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米テック大手が生産拠点を中国から移転 米中技術デカップリング加速

2025/10/23
更新: 2025/10/23

マイクロソフト、アマゾン、グーグルはサーバーや製品の生産ラインを中国から海外へ移す動きを加速させており、エヌビディアは中国のハイエンドAIチップ市場での販売がほぼゼロに近づいている。業界関係者は「中国企業がこれまで掲げてきた、いわゆる『カーブで追い越す(彎道超車)』ようなショートカット型の追い越し戦略は、もはや通用しなくなってきた。世界のテクノロジー製造業は抜本的な再編局面に入っており、中米のサプライチェーン分断は長期的に見て不可逆的だ」と指摘している。

日経アジアやロイター通信の報道によれば、マイクロソフトは主要サプライヤーに対し、中国以外でSurfaceノートPCやサーバーのファウンドリ委託生産ラインを構築するよう求めており、移転完了は2026年を見込んでいる。アマゾンAWSもAIサーバー部品の海外調達を進め、中国のPCBサプライヤーとの関係を見直している。グーグルもタイとベトナムでのサーバー組立能力の拡大をパートナー企業に求めている。

この動きに関わる台湾の電子受託製造企業の幹部は「顧客のリスク分散ニーズはこれまでになく高まっている。どの主要プロジェクトでも第2の生産拠点が必須で、政策変更が起きたときにはすぐに移せる体制が求められている」と話す。

カーブで追い越す戦略が限界 中国企業が独自開発を加速

ファーウェイのファウンドリ生産ライン構築に関わるエンジニア、李峻(仮名)氏は大紀元に対し、過去2年間で複数の省においてサーバーやAIチップのファウンドリ委託生産ラインを立ち上げ、地方政府が資金支援や税制優遇を提供していると明かした。

「外資が撤退したことで生じた生産能力の空白を、私たちが迅速に埋めるよう求められている。この1か月はほぼ毎日会議が開かれており、新たなサプライチェーンを構築することが国家戦略として強調されている」と述べた。

このプロジェクトは、マザーボード製造からパッケージング、組立までを含む大規模なもので「一種の新たなサプライチェーンを丸ごと構築する規模だ」という。中央および地方政府は低金利融資や研究開発支援を提供し「2028年末までに国産の高性能計算能力の体制を完成させる」ことを目標としている。

中国の半導体企業も研究開発を加速しており、ファーウェイのAscendシリーズをはじめ、寒武紀(カンブリアン)、壁仞(ビラン)、燧原(スイユエン)といった企業が、新世代のAIトレーニングおよび推論用チップを次々と発表している。北京の業界アナリストである武衛氏は「一部の国産チップはエヌビディアA100の性能に迫りつつあるものの、素材や製造効率の点ではまだ外資に及ばない」と分析する。

さらに同氏は「カーブで追い越すという発想ではもはや追いつけない。技術の表面だけで近づいても、素材や歩留まりといった基礎部分で遅れがあるため、近道は存在しない」と述べた。

これまで中国共産党政府はカーブで追い越すと呼ばれる戦略のもと、外資に技術移転を条件として市場参入を認めたり、チップレット技術を活用して先端プロセスを迂回しようと試みてきたが、その成果は限定的にとどまっている。

サプライチェーンの海外移転 30年で最大の再編へ

北京大学情報科学技術学院の季光(仮名)教授は、エヌビディアの動きがアメリカの政策と連動しているとした上で、「輸出規制の効果が明確に表れ始めた」と指摘する。

エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、中国のハイエンドAIアクセラレーター市場における売上は「ほぼゼロ」になり、中国はもはや主要な収益源としてカウントしていないと述べた。

上海の産業経済学者、シン・チョンヨウ氏は「これは中国のテクノロジー産業にとって過去30年で最も大きな構造変化だ。地政学的な緊張が高まる中、世界の製造拠点は抜本的な再編局面に入っている」と語った。

広州の情報機器メーカー幹部も「顧客の一部は完成品の生産をタイやベトナムに移すよう求めているが、依然として中国製の基板や電源モジュールを使用している。中国の上流サプライチェーンは短期間では代替できない」と述べている。

中国共産党(中共)の官製メディアの報道によれば、2025年時点で中国のAIチップ市場では複数の企業が競い合っており、主要製品には昇騰910B、寒武紀の「思元370」、壁仞のBR104などが含まれる。業界の見方では、外資によるサプライチェーンの撤退と国産化の動きが並行して進む中、世界のテクノロジー製造業は抜本的な再編段階に入っているとされる。

米中テクノロジー分断は不可逆的に

複数の情報筋によると、中国は外資系サプライチェーンの再編と、アメリカによる高性能AIチップの輸出規制により、高性能計算能力へのアクセスが制限されるという二重の圧力に直面している。マイクロソフト、アマゾン、グーグルの生産拠点移転は、地政学的な緊張の高まりと深く結びついているとの見方が広がっている。

中国南西部にいる研究者は「西側の輸出規制に対抗するため、中国は短期的に半導体設計と製造装置への投資を強化し、地方政府と国有企業を中心に新たな生産能力の拡大が始まるだろう」と述べた。

同氏はさらに「中期的には国産化政策によって一定の成果が見込めるものの、先端プロセスやソフトウェアのエコシステムには制約が残る。長期的に見れば、米中のテクノロジーサプライチェーンのデカップリングは既定路線であり、逆転は難しい」と指摘している。

2022年以降、アメリカは対中半導体輸出規制を段階的に強化し、高性能GPUやAIアクセラレーターの輸出を制限してきた。エヌビディアはこれに対応してA800やH800といった特別仕様の製品を開発したが、2024年末にはこれらも規制対象となった。

楊茜