現地(テキサス州サウス・パドレ島)時間10月13日夕方、スペースXは超大型ロケット「スターシップ」の11回目の打ち上げに成功した。機体の耐久性を検証する試験はおおむね成功裏に終えた。現行型式での最終飛行でもある。着水直後に機体は爆発したが、スペースXは回収を予定しておらず、爆発は試験の失敗を意味しないとしている。
今回の飛行は、8月末に実施された第10回試験の成果を踏まえたもので、上段および下段の両機体における複数の新たな技術実証を目的としていた。また、次回からは新型「V3」スーパー・ヘビー・ブースターとスターシップ上段機を投入する予定である。
今回の打ち上げの主目的は機体の耐久性評価だった。
スーパー・ヘビーブースターが複数段階のエンジン停止を伴う着陸手順を実施する際の実機データの取得、上段機の耐熱性能と構造強度の検証、さらに次世代「スターリンク」衛星の模擬展開試験などが行われた。
ただし今回も上段機が地球軌道へ到達することはなく、ステンレス製ブースターの発射台帰還や、発射塔アームによる捕捉も行われなかった。スターシップ上段はオーストラリア沖インド洋への着水を予定した準軌道(サブオービタル)飛行で、ブースターはメキシコ湾上空で新たな着陸制御手順を試験した。
上段機には8基の模擬スターリンク衛星が搭載されており、打ち上げから約19分30秒後、南米とアフリカの間の赤道上空で、ペッツキャンディのように1基ずつ展開された。展開作業は約7分かけて行われ、第10回飛行に続く2度目の成功となった。
さらに、打ち上げから38分後には上段機のエンジン1基が再点火に成功。これは第6回と第10回飛行に続く3度目の成功例である。
スーパー・ヘビーブースターでは、まず13基の「ラプター」エンジンを再点火して減速し、その後5基に切り替えて降下経路を微調整した。従来は3基で行われていたが、今回は着陸時にエンジンが突然停止した場合に備えて、冗長性を高めるためにエンジン数を増やしたという。最終段階では3基のエンジンでホバリングを再現しながら水面に着水した。
ブースターがすべての試験目標を達成し、上段機が燃焼を完了すると、スペースXの社員らは歓声と拍手で沸き起こった。
飛行からおよそ45分後、管制官はスターシップが地球への降下を開始したと発表した。
今回は耐熱タイルの一部を意図的に取り外し、ステンレス製機体そのものの耐熱限界を検証した。
58分後には最大加熱点(最大動圧点)を通過し、バンク(旋回)機動にも成功。3基のエンジンによる着陸燃焼を行い、着水直後に機体は爆発した。
今回使用されたブースターは第8回飛行にも使用された機体で、搭載された33基のうち24基のラプターエンジンは再使用品だった。
フライト11は第2世代スターシップの最終飛行であり、次の「V3」機ではエンジンや耐熱シールド、飛行能力などが大幅に改良される予定だ。特に上段機では、軌道上での燃料補給機能が追加される見込みである。
今回の試験は、スター基地の自治都市化構想や、フロリダ州ケネディ宇宙センター第39A複合施設の拡張工事など、スターシップ計画の複数の節目と時期を同じくした。
一方で、スターシップ上段機は依然として完全な軌道到達試験を成功させておらず、NASAのアルテミスIII計画(2027年打ち上げ予定)で月着陸船としての役割を担うためには、今後も開発を加速させる必要がある。
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