)に達する可能性があると試算している。その内訳は、スターリンク・ブロードバンド事業が8700億ドル(約136兆円)、スターリンク・モバイル事業が7400億ドル(約116兆円)である。
同社はまた4日、スターリンクのアクティブユーザー数が1200万人を突破したと発表した。一方で、第1四半期の有料加入者数は約1030万人であった。
環境・天文学への影響と批判
もっとも、SpaceXによるスターリンク拡張計画は、環境保護団体や天文学者、さらには一般市民からの懸念や抗議も招いている。彼らは、これらの衛星が光害を引き起こし、さらにはオゾン層に影響を及ぼす可能性があると指摘している。
今年1月、米連邦通信委員会(FCC)は原則として、スターリンクをギガビット級通信へとアップグレードする計画を承認した。しかし、10万基規模の衛星を打ち上げ・運用するためには、今後さらに追加の認可が必要となる。現行規制では、スターリンク衛星の上限は1万9400基に設定されているためである。
同時にFCCは、最大100万基の軌道上データセンター衛星の運用を目指すSpaceXの申請についても審査を進めているが、この計画もまた広範な疑問と反対に直面している。
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