中国共産党の第20期第4回中央委員会(四中全会)を10月に控え、改めて胡春華・全国政治協商会議の副主席の動向が注目されている。かつて、習近平の有力な後継者として注目された胡春華だが、2022年の第20回党大会で政治局から外れ、政界の表舞台から退いていた。その胡春華が短期間で複数の重要行事に出席したことで、政界内外で様々な憶測が広がっている。
最近の重要行事と胡春華
8月20日、チベット自治区成立60周年記念行事にて、胡春華は中央代表団副団長として登場した。さらに8月22日には、ヤルンツァンボ川水力発電ダムや川蔵鉄道建設など国家的に重要事業を視察した。特にヤルンツァンボ川水力発電ダムは、三峡ダムを超える規模を持つ新規の大型事業であり、胡春華の訪問は大きな話題となった。
中国政界に詳しいジャーナリスト・顔純鈎氏は9月1日、SNSに分析を投稿した。習近平がチベットを訪問した後、代表団のメンバーが一斉に地方視察へ赴く中、胡春華によるヤルンツァンボ川水力発電ダムの視察は「特別な扱い」であり、習近平が特に重視する国家計画を代行した可能性があると指摘した。
胡春華は水利発電やチベット政務には直接関与しておらず、専門家でもない。現在の役職も全国政治協商会議の副主席という限定的な権限に留まる。それにも関わらず現地視察を行った事実は、党中央からの特別な指示を反映したものとみられる。巨大発電プロジェクト自体が公開されて間もないため、実地検分の合理性は乏しいので、「胡春華に特別な出演機会を与えた」と見る向きが強い。
ヤルンツァンボ川水力発電ダムの視察からわずか5日後の8月27日、胡春華は吉林省長春市で開かれた第15回「中国─東北アジア博覧会」の開幕式に登壇し、スピーチを行った。この博覧会には2019年に国務院副総理として出席していたが、今回は副主席としての参加である。政治協商会議の副主席は制度上、副総理よりも下位の役職であり、胡春華が短期間で連続して表舞台に姿を現したことは異例である。
さらに6月23日には北京で全国政治協商会議常務委員会第十二次会議が開催され、胡春華が開幕式の進行役を務めた。会議のテーマは「経済体制改革の深化」で、これまでの十二回の常務委員会で、胡春華が初めて開幕を主導した点は、従来と異なるシグナルと受け止められている。
習近平体制の変化と政局
胡春華は、かつて中国指導部の世代交代リストの最有力候補だった。鄧小平時代以来の後継者育成の慣習のもと、曾慶紅、胡錦濤、温家宝ら前世代の首脳が、胡春華と孫政才を次世代リーダーとして育成していた。しかし2017年10月、第19回党大会前に孫政才が失脚し、胡春華も政治局常務委員への昇格は叶わず、副総理止まりとなった。
その後、2022年の党大会では、習近平の三期目続投が決まり、閉幕直前に胡春華を支持するとみられていた胡錦濤前国家主席が会場から排除される異常事態も発生した。結果として胡春華は政治局常委入りを果たせず、後に政治協商会議の副主席に就任した。この経緯から、外部では「廃太子」と揶揄されることが多かった。
この約3年間、胡春華は慎重な行動を心掛け、目立った動きはほとんどなかったものの、習近平への忠誠は示し続けてきた。政界関係者やメディアは、胡春華の今後の動向に注目している。
最近では、中国共産党指導部内で習近平の権力基盤や健康不安説が取り沙汰され、政局は不透明感を増している。10月に予定される四中全会でも人事異動の可能性が報じられ、その中で胡春華の名前が再び取り沙汰されている。
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