米国のジョージ・グラス駐日大使(65)が15日、自身のXアカウントで、日米両国間の「揺るぎない絆」を称賛する投稿を行った。この投稿では、意外にも中国の外交官2名を名指しで感謝の意を表しており、日米中の複雑な関係性を象徴する内容として注目を集めている。投稿は同日朝にアップロードされ、わずか1日で数百万件のアクセスを獲得するなど、国内外で大きな反響を呼んでいる。
投稿内容と背景
グラス大使の投稿は、英語と日本語の両方で発信された。英語版では「Looks like Christmas has come early. Thank you, @AmbWuJianghao and @xuejianosaka, for helping further strengthen the deep bond between the United States and Japan. 」とあり、日本語版では「さながら一足早くクリスマスを迎えた気分です。呉江浩駐日中国大使、薛剣駐大阪中国総領事におかれましては、揺るぎない日米の絆を一層深めるためのご尽力、まことにお疲れさまでございます。心からの感謝を。」と訳されている。添付された画像は、クリスマスツリーを思わせる温かな光景で、投稿のユーモラスなニュアンスを強調している。
この投稿の文脈は、11月上旬に起きた日中間の外交摩擦に遡る。薛剣駐大阪中国総領事は、高市早苗首相の「台湾有事」に関する発言に対し、自身のSNSで「汚い首は斬ってやる」との過激な表現を使用したとされる。これに対し、日本政府は直ちに中国側に抗議を申し入れ、木原稔官房長官が記者会見で「不適切な発言」として非難した。グラス大使自身も11月11日頃にXで薛氏を「本性を露呈した」と批判する投稿を行い、米政府の立場を明確に示していた。
こうした緊張の高まる中での今回の感謝表明は、皮肉やユーモアを交えたものと解釈されている。グラス大使は「クリスマスが早めに訪れた」という比喩で、中国側の発言騒動が逆に日米の結束を強めたことを示唆しているようだ。呉江浩駐日中国大使と薛剣総領事への言及は、両者の「尽力」が日米関係の強化に寄与したと皮肉っている可能性が高い。
投稿は即座に拡散され、日本国内では「グラス大使のウィットに富んだ一撃」との声が上がっている。
グラス大使のプロフィールとこれまでの活動
ジョージ・エドワード・グラス氏は、オレゴン州出身の実業家で、投資銀行や不動産分野での豊富な経験を持つ。トランプ大統領の1期目(2017-2021年)では駐ポルトガル大使を務め、中国の5G技術(ファーウェイ)への関与を批判するなど、対中強硬派として知られる。2024年12月にトランプ次期大統領(当時)から駐日大使に指名され、2025年4月8日に米上院で承認。4月18日に着任した。
着任以来、グラス氏は日米同盟の強化を優先課題に掲げている。特に経済分野ではトランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策を反映した関税措置に関する協議を推進し、日本側との合意形成を目指している。また、長男の家族が日本に長年在住するなど個人的なつながりを有しており、これを背景にビジネス分野での経験を活かした実務的な外交アプローチが注目されている。一方、対中・対露政策では着任直後から中国の軍事・経済的脅威やロシアの地域行動に対する警戒を繰り返し表明している。今回の投稿もこうした文脈で同盟の結束を強調するものと見られる。
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