警察庁は10月2日、ドローンの飛行を規制する区域の拡大について議論する有識者検討会を設置すると発表した。検討会はドローンの技術専門家や行政法の有識者らで構成され、7日に初会合を開く予定で、年内に報告書を取りまとめる方針だ。
現行の「小型無人機等飛行禁止法」では、首相官邸や国会議事堂、自衛隊施設、原子力事業所などの敷地とその周囲おおむね300メートルの上空での飛行が原則禁止されている。違反の場合、電波妨害や機体の破壊などの措置が認められ、刑罰としては1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。
しかし、ここ10年間でドローンの性能は飛躍的に向上している。積載量は2〜5倍、製品によってはそれ以上に増加し、海外製ドローンも含めれば飛行速度は当時の3倍に達するものもある。遠隔地からの攻撃リスクが高まっているとの懸念が広がる。
実際、2024年3月下旬には中国系SNSに海上自衛隊の護衛艦「いずも」を上空から撮影したとされる映像が投稿され、防衛省は「実際に撮影された可能性が高い」との見方を示した。さらに、ロシア・ウクライナ戦争では連日のようにドローンによる攻撃が報じられており、「ドローン戦争」とも呼ばれる状況が常態化している。
また、ヨーロッパではロシアによるドローンや航空機の空域侵犯が相次いでいる。9月上旬にはポーランド領空に多数のロシア製ドローンが侵入し、ポーランド政府はNATO条約第4条を発動した。さらにエストニアでもロシア軍機の領空進入が確認され、防衛当局は挑発行為と警戒を強めている。デンマーク警察は9月25日未明、オールボー空港にドローンが侵入し空港を緊急閉鎖したと発表した。22日夜にはコペンハーゲン空港も約4時間閉鎖されている。
一方で、ドローンは農業分野での散布や、建築物・インフラの保守点検など幅広い場面での活用が進んでいる。警察庁は安全保障と社会実装の両立を課題と位置づけ、規制強化と利活用促進のバランスを踏まえた議論を進める考えだ。
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