「胸が痛く、怒りもある。自分の貼り紙が何かを変えられるとは思わないが、中国の人たちにも、共産党にも知ってほしい。この時代には、まだ声を上げる人がいる。」
(反共ポスターを貼った若者の声、2025年11月・河南省洛陽市)
中国でいま、反共メッセージが街頭に次々と出ている。厳しい統制の下で、市民が命がけの声を残し始めたのだ。
11月上旬、中国共産党の四中全会が終わった直後、河南省洛陽市でも「国民総抗争」「打倒中国共産党(中共)」と書かれた紙が街の壁に貼られ、SNSで写真が拡散した。
これらのポスターを掲示した若者は本紙に声を寄せ、なぜ危険を承知で貼り続けたのか、その心境を明かした。彼は「小粉紅(共産党支持の若者)が批判的な声を攻撃し、異論を許さない空気が強まっている。その中で普通の人々は本音を言えず、声を押し殺して生きている」と語り、いまの社会へ強い危機感を示した。
さらに彼は「胸が痛く、怒りもある。自分の貼り紙が何かを変えられるとは思わないが、中国の人たちにも、共産党にも知ってほしい。この時代には、まだ声を上げる人がいる」と話した。ポスターには「国民総抗争・共産党を倒せ」「習近平は殺人犯」「中共を倒せ・六四を忘れるな」などの文字が並んでいた。

今年に入ってからは、こうした街頭での小さな抵抗が各地へ静かに広がっている。以下に、海外SNSにも流れた抗議の一部を紹介する。
例えば11月3日、山東省聊城市(りょうじょう-し)の橋に「中共イコール中国ではない」「中共は邪教だ」と書かれた標語が掲げられた。

10月31日、Xアカウント「自由之声」は、河南省駐馬店市(ちゅうばてんし)・遂平県(すいへい-けん)の街頭に「習近平退陣」「臓器狩りをやめろ」「独裁を終わらせろ」「人権迫害を停止せよ」「言論の自由を返せ」「ネット封鎖をやめろ」などの貼り紙が並んでいたと伝えた。中には、中共による法輪功学習者や未成年者への臓器収奪を告発する「覚醒真相書」も含まれていた。

10月25日には、北京の中心部で外国人も多く訪れる繁華街・三里屯に、反共メッセージを記した2枚の横断幕が現れた。そこには「共産党は反人類の邪教で、中国に果てしない災難をもたらす」「党の独占を改め、政党の自由結成や自由競争を認め、人性と法治に基づく新しい中国をつくろう」と書かれていた。
さらに9月の軍事パレードを前に北京の公衆トイレのドアに「独裁者は退陣せよ」「中共はとっくに終わっていなければおかしい」などのメッセージが次々と書かれ、ネット上で「トイレ革命」と呼ばれた。

8月29日夜には、重慶市内の繁華街のビル外壁に巨大な反共スローガンが投影され「赤いファシズムを倒せ」「自由は与えられるものではなく奪い返すものだ」「奴隷になりたくない人々よ立ち上がれ」などの言葉が映し出された。

4月15日には四川省成都の歩道橋に「政治体制の改革なくして民族復興なし」「権力が無制限の政党は不要」「民主こそ進むべき方向」と書かれた巨大横断幕が掲げられた。

上に挙げた例は、海外まで伝わったほんの一部にすぎない。中国では同じような抗議が日々起きていると指摘されるが、多くは国内で押さえつけられ、投稿の削除や情報封鎖で表に出る前に封じ込められてしまう。つまり私たちが知るのは氷山の一角で、実際にはもっと多くの声が埋もれているとみられる。
監視カメラが至るところに設置され、人々が互いを通報する社会では、こうした行為は逮捕や失踪を覚悟するほどの危険を伴う。それでも人々が声を上げるのは、もうこれ以上黙っていられないところまで追い詰められているからではないだろうか。
ポスターはただの紙ではない。言論を奪われた人々が、恐怖に屈せず自由を取り戻そうとする小さな証である。
中共体制が最も恐れるのは暴力ではなく、考え始めた民衆である。洛陽の壁に貼られたその一枚は、沈黙の国で今も続く抵抗の小さな灯を映している。


ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。