富士通 ソブリンAIサーバの国内製造開始へ 日本の技術的自立と安全保障戦略の新局面

2026/02/16
更新: 2026/02/16

富士通が2026年3月から、NVIDIA製最新世代GPU「Blackwell」を搭載したAIサーバの国内一貫生産を開始することが明らかになった。この動きは単なる製品投入にとどまらず、日本が国家安全保障の観点から「AI主権」を確立するための重要な一歩として注目されている。

世界各国でAIが戦略物資として位置づけられる中、自国のデータと計算インフラを用いて自律的にAIを開発・運用できる能力、いわゆる「ソブリンAI」の確保が国家の最優先課題となっている。

米国企業がOpenAIやGoogle、Amazonを通じて生成AI分野で圧倒的なリードを保つ一方、欧州諸国は米中への技術依存を脱却すべく「デジタル主権」を掲げて独自のAIエコシステム構築に巨額投資を進めている。ドイツ、フランス、英国などは自国の言語や文化、法規制に適合したAI基盤の整備を急いでおり、計算資源への戦略的投資を加速させた。

日本もこの世界的潮流に呼応し、戦略の大転換を図っている。2025年12月に閣議決定された初の「人工知能基本計画」では、日本を世界で最もAIを開発・活用しやすい国にするという目標に加え「開発力の戦略的強化」が基本方針として明記された。これまで海外製AIの利活用に重点を置いてきた日本だが、それだけでは技術依存や富の流出、いわゆるデジタル赤字が止まらず、セキュリティリスクも払拭できない。政府はAIへの投資を危機管理投資の中核と位置づけ、国内の計算基盤やデータセンターの整備に本格的に着手している。

富士通のソブリンAIサーバ製造には、安全保障上三つの重大な意義がある。第一に、機密性の高いデータを国内で完結して処理できる環境が整うことである。海外のクラウドサービスを利用する場合、データが国境を越える際のリスクや、有事の際にサービスが遮断される地政学的リスクが排除できない。国産サーバであれば、政府機関や重要インフラ企業が機密データを外部に出すことなく、自組織内や国内データセンターで安全にAIを学習・運用することが可能になる。これは国家機密や国民のプライバシーを守る上で不可欠な要件といえる。

第二に、ハードウェアの製造拠点を国内に持つことは、経済安全保障上のサプライチェーンの自律性を高める。パンデミックや国際紛争によって物流が混乱した場合でも、国内でAIインフラを調達・維持できる体制があることは、国家のレジリエンス、すなわち回復力に直結する。

第三に、デジタル庁を中心に整備が進められているプロジェクト「源内」など、政府業務でのAI活用基盤「ガバメントAI」の実装を、ハードウェアの側面から下支えすることができる。行政文書や国会答弁などの機密性の高い情報を扱うこのシステムにおいて、ハードウェアレベルでの信頼性が担保された国産サーバの存在は、政府が目指す安全・安心なAI活用の実効性を担保する土台となる。

高市政権下で重点投資分野の一つに掲げられている「AI・半導体」において、富士通の取り組みは日本が「AIを使うだけの国」から「AIを自律的に運用できる国」へと脱皮するための象徴的な動きである。

2026年3月の製造開始は、日本のAI計画が理念から実装のフェーズに入ったことを意味する。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます