米ニューヨーク市の次期市長のゾーラン・マムダニ氏は、選挙戦で市民向けに公共バスを無料化することを約束した。これは家賃凍結、無償保育の創設、最低賃金の30ドルへの引き上げなど、野心的な公約のひとつだ。
先月34歳になった民主党社会主義者のマムダニ氏は、11月4日の本選挙で、無所属で出馬した元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏と共和党のカーティス・スリワ氏を破った。この注目を集めた市長選は、選挙当日の民主党の勝利シリーズのひとつだった。
ウガンダ生まれでニューヨーク市育ちのマムダニ氏は、就任準備として全員女性の移行チームを発表した。同氏は、市内数百万人の住民生活に直結する政策を推進する構えだ。
無料バス提案
ニューヨーク州議会議員でもあるマムダニ氏は、市内バスを高速かつ無料にする計画を推進している。運賃を完全に廃止し、通勤時間を短縮するための資源を投入する。
次期市長はバス優先レーンをさらに増やし、バスジャンプ信号を拡大し、路上の二重駐車を防ぐ専用乗降ゾーンを設ける方針だ。
マムダニ氏は、支払いや乗車遅れがなくなるため、平均バス乗車時間の12%を節約できると主張する。経済学者のチャールズ・コマノフ(Charles Komanoff)氏の分析を引用している。
マムダニ事務所は、エポックタイムズの無料バス計画の詳細資料や実施時期に関するコメント要請に応じなかった。
誰が支払うのか?
クイーンズの1ベッドルーム家賃安定アパート(家賃の上昇幅を毎年一定の範囲内に制限するアパート)に住むマムダニ氏は、「最も裕福なニューヨーカー」への増税を公約している。そのひとつが、市内の企業に対する最高法人税率を7.25%から11.5%に引き上げることだ。
次期市長は、この法人税引き上げだけで毎年50億ドルの追加税収が見込めるとしている。
その他に、年収100万ドル超の個人への増税も計画する。
「ニューヨーク市の上位1%は年収100万ドル超だが、普通のニューヨーカーとほぼ同じ3.9%の税率だ。100万ドル超の所得に新たに2%の税を課す」とマムダニ陣営は言う。これで年間40億ドルの収入になるという。
ただし、市長には税制変更の権限はない。マムダニ氏は州議会を説得し、キャシー・ホウクル知事が法案に署名する必要がある。
メトロポリタン交通局(MTA)は近年、運賃逃れとインフレで資金繰りに苦しんでいる。
MTAのバスシステム運用コスト(地下鉄除く)は、2025年に7億470万ドルと見込まれている(2028年までの財務計画による)。
2024年の債務は445億ドルで、2034年までにほぼ倍増するとニューヨーク州監査官トーマス・ディナポリ事務所は予測する。
次回の運賃値上げは2026年1月からで、地下鉄・ローカルバス・Access-A-Ride(障害者向けの予約制送迎サービス)の基本運賃が2.90ドルから3ドルになる。
ホウクル知事は増税を支持するか?
選挙前、ホウクル知事はポッドキャスト番組「Raging Moderates(怒れる中道派)」で増税に反対を表明した。
「中間層の税上げで穴埋めはできない。中間層や苦しむニューヨーカーにそんなことはできない」と述べた。
ホウクルチームは、マムダニ当選後の姿勢変更に関する質問に回答しなかった。
過去の無料バス実験の結果は?
MTAは過去に小規模な無料バスプログラムを試験した。
2023年9月24日から2024年9月1日まで、一部の路線を無料化した。
結果は「まちまち」で、数百万ドルの損失が出た。
「失われた収入と関連コストはパイロット期間で1650万ドル超。無料路線の運賃収入喪失に加え、追加の収入損失と運用コストを含む」と6月のMTA公式評価報告書に記されている。
2020年のCOVID-19パンデミック時にもバス運賃は一時停止された。
MTA労働者は支持するか?
MTAは11月6日、エポックタイムズの取材に対し、無料バス化に向けた話し合いが始まったかどうかについて、明確な回答を避けた。 ただし、ジャンノ・リーバー(Janno Lieber )議長兼CEOは「マンダニ次期市長の政権と密接に協力していく」と、前向きな姿勢を示した。
「選挙戦で公共交通の重要性について多くの思慮深い議論があった。マムダニ次期市長とその政権と密接に協力するのを楽しみにしている」とエポックタイムズへの声明で述べた。
エポックタイムズは、ニューヨーク市のMTA労働者4万1000人を代表するTransport Workers Unionにコメントを求めた。同労組は市長選で候補を支持しなかった。
マムダニ陣営はエポックタイムズのコメント要請に応じなかった。
地下鉄はどうなるか?
マムダニ氏の公約では、現在、地下鉄の無料化は推進されていない。
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