2025年7月28日夕方、米ニューヨーク市マンハッタンのミッドタウンにある高層オフィスビルで銃撃事件が発生し、警察官を含む4名の犠牲者が出た。また、犯人も自ら命を絶ち、事件の死者は計5人となった。
事件が発生した345パーク・アベニューのビルには、「ブラックストーン」をはじめとする米国有数の金融大手、全米フットボールリーグ(NFL)、アイルランド総領事館などが入居している。事件発生当時、現場周辺はビジネス街特有の喧騒に包まれており、グランド・セントラル駅やセント・パトリック大聖堂にも近いことから、多くの通行人やオフィスワーカーが恐怖に包まれた。
エリック・アダムズ市長は同日夜の記者会見で、「またしても意味のない銃撃事件で4人の尊い命を失った」と哀悼の意を表した。犠牲となったニューヨーク市警のディダルル・イスラム警官(36)はバングラデシュ出身で、3年半にわたり市警に勤務し、これから子どもが生まれる妻と2人の子を遺したという。
ニューヨーク市警のティッシュ警察本部長の報告によると、事件は午後6時28分(現地時間)頃、複数の911通報から明らかになった。防犯カメラの映像には、ネバダ州ナンバーの黒いBMWから男性が降車し、ビルへ向かう姿があった。この人物こそが、後に犯人と特定されたシェーン・タムラ(27)であり、ラスベガス在住で過去に精神疾患の履歴があったことが判明している。
タムラはビルのロビーに侵入後、まず正面玄関付近にいたイスラム警官を至近距離から銃撃。その後、柱の陰に隠れていた女性にも発砲した。ロビーを銃撃しながら進み、エレベーター付近の警備員も射殺。さらにこの時、重体となる男性にも発砲した。一方で、逃走を図る人々の中で4名が軽傷を負ったという。
その後、タムラはエレベーターで33階に上がり、不動産管理会社「ルーディン・マネジメント」のオフィスが所在する同フロアでも発砲。付近にいた女性が犠牲となった。最終的に、現場で自身の胸を撃って自殺し、事件は終結した。警察が押収したタムラの車両からは、弾丸の入ったライフルケース、装填済みのリボルバーの弾とマガジン、リュックサック、タムラに処方された薬などが見つかった。車内から爆発物は発見されていない。
タムラの車両は、2日間でコロラド、ネブラスカ、アイオワを横断し、事件当日の夕方にはニュージャージー州に到達していた記録があるという。犯行動機については現在も調査中であり、なぜこのビルを標的にしたのかは依然として不明だ。
FBIも現場を支援しているものの、捜査の主導はニューヨーク市警が担っている。ティッシュ警察本部長は「イスラム警官は、街の安全を守るために懸命に職務を全うし、命を落とした英雄である。彼の勇気と献身に心から敬意を表する」と述べた。
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