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【唐青看時事】アメリカ再興へ トランプ政権の「5大変革」(二)

2025/10/09
更新: 2025/10/10

アメリカは今、トランプ政権による大規模改革と再興の岐路に立っている。本記事では、軍事・経済・貿易・価値観といった社会基盤の再構築を軸とする「5大変革」の具体策や、その国際社会への影響など最新動向を詳しく解説する。再興の旗手となるトランプ大統領の政策とアメリカ社会の変化を読み解く。



【唐青看時事】アメリカ再興へ トランプ政権の「5大変革」(一)

トランプ政権による「戦士の精神」復活や防衛重点の国内回帰など、米軍・社会基盤再編の最新動向を詳報。

第三章 経済の復興――トランプ式資本戦争

軍事改革によって米軍の戦闘力が再構築され、戦略の転換がアメリカの国土防衛を支えた。しかし、強い国家の基盤として不可欠なのは、やはり強靭な経済力である。36兆ドルに達する国債残高と産業の空洞化という難題に直面したトランプ政権は、今度は「経済の戦場」へと目を転じ、資本・産業・技術を自国に呼び戻す戦いを開始した。本章では、この経済再生策が制度革新を通じていかにアメリカ経済へ新たな原動力を注入したのかを検証する。

まず、背景を整理しておこう。中国のオンラインメディア「呆而非(ぼうじひ)」の記事によれば、2024年初頭のアメリカの国債残高は約36兆ドルに達し、GDP比でおよそ120%。同メディアはこれを「史上最大の財政の崖」と呼んでいる。この数字は、アメリカが1ドルを稼ぐごとに1.2ドル以上の借金を抱えていることを意味し、財政赤字は限界を超えつつあった。ドルの信用は揺らぎ、メディアの中には「アメリカンドリームがドル債務に変わりつつある」と嘆く声も上がった。

米議会予算局(CBO)の試算によれば、抜本的な改革を行わなければ2025年には利払い費が軍事費を上回る見通しであった。すなわち、トランプ氏が就任した時点で、アメリカは体制の再構築を迫られる局面に立たされていたのである。

では、彼はどのような行動を取ったのか。トランプ大統領は「増税」や「紙幣増刷」といった従来型手法を排し、より直接的かつ衝撃的な「資本コンビネーションブロー」を打ち出した。これこそが、いわゆる「トランプの黄金の五手」と呼ばれる一連の経済戦略である。核心の目的はただ一つ。世界中の資本にアメリカの成長の代価を支払わせ、制度設計によって米国の信用基盤を強化することである。

以下、その五つの手を順に見ていく。

第一手:ゴールドカード――移民を外貨プールに変える

トランプ大統領が掲げた最初の「切り札」は、「ゴールドカード」計画である。公式価格は1枚あたり500万ドル、発行上限は100万枚。対象は主に世界の高資産層や戦略産業分野の投資家とされた。2025年6月までにすでに7万枚以上が発行され、約1.2兆ドルの資金を吸収したという。

この資金は、不動産、先進製造業、ハイテク産業の創業・投資に充てることが条件となっている。トランプ氏は2月の記者会見で「移民希望者を同時に投資家にする。これが本当のウィンウィンだ」と語った。

注目すべきは、この資金が国債発行や増税、通貨増刷によって得られたものではないという点である。トランプ氏は「移民資格」を直接「ドル需要」に転換し、巨大な外貨のプールを形成したのである。

第二手:主権ファンド――財政を「長期株主」に

トランプ氏は「アメリカ主権ファンド(U.S. Sovereign Capital Fund)」を創設し、連邦政府の名義で初めてアメリカ株の主要銘柄に直接投資を行った。投資先はNVIDIA、Apple、Tesla、Microsoftなど、アメリカを代表するテクノロジー企業である。

この動きはウォール街に衝撃を与えた。これまで財務省は税収の徴収と予算配分に徹していたが、政府自らが投資家となり、政策で産業を支え、資本で利益を確保する体制へと転換した。すなわち、「株を買う前に政策を決める」という新たな国家運営モデルである。モルガン・スタンレーはこれを「百年来最も画期的な財政イノベーション」と評している。

半年後、このファンドの利回りは6.7%に達し、アメリカ財政史上に新たな記録を打ち立てた。政府は「税を徴収する政府」から「株を保有する政府」へと変貌し、短期的な財政運営から将来の産業サイクルを見据えた長期的投資戦略へと舵を切った。

第三手:企業ステーブルコイン――Appleコインによる国債担保化

次なる一手として、トランプ政権は大企業に対し、米国債に100%連動するステーブルコインの発行を認可した。その代表例が「Apple Coin」や「Microsoft Dollar」である。

この政策は、国債需要を企業エコシステムに組み込み、世界中の消費者が企業発行コインを使用することで、間接的に米国債を購入する仕組みを構築したものである。2025年3月の導入以降、海外からの資金が殺到し、7月までに企業ステーブルコインが保有する米国債は4.3兆ドルに達した。

これは暗号通貨の投機ではなく、市場を通じた国債回収メカニズムと位置付けられる。コインの流通量が増えれば国債需要が拡大し、金利の安定化にもつながる。言い換えれば、アメリカブランドが国債販売の推進役を担う構造を形成したのである。

第四手:高関税と貿易再構築――外国資本で赤字を補う

第四の戦略は、トランプ氏が得意とする関税政策である。従来のアメリカの平均関税率は約2.5%に過ぎなかったが、現在は約15.8%に上昇し、一部の品目では25~46%に達している。2025年6月単月の関税収入は約1130億ドル、年間では約6千億ドルと見込まれ、連邦歳入の約5%を占めるに至った。

注目すべきは、懸念されたインフレ急騰が発生しなかった点である。アメリカの研究によれば、関税コストの7~8割は輸出国が負担しており、消費者物価指数(CPI)は依然として2.3~2.4%の範囲に収まっている。つまり、トランプ氏は関税を「入場料」と位置付け、外国企業に対して値下げまたは直接投資を迫ることでアメリカ経済への資金流入を促したのである。

フーバー研究所の試算によると、全輸入品に10%、中国からの輸入品に60%の関税を課す場合、理論上の年間関税収入は6100億ドルに達するという。これは企業税収全体に匹敵する規模である。ただし、政府はより柔軟な「選択的課税」を採用し、業種ごとに要求と交渉を組み合わせる戦略を取った。

第五手:製造業の回帰――産業チェーンの再固定化

最後の一手は、製造業の回帰である。トランプ政権は、関税によって一時的に得た財源を国内の産業基盤再建に投じ、短期的収入を長期的税基盤へ転換する方針を打ち出した。

日本、イギリス、ドイツから東南アジア諸国まで、多くの企業がアメリカでの生産拠点構築を加速させ、自動車、電子機器、半導体分野で新たな投資が相次いだ。2025年には50万件を超える製造業雇用が新たに創出され、製造業PMIは景気拡張の分岐点を上回った。デトロイトでは3か月連続で景気拡大が続き、経済はパンデミック前の水準へと回復した。

これはアメリカ経済が「輸入代替」から「投資代替」へと進化したことを意味する。関税が資金を呼び込み、資金が生産力を生み、生産力が雇用を押し上げるという循環構造が形成されたのである。

トランプ政権が展開した五つの戦略は、身分、資本、通貨、貿易、産業という五つの歯車を連動させることで、「債務の重み」を「成長の原動力」へと転化させた。外部資金と国家信用を基盤に築かれたこの制度的資本再構築は、アメリカ経済を新たな段階へと押し上げるものである。

つづく

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
唐青