工場閉鎖と給料未払いが相次いで、出稼ぎ労働者が続々と故郷へ 「もう働くだけ無駄」と嘆く声も。
中国の製造業不況が深刻化している。例年より3か月も早く、各地で農村出身の出稼ぎ労働者(中国語で「農民工」)が故郷に戻り始めた。
広東省や江蘇省の工場地帯では、旧正月を思わせる混雑がバスターミナルを埋め尽くしている。だが、まだ11月初旬にすぎない。それだけ現場の仕事がなくなっているということだ。
出稼ぎ労働者たちが故郷に帰る際に利用する地方バスの中継点として知られる広州市・上涌(シャンヨン)バスターミナルでは、大きな荷物を抱えた人々が長距離バスを待っていた。建設業の男性は「現場が止まり、2か月分の給料も出ない。働くだけ無駄だ」と肩を落とす。

湖南や江西方面への便が集中する出稼ぎ労働者の帰郷拠点である広州市東部の天河バスターミナルも、同じように混雑している。地元では「工場閉鎖や失業の動きが真っ先に表れる場所」とされ、職員は「今年は仕事がなくなった人が多い」と語る。周辺の住宅や商店も閑散としている。
江蘇省・昆山でも、冷暖房のない旧型列車通称「緑皮列車」が出稼ぎ労働者で満席となった。ネット上では「もう仕事がない。出稼ぎブームは終わり、帰郷ブームが始まった」との投稿が相次ぎ「103日早い春運(帰省ラッシュ)」と苦笑まじりの声も広がっている。
経済評論家らは、この異例の早い帰省について「一時的な景気の波ではなく、構造的な産業不況の始まりだ」と警鐘を鳴らす。
さらに各地の工場や建設現場では賃金未払いが相次ぎ、11月初旬だけで全国14か所の製造業現場でストライキや抗議が起きた。広東省湛江(たんこう)の化学プラントでは、数百人の作業員が5か月分の未払い賃金を求めて作業を停止し、警察が出動する騒ぎになった。

広東省の統計によると、2025年前半の製造業投資は前年同期比で3.2%減少した。
ただし、これはあくまで政府発表の公式データにすぎない。中国当局は一貫して景気の悪化を隠してきており、実際の落ち込みは数字よりはるかに深刻だと多くの国民が感じている。
SNSでは「働いても稼げない」「家に帰った方がマシ」といった投稿が目立ち「まだ旧正月には早いのに、もう人の半分が帰った」と早すぎる帰郷を嘆く声が共感を呼んでいる。
まだ冬の入口にすぎないが、中国の工場地帯はすでに静まり返っている。
「働く場所がない冬」は、今年いつもより早く訪れた。
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