中国・湖南省株洲市の市民ブロガー、尹建根(いん・けんこん)さんは、ネット上では「筆耕下の陽光」として知られ、十数年にわたり声なき人々の代弁者として書き続けてきた。
その彼、尹建根さんが先月11日に突然姿を消した。行方は不明で、家族や仲間たちは必死に捜索した。やがて陳情民たちの執念による捜索の末、警察関係者の口から居場所が明かされる。そこは、安徽省和県の看守所。尹さんは秘密裏に収監されていたのである。
拘束の理由は、地方政府との債権争いで不当な扱いを受け続けてきた陳情人、陳徳珍(ちん とくちん)さんの冤罪事件を告発する記事を書いたことだった。権力に押しつぶされてきた一人の女性の訴えを世に伝えようとした、その行為こそが「罪」とされたのである。

尹さんはこれまでも、官僚と企業の癒着や各地の強制立ち退き問題を追及してきた。記事を消すよう求められても屈せず、書き続けてきた。そのため、当局から常に目をつけられ、今回も家族への通知も拘留証も示されぬまま、連れ去られたのである。
「当局はいつも『打圧して黙らせる』ことを繰り返し、恐怖で人々の声を封じ込めようとしている。だが、沈黙の上に築いた秩序は砂上の楼閣にすぎない。崩れるときは一瞬だ」──長年陳情を続けてきた人々は、そう断じた。
声を奪われた人々が、いま尹さんのために声を上げており、その輪は小さくとも確実に広がっている。沈黙を望んだ当局が手にしたのは、むしろ新たな声の連鎖だった。
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