2017年8月から続いていた黒潮大蛇行が、2025年4月に終息したことを気象庁などが発表した。今回の大蛇行は約7年9か月にも及び、1965年の統計開始以降で最長の継続期間となった。黒潮大蛇行が終息し、流路が安定することで猛暑や豪雨の頻度の減少や漁場の回復などが見込まれる。
黒潮大蛇行とは、紀伊半島沖で黒潮が大きく離岸し、通常とは異なる流路を持続する現象。期間中は東海・関東地方の海岸近くを流れる部分でも蛇行が観測され、地域の漁業や気象に大きな影響を及ぼした。2025年4月、湾曲部分が消失し、通常ルートに戻ったことで終息と判断された。
大蛇行が長期化した原因としては、冷水渦(流れを妨げる水塊)の安定や黒潮流量の不足などを指摘しているが、詳細な仕組みは未解明の点も多い。
黒潮大蛇行による影響
■漁業への影響
大蛇行期間中、カツオやシラスなどの漁場が従来通りと異なる位置へ移動し、漁獲量が大きく減少したり、偏る事例が増えた。黒潮が沿岸から離れて流れることで、通常の漁場が遠ざかり、漁業者の漁獲活動に影響が出た。終息後は漁場の回復が見込まれている。
■気象・災害への影響
黒潮大蛇行の期間には、関東や東海地方で平均気温が約1度上昇し、降水量も1.5倍に増加した年もあった。猛暑や梅雨時の豪雨が頻発し、台風の進路が東寄りとなって本州を直撃しやすくなり、沿岸地域では高潮や浸水被害が増加。2019年台風19号上陸時には、潮位上昇と高潮が重なり大規模な浸水が発生した例もあった。
■農業への影響
夏季の異常高温により、トマトやナス、ピーマンは果実焼け・着果不良(実がつきにくくなる)などの高温障害に見舞われた。水稲は品質の劣る米の発生や品質低下、梅雨時の高湿度で病害虫被害も拡大。台風による果樹や野菜の塩害、植物が倒れる被害、ハウス損壊も各地で発生した。
■終息後の展望
黒潮大蛇行が終息し、流路が安定することで猛暑や豪雨の頻度の減少や漁場の回復などが見込まれる。ただし、気象が完全に平常化するわけではなく、台風や地球温暖化など他の災害リスクは依然残る点に注意が必要である。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。