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CO2は悪ではない 米エネルギー省の報告書が日本の気候変動政策を揺るがす?

2025/08/21
更新: 2025/08/23

米エネルギー省から7月23日、公表された「温室効果ガス排出が米国の気候に与える影響に関する批判的レビュー(A Critical Review of Impacts of Greenhouse Gas Emissions on the U.S. Climate)」と題する報告書が、世界中で進められてきた気候変動政策の科学的根拠を巡る議論を再燃させている。

この報告書は、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などが示す主流の科学的見解とは異なる結論を提示しており、その内容と背景に注目が集まっている。 

この報告書は、CO2は汚染物質ではなく植物の成長を促す恩恵ですらあると述べ、気候モデルによる将来の温暖化予測は誇張されていると指摘。さらに、ハリケーンや干ばつといった異常気象の激甚化は観測データ上見られず、行き過ぎたCO2削減政策は利益よりも害をもたらすと結論付けており、現在の世界の政策潮流とは大きく異なるものだ。

キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志氏は、報告書を委託したトランプ政権のクリス・ライト エネルギー長官が、「メディア報道等で過大評価された見方を正し、バランスを提供するため」主流派とは異なる視点を持つ科学者にレビューを依頼した点を指摘している。

報告書の著者の一人、ジュディス・カリー博士も自身のブログで「科学の復活」と記すなど、これまで主流の見解に埋もれがちだった議論が公の場に出てきたことを歓迎している。 

この報告書がまず問題視するのは、政策の科学的根拠そのものである。報告書は、現在の気候モデルが観測データを十分に再現できず、温暖化を過大に予測する傾向があると批判している。

これに対し、これまで国際的な政策の基礎を築いてきたIPCCなどの主流派は、モデルは物理法則に基づいており、過去の大規模な気候変動を広範囲にわたって再現することに成功していると主張する。

不確実性は残るものの、将来の気候を予測するための最良のツールであり、人為的な影響がなければ近年の急激な温暖化は説明できないというのが主流の見解だ。 

また、報告書はCO2を「悪」とする単純な見方にも疑問を呈す。

CO2濃度の上昇が植物の光合成を促進する「施肥効果」という恩恵を強調する一方で、主流の見解は、このプラス効果が温暖化による熱ストレスや干ばつといった負の影響で相殺、あるいは上回るリスクがあると警告している。 

過剰な規制がもたらす経済的損失についても両者の見解は鋭く対立する。

報告書はEVシフトの強制などの急進的な政策がもたらす害を主張するが、主流の経済モデルは、逆に対策を講じなかった場合の将来的な物理的被害による経済損失の方が、対策コストをはるかに上回ると試算している。

 さらに、この報告書は科学的議論のあり方そのものにも言及している。

杉山氏らが指摘するように、これまで「気候危機説」への異論が許されない空気があったと主張するのに対し、主流科学界は、IPCCの報告書自体が世界中の科学者の活発な議論と査読を経て形成されたものであり、「封殺」という表現は事実に反すると反論している。

この一件は、科学的な論争に留まらず、国際政治にも影響を与えている。

報告書を支持するトランプ政権はCO2規制の撤廃を提案。これに対し、EUは「科学的コンセンサスを無視する行為」と強く反発し、炭素国境税(CBAM)の対米適用を示唆している。

日本政府は、公式には「2050年目標は不変」としつつ、同盟国アメリカの政策転換に苦慮し、慎重に動向を注視する姿勢だ。 

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます