「自分には能がないが、体力だけはあるから、掃除ぐらいしかできない」そう思っても、今の中国ではもう通用しないようだ。いまや清掃員の採用にすら「筆記試験」「面接」「体力検査」「身辺調査」が課される時代となった。
7月18日に公表された上海での清掃作業員募集では、まず筆記試験と面接が行われ、合格しても体力検査や身辺調査が待ち受ける。募集は44人にすぎないのに応募は198人、倍率は5倍近くに達した。応募条件も中卒以上に加え、男性は50歳以下、女性は45歳以下と、細かな制限が並んでいる。

異様な「採用ハードル」は上海だけではない。6月には広州市でも、清掃作業員3人を採るのに筆記試験や技能テストが導入された。中国でかつて「誰でもできる」とされた仕事にまで選抜試験が及ぶ現実は、雇用環境の悪化を映し出している。
さらに、就職難の異常さを象徴する事件もあった。7月下旬、大手求人サイトに投稿された23歳女性の履歴書には「過去に上司の暗黙の要求に応じた」と書かれていた。事実上「職を得るために不適切な関係を受け入れた」と示す内容で、投稿は瞬く間に炎上。アカウントは削除されたが「仕事を得るためには何でもあり」という空気が広がっていることを印象づけた。
経済の減速が長引くなか、職をめぐる奪い合いは激しさを増すばかりだ。市民の皮肉混じりの声が現実を突いている。「掃除の仕事にまで試験と身辺調査を行うとは、この国はいったいどこへ向かうのか」。

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