自分の食事は節約するのに、猫にはペットフードを欠かさず、扇風機をあてる優しいおじちゃんだった……。
7月6日朝、中国・山東省で連日40度を超える猛暑が続くなか、青島大学の学生寮で働いていた60代の男性管理人が熱中症で命を落とした。
冷房のない劣悪な環境に放置された末の悲劇に、学生たちは、大学が殺したようなものだと怒りの声を上げた。
大学側は、体調不良で倒れていたとだけ発表し、高温や熱中症には一切触れなかった。この曖昧な説明に対し、「真相を隠そうとしている」との批判が集中した。
悲報は、一時SNS上で話題となったが、関連トピックはわずか1時間でランキングから削除され、言論統制の動きに学生たちの不信と怒りはさらに高まり、多くの学生は「その死を隠すな」と訴え、SNSでの拡散に力を注いだ。本紙による複数の学生への取材とSNSでの声を通じて、管理人の苦境が明らかになった。
亡くなった管理人は「猫好きで面倒見の良い優しいおじさん」として知られ、自分の食事は1日3元(約60円)に切り詰める一方で、保護した猫にはペットフードを買い与え、扇風機まで用意していたという。
心が折れそうなとき、管理人が保護した猫に触れて癒され、彼の存在に支えられていたと、多くの学生が語る。
学生たちが強い憤りを感じているのは、管理人が8か月間も給料を支払われていなかったという点だ。本紙の取材では、「猫が病気になっても病院に連れて行けなかった」「捨てられた服を拾って着ていた」といった証言が相次ぎ、極度の困窮状態にあったことが明らかになった。

SNS上では「大学が命を奪ったも同然」「これは間接的な殺人だ」といった投稿が爆発的に拡散され、関連投稿には数十万件の反応が集まった。
さらに、大学の財務の使い方を批判する声も上がっている。内部事情に詳しい関係者によると、大学は高級茶葉や観葉植物を大量に購入し、使われないノートパソコンを倉庫に積み上げる一方で、学生寮の空調には予算を回していなかったという。学生たちは「大学は命を守る現場より、無駄な飾りを優先している」と批判を強めた。
この事件は青島大学にとどまらない。7月6日には、同じ山東省の煙台市にある南山学院でも、エアコンのない学生寮で学生が熱中症となり、救急搬送された。空調のない教育現場の危険性は、すでに各地で現実のものとなったのだ。
今年の暑さは、中国の気象当局も「歴史的な酷暑」と認めるほど深刻であり、35度を超える猛暑日は、広範囲にわたって続き、地表温度が60度に達した地域もあり、もはや空調の有無は生死に関わる問題となった。
管理人の「おじちゃん」は、誰かの父であり、仲間であり、学生たちの心の支えでもあった。その命が、「無関心」と「経費削減」の名のもとに奪われたという事実は重く、命よりも面子や装飾を優先する体質を改めない限り、同じような悲劇は繰り返されるだろう。
日本でも連日の猛暑が続く今、「空調はぜいたく品ではなく、命を守るインフラである」という認識を持つことが、国境を越えて求められていた。

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