中国で広がる給料未払い問題が、ついに弁護士にまで及んでいる。
湖北省武漢市の「恩濤律師事務所」で責任者が資金を持ち逃げし、給与が滞納された。刑事立件を求めても受理されなかったため、所属弁護士たちは、取り調べを受けている責任者が署から出てきたところを逃さず捕まえるために、警察署前で徹夜の張り込みを続ける事態となった。
弁護士たちは張り込みの様子を撮影した動画などを中国SNSに投稿し、世論に支援を呼びかけている。彼女が求めている支援とは、動画を拡散して話題をトレンド入りさせ、社会の注目が高まれば当局が動くかもしれない――という切実な望みである。
(自身の弁護士証を手に世論に支援を呼びかけた女性弁護士。2025年8月22日投稿、湖北省武漢市。)
被害を受けた女性弁護士は、別の動画で「自分には貯金も家族の支えもなく、弁護士資格だけで生きている」と窮状を訴え、世論の注目を必死に求めた。その姿に対し、ネット上では「弁護士は人の給料を取り戻すはずなのに、今度は自分が給料を求める側になるのか」「弁護士の給料ですら警察署に行ってももらえないなら、一般の人は一体どうすればいいのか」といった絶望の声が相次いだ。
この事件は決して特殊ではない。浙江省や湖南省、四川省など各地で労働者によるストや抗議行動が相次ぎ、内モンゴルでは労働者が屋上から「給料を払わなければ飛び降りる」と訴える事態にまで発展した。企業の資金難や輸出不振が背景にあるが、当局は「雇用安定」を掲げる一方で、地方政府は責任逃れに終始し、現場の労働者に救済は届かない。
法律の専門家ですら守られない社会で、庶民の暮らしが守られるはずもない。信用崩壊の炎はいま、中国全土を覆いつつある。


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