「自分の子供の移植臓器が手に入らない時、あなたは適合臓器が見つかる中国で手術を受けますか?」
中国で人から強制的に収奪した移植臓器を売買する行為が横行している中国。この問題をめぐり、その実態を伝えるドキュメンタリー映画「ヒューマン・ハーベスト」の上映会が12月24日、SMGネットワーク主催で横浜市の神奈川公会堂で行われた。
中国では、中国共産党政府の下、良心の囚人を対象とした強制的な臓器収奪と売買が行われている。深刻な人権侵害であるにもかかわらず、日本の主要メディアで取り上げられることは少なく、実態を知る人は限られている。
上映された「ヒューマン・ハーベスト」は、米国でピーボディー賞を受賞するなど国際的に高い評価を受けた作品で、中国で移植手術を受け死亡した遺族の証言、実際に臓器収奪に関わった医師やその親族の声、現場を目撃した警官の証言などを通じ、中国で行われている臓器収奪の実態を伝えている。
あまりに凄惨な実態を目の当たりにした観客からは、「人の臓器まで頂いて、自分の命を永らえるっていうことが、私にはちょっと理解できない。私はしたくない。人間はそれぞれ、生まれた時からの運命と寿命っていうのがあるので、それに素直に従って生きていければいい」とのコメントもあがった。

主催したSMGネットワークは、中国で行われている良心の囚人を犠牲とする臓器収奪と売買の全廃を求めて発足した。中国の臓器移植システムの実態を継続的に検証し、報告書を作成するほか、講演会や展示などの啓発活動を行っている。さらに政策提言や国際連携を通じて、臓器移植ツーリズムの防止と倫理的な移植医療の確立を目指している。
今回、大紀元はSMGネットワークの会長である丸山治章市議会議員に取材を行った。

中国における強制臓器収奪の問題は、2006年にデービッド・マタス弁護士とデービッド・キルガー元カナダ政府高官が調査報告を公表したことで国際的に明るみに出た。綿密な調査により膨大な状況証拠が示され、各国で中国への渡航移植を制限・禁止する法整備が進められてきた。
2008年にはイスラエルが保険支払いを禁止し、渡航移植の根絶に踏み切った。スペインは2010年、イタリアは2015年に不法取引を犯罪化。台湾も2015年に死刑囚の臓器利用を禁じ、移植に関する詳細な報告を義務化した。さらにベルギーは2019年、カナダは2022年に商業的臓器取引を犯罪とし、英国も2022年、豪州は2024年に同様の措置を講じている。
これらの法整備は、国外での行為も処罰対象とする「域外適用」によって非倫理的な移植を防ぐ国際的な防波堤となっている。
今年11月、対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)ブリュッセルサミットでは、日本を含む28か国の各国議員が強制臓器摘出を禁止・防止するための立法を誓約した。
SMGネットワーク会長で逗子市議会議員の丸山治章氏は取材に対し、国際的な法整備の動きについて「素晴らしい取り組み」であるとした上で、日本ではこの問題がほとんど報道されておらず、政府の動きも鈍いと指摘した。
そうした中、12月16日北村晴男参院議員が法務委員会で中国における臓器移植問題を正面から取り上げ、政府に渡航移植の法整備に関する質問を行い、政府からも議員立法であれば協力の用意があるとの前向きな姿勢を示した。
こうした動きに対して丸山氏は「専門家が法律家として動いてくれることは非常にありがたい」と述べた。
また丸山氏は、政治家としての倫理観にも言及し、「もし自分の子供が臓器を必要とする状況になったとしても、他人の命を犠牲にしてまで生きながらえさせることは耐えられない」と述べた。その上で、政治の役割は、そのような悲劇的な選択を迫られない制度を整えることにあるとし、不当な手段によって命がつながれることのない社会を実現する必要性を強調した。
さらに丸山氏は、臓器狩りは人類最大の人権問題であり、早急に調査と研究を進め、解決に取り組むべき課題だと述べた。平和は何もしなくても維持されるものではなく、努力によって勝ち取り、守り続けるものだとした上で、中国で起きている問題に対する継続的な行動と協力を呼びかけている。
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