中国でフードデリバリーを担う女性配達員が急増している。同国最大のフードデリバリー企業・美団(メイトゥアン)の調査部門「美団研究院」によると、2022~24年にかけて女性ライダーは51万7千人から70万1千人へと35%以上増加した。今年7月時点では国内の配達員約1400万人のうち24%を女性が占めており、2020年以前は5%にも満たなかったことを考えると、異例の伸びである。
同様の傾向は配車アプリ「滴滴(ディディ)」の女性ドライバーや宅配便の従事者にも広がっている。官製メディアは「女性が経済的に自立した」と宣伝するが、実態は困窮と背中合わせである。
調査によれば、女性ライダーの多くは既婚で子供を持つ母親だ。保育先がなく、子供を背負ったまま、あるいは配達用の箱に入れて酷暑の街を走る姿も報告されている。病気の子を抱えながら働く母親もいれば、臨月まで配達を続ける妊婦もいる。

それでも収入は乏しい。丸一日働いても1日200元(約4千円)に届かず、6割以上の女性ライダーの月収は5千元(約10万円)を下回る。女性は同じだけ走っても安い注文を回されることが多く、男性に比べて収入が伸びにくい。そのうえ配達員の数が多すぎ、仕事の奪い合いは熾烈だ。
それでも多くの人がこの仕事に飛び込むのは、日払いで収入を受け取れるからでもある。前日に走って得たわずかな賃金を翌日すぐ引き出せるため、借金返済や生活費に直結させやすい。仕事は過酷で低収入だが、「今日稼いだ分を明日には使える」という即時性が、人々をフードデリバリーに縛りつけている。
失業や借金に追い込まれ、生活のために今日もまた女性ライダーたちが街を駆け抜けている。華やかに語られる「自立」の言葉とは裏腹に、その足取りは生きるための苦闘そのものだ。

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。