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中国は今 仮死状態にある

2025/11/17
更新: 2025/11/19

論評
中国は嘆き、もがき苦しんでいる。しかし世界は眠ったままだ。

少なくとも、世界の多くは眠り続けており、中国貿易の果実が今後も世界経済を刺激し続けるという夢を見ている。だがその夢は、実際にはすでに終わっている。

中華人民共和国(PRC)の通貨は経済とともに弱体化し、中南海(中国共産党の本部)の暗い回廊では、共産党内の各派閥が互いに剣を交えるように対峙している。

「見よ」と国外の夢想家たちは言う。「習近平はまだ生きている。肩書も権力も栄誉もそのままだ。何の変化も見えない。人民大会堂というポチョムキン村の壁(ハリボテを指す)の外にあるものは何も見えない。中華人民共和国の希望も脅威も以前と変わらない。2025年10月20〜23日に開催された中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)が、従来の体制を維持していることを確認したではないか」

だが現実は違う。

四中全会が示したのは、CCP内部の3つの争っている勢力、つまり習近平派、軍事派、改革派・長老派が、党の継続性を示さなければ、穏やかな権力移譲どころか、党そのものが指導者とともに崩壊し得るとの認識で一致していたからだ。彼ら全員を結びつける唯一の優先事項は「生き残りを賭けた内紛を表に見せない」ことだった。亀裂が一度でも露呈すれば、建物(体制)全体が崩れ落ちることを意味するからだ。

「我々は団結しなければならない。さもなくば、バラバラに吊されることになる」

 これは1776年のアメリカ独立宣言署名時にベンジャミン・フランクリンが言ったとされるが、実際には習近平が言ったのかもしれない。

そして、党内の争う3派閥とは別に「第四の大きな力」が存在する。それはすべての派閥に反対する勢力、すなわちすでに経済的希望も社会的誇りも失った「国民」である。そして今や中国大陸の一般大衆こそが、変化のタイムラインを決定している。

外から見る静止したような状況の裏側で実際には、はるかに激しい動きが進行している。習近平は、最高権力者の肩書と、中央軍事委員会(CMC)主席、国家主席という地位を保ってはいるものの、実質的な権力はすでに失っている。権力を守ろうとした彼の試みは挫折し、人民解放軍(PLA)の指揮系統外で「秘密の軍隊」を創設する試みも潰された。これは習近平にとって最後の防衛手段だった。

この秘密軍は河北省廊坊市に置かれた独立部隊で、中国の戦区司令部や地域部隊、正式なPLAの階層とは切り離されており、習の忠実な側近である何衛東上将と苗華海軍上将により創設した。しかし2025年初め、別の中央軍委副主席である張又侠上将によって、彼らは事実上拘束・排除された。そして張は2025年早々に、事実上の人民解放軍最高指揮官として浮上した。

何衛東・苗華に加え、2017年10月〜25年6月の間に少なくとも3千人の人民解放軍将校が排除され、その行方は不明のままだ。部下の兵士に関する情報もない。これらはおそらく習の「秘密軍」すなわち師団規模の親衛隊であったと推測する。人民解放軍の平均的な将校と兵士の比率からすれば、その規模は少なくとも1万2千人に上る。習派は対立の際に取り込める正規PLA部隊も特定していたと考えられる。

しかし張又侠の動きによって、習近平はPLAの統制も私兵部隊も失った。これらは党や人民解放軍の指揮系統を外れて習一人に直属する勢力だった。

毛沢東は「権力は銃口から生まれる」と語ったが、今や銃口は完全に張又侠の手にある。張は表向き、改革派や長老派と連携して習を排除しているが、重要なのは「党が中国全土を統治する正統性」という虚構を保つことであり、その虚構に亀裂が入れば、76年間続いた法治や正統性のふりをした体制が崩壊する。では、この凍りついた状態はいつ粉々に砕け散るのか? すでに始まっている可能性がある。

多くの都市で群衆が街頭にあふれ、「革命前夜」と形容している。党派閥には大きな圧力がのしかかる。党が西側(特にアメリカ)への交渉材料として唯一残していたのは、レアアース供給の支配というカードだった。これはEVやF-35戦闘機などの主要防衛システムに不可欠なものだ。

しかし、四中全会の最中に、ドナルド・トランプ米大統領は突然、オーストラリアのアルバニージー首相との会談に応じ、オーストラリア産レアアースのアメリカ向け供給で合意した。その後、クアラルンプールのASEAN首脳会議で、マレーシア、タイ、カンボジアなどレアアース供給国との合意も取りつけた。

さらに東京では高市早苗首相と、韓国では韓国政府とも、レアアース加工供給で合意。11月6日にはタジキスタンのラフモン大統領とも合意した。タジキスタンはロシアと中国の裏庭である。

中国共産党(中共)のレバレッジは完全に崩壊した。すでにマレーシアなどの加工国はレアアースを供給している。レアアースはもはや「希少」ではない。

さらに科学者デイヴィッド・アーシボルド氏は11月10日の報告書で「中国は重希土類(テルビウム、ジスプロシウム)生産のための原料の40%をミャンマーから輸入しており、これは中国でこの種の鉱石が枯渇しつつある兆候だ」と指摘した。

残る唯一の戦略カードは虚勢、すなわち「戦狼外交」である。だがそのレバーを握るのは誰なのか。

習近平の影響はメディアや外務省の一部に残っているようだ。党内のどの派閥も「PLAは健在で統制されている」という印象を外部に示さなければならないが、実際はそうではない。それゆえ虚勢が必要となる。

もっとも挑発的だったのは、大阪の中国総領事・薛剣が11月8日、「高市首相の首をはねるべきだ」と発言したことだ。投稿はすぐに削除したが、本人も外務省も謝罪せず、高市氏への侮辱を繰り返した。これは高市首相が「台湾有事は日本の安全保障上の危機になる」と述べたことへの反発だった。

この応酬は「日中戦争に発展するのでは」という憶測を呼んだが、中国軍の準備不足からすればほぼあり得ない。仮に起きれば中共と習にとって大恥だが、同時に大陸全土に厳戒令を敷き、国民を完全に封じ込める口実にもなり得る。

11月5日に海南島の三亜で海軍最新空母「福建」が就役したが、式典は極めて簡素で、状態も不十分、実戦にはほど遠い「見せかけの就役」であったことが明らかになった。習近平は旗授与式に臨んだが、岸壁上で行われ、側には唯一の忠臣と見られる蔡奇が立ったが、観覧者は少なく、演説もなかった。

中国政権は富も機能も失いつつあるが、外の世界に「通常運転」の幻影を保つことだけは成功している。

もしこれが日本であれば「歌舞伎の奥に虚無が隠れている」と言われるだろう。しかしPLAの巨大な崩壊は、1990年代初頭のソ連崩壊と同じ構図であり、むしろ中国国民と世界にとってはさらに重大な結果をもたらす。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
米NGO「国際戦略研究会(International Strategic Studies Association)」所長。政府戦略アドバイザー。外交・防衛関連著書を多数出版。新著『The New Total War of the 21st Century and the Trigger of the Fear Pandemic』。