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【秦鵬觀察】 羅帥宇事件 中共からの3億円の口止め料と臓器収奪の闇

2025/06/18
更新: 2025/09/26

中国共産党(中共)が羅帥宇氏の両親に1500万元(約3億円)の口止め料を提示した。湘雅第二病院の臓器収奪告発は、中国の権力闘争と医療腐敗の闇を浮き彫りにしている。

湘雅第二病院の生体臓器収奪および臓器売買に関与する黒幕を告発した後、羅帥宇氏は死亡した。この事件はいまなお疑念を深めている。彼の父母は納得せず、より高位の中共当局に介入を求め、さらに、1500万元におよぶ口止め料の存在が、さらなる憶測を呼び起こした。この金の背後には、いかなる深い闇が広がっているのか。本稿では、湘雅病院の背後に存在するより重大な罪悪の構造を明らかにする。

羅帥宇氏の父親は、黒幕がなぜ自分の息子の命を奪う必要があったのか理解していない。羅医師は、巨大なシステムに触れてしまった。一旦それが明らかになれば、どれだけの中共の高官が断罪されることになるだろうか。

今回の事件がネット上で急速に注目を集めた背景には、中共における熾烈な内部権力が関係している。

1. 羅帥宇事件とは何か

2024年5月8日、湖南省長沙市の中南大学湘雅第二病院で実習中の羅帥宇氏(28歳)が、寮付近のビルから転落し死亡した。彼の両親は、息子のパソコンから1万1119ページに及ぶ告発資料を発見し、同病院が生体臓器収奪および売買に関与している事実を突き止め、公開した。この事実が世論を大きく揺るがせ、先週には、この事件が検索ランキングの上位に再浮上し、中国本土のSNS上で大きな話題となった。

6月13日、湖南省当局は長文の通報を発表し、羅帥宇氏の死因を自殺と断定し、他殺の可能性や臓器収奪の告発内容を否定した。通報は、羅帥宇氏が残した録音証拠の内容を「8万元を手に入れた」→「腫瘍を手に入れた」、「ついていなかった」→「梗阻(障害や支障)がなかった」と歪曲し、証拠の信憑性を薄めようとした。しかしこの通報は、逆にさらなる論争を呼び、当局が事実を隠蔽しているとの批判が高まった。ネットユーザーの多くは、調査の公正性に強い疑問を抱いた。

印象に残るネット上の声が2つある。1つ目は新浪ユーザー@仟萬源によるもので、「私の彼氏を思い出した。山東大学で臨床医学を学んだが、医師を辞めて工場勤務を選んだ。当時、誰もその決断を理解できなかったが、今なら分かる。彼は本当に良心的な人物だった。今では、命がけで海外移住を目指す人々の心情も理解できるようになった。私も文明というものを確かめるために海外に行ってみたい」と述べた。

もう1つは、著名メディア人@石述思によるコメントである。

「羅帥宇事件は三稜鏡(プリズム状の光学器具のように、見る者によって姿を変える。政府は『学業のプレッシャー』を、家族は『殺人の疑い』を、世間は医療システムの腐敗を見た。時はすべてを覆い隠すが、信頼もまた風に舞う砂のように失われていった。通報がなぜ受け入れられないのか。それは民意が天秤となっているからだ。良心と常識だけは裏切ってはならない」

 父親が公開書簡を発表 公式説明を厳しく批判

6月14日、羅帥宇氏の父親・羅甫祥氏は、家族を代表して公開声明を発表し、公式通報の内容に対する数々の疑問を提示した。彼は常識をもとに、通報に含まれる嘘や矛盾を厳しく反駁した。

たとえば、当局が主張した「羅帥宇の頭部が地面に衝突後、水平に3メートル跳ね返った」という説明は、物理法則を無視したものであると批判している。警察はコンピュータのパスワード設定のために起動できないと主張したが、家族が復元した大量のデータを無視した。

また、「また博士課程に進学したら飛び降りる」と言われているが、羅帥宇はそもそも博士課程を受けていないのだから、どうして飛び降りることができるのだろうか?

公開書簡では、臓器提供の合法性についても問題点を列挙した。倫理審査表の記録では、ドナーは11歳の少女・呉紅恰とされているが、父は呉姓、母の情報は不明。しかも、親族の電話番号を照会したところ、謝更祥という別人の名が表示された。この人物は誰なのか。少女の父ではないのか。制度に対する根本的な疑念が浮上した。

COTRS(中国臓器移植応急システム)の調査対応にも問題がある。羅家は、50件の提供事例について、ドナーの死亡証明や親族の署名原本を含む完全な証拠チェーンの開示を求めたにもかかわらず、調査チームは「システム照会」の一言で済ませ、原始証拠を提示していない。これでは、調査と認定の正当性を自ら否定する行為に等しい。

この公開書簡は、事実を丹念に整理し、法的な根拠をもとに理路整然と論じており、政府の公式通報よりもはるかに信頼性と説得力を備えていた。ここで一つひとつ取り上げる余裕はないが、読者自身の目で判断してほしい。

羅氏の家族、真相究明へ決意 重要な録音を再公開

羅氏の家族は真相解明をあきらめておらず、一切の妥協を拒んだ。6月16日、父親は、13分34秒の録音データを公開し、湘雅第二病院内部における複数の違法行為を暴いた。

その中には、劉翔峰の8桁の銀行口座情報、蒋姓を名乗る幹部による愛人への便宜供与、親族のコネによって愛人の学歴を捏造した件、整形外科で1千元未満のネジを1万元で販売する実態、さらには病院内での臓器売買に関する詳細な証拠が含まれていた。これらの情報は、ネット上で大きな反響を呼び、さらなる波紋を広げた。

2.中共が提示した1500万元の口止め料

本事件において最も印象的であった点は、羅帥宇氏の父親が以前自ら明かした内容である。羅氏の一家に対し、1500万元(約3億円)で沈黙するよう持ちかけた者が存在したが、両親はこれを明確に拒否した。

読者諸氏には、熟考を求めたい。いかなる秘密が、これほどの巨額で封じられようとするのか。羅帥宇の自殺の証拠か、医師たちの「雑談」とされる録音か、あるいは「(臓器)合法な提供」を証明する資料か。いずれも該当しない。

この資金提供の背後に病院自身の判断があったとは考え難い。父親によれば、最初に中共衛生健康委員会へ告発資料を提出した後、初めて交渉が持ちかけられ、「1500万元で解決する」との申し出がなされた。ここから明らかなのは、資金の指示を出した主体が、より大きな権力を有する勢力であるという点である。

1500万元という金額が示すのは、当局が隠蔽を試みた、その秘密の深刻さに他ならない。本件の核心に位置するのは、ただの医療の不正ではなく、生体臓器収奪である。

羅帥宇氏が生前に収集した1119ページに及ぶ資料は、「病院の闇百科事典」とでも呼ぶべき内容を含んでおり、湘雅第二病院において体系的な臓器売買ネットワークが形成されている実態を示していた。救急科や移植科など複数の部門が関与していて、内容は以下のとおりである。

 

湘雅第二病院における生体臓器収奪の証拠

録音証拠:

録音には「肝臓は要るか」「腎臓2つ」といった会話が含まれており、湘雅病院において臓器取引が日常業務として扱われていた実態が浮き彫りとなった。さらに、ある録音では医師が羅帥宇氏に対し「外に出て3~9歳の子供ドナーの下大静脈血を採取するように」と指示していた。

医学的な知識を持っている人であれば、「ドナー」とは臓器移植のために臓器が摘出される人を指すことを理解し、下大静脈血の採取は、臓器の生化学的モニタリング、移植前後の機能評価、免疫プランの調整等に用いられる。死者からこれらの検体を得ることはできず、しかも3~9歳の子供ドナーを12名も「簡単に」確保していた点は、病院の闇の深さを如実に物語っている。

ドナーの出所

一部の児童ドナーの住所が「派出所」と記されていた事例が確認されている。また父親によれば、救急科が「遺体安置所」のように機能し、入院直後に「脳死」と判定され、臓器摘出が行われていた。

病歴および提供証明の偽造

これほど大規模な偽造行為を、数人の医師や看護師で完結させることは不可能だ。父親が発表した公開書簡では、「COTRSシステムの調査に重大な疑義がある」と明記されており、家族が50例の提供事例について、ドナー死亡証明・親族署名原本などを含む完全な情報公開を求めたにもかかわらず、調査チームは「システム照会」で済ませたという。COTRS(中国人体臓器分配・共有コンピュータシステム)は、中共衛生健康委員会の下に設置され、多部門が関与する国家的システムであり、この全体が偽造に加担していたことを示唆した。

以上の情報から、「異常な資金の流れ」の理由が浮かび上がる。医師たちに渡された資金は、良心を黙らせるための口止め料であった。

湘雅病院はさらに深い闇を抱えていて、国際的な独立調査機関の研究結果によれば、同病院は中国国内の臓器移植ネットワークにおいて重要な役割を担っていた。調査結果の要点は以下のとおりである。

移植件数の異常

湘雅第二病院は、長沙市最大規模の三級甲等病院であり、肝臓・腎臓・心臓・肺・小腸・膵臓を含む全臓器移植資格を有し、2002年以降、肝移植数が急増し、全国上位に名を連ねた。

待機時間の短さ

臓器提供までの待機時間は平均2週間であり、国際基準である数か月から数年と比較して異常に短い。アメリカには億単位の臓器提供登録者が存在するが、中国では提供者が極端に少ない。これは合法的な提供や死刑囚の臓器だけでは説明がつかず、違法なルートの存在を示している。

過酷な手術スケジュール:

2005年の報道では、湘雅病院の移植外科医が連続20時間以上手術し、3~4時間の休息を挟んで再び手術に従事したとされる。看護師は何度も交代し、2~3日で十数件の手術を実施、1日で9件の腎移植を行った記録もある。これらの臓器の供給元は極めて不明瞭であった。

同院は、1985年に湖南省初の死体腎移植を実施したが、当初は年間数例に留まっていた。ところが、2001年9月に中共が法輪功の弾圧を開始した後、移植数が爆発的に増加し、2002年には半年で過去の累計を上回る移植件数を記録した。2010年の報道では、泌尿器外科移植科主任の彭龍開が、累計2千件以上の腎移植を担当し、連日の徹夜手術に携わっていたとされる。

しかし、臓器移植の実行は医師の残業だけで成立しない。根本的な問題は「臓器はどこから来たのか」であり、その闇は極めて深い。

このため、2007年、「追查国際」は湘雅第二病院を、法輪功学習者からの生体臓器摘出を行っている疑いのある機関として、指定した。

3.全国規模の犯罪――湘雅第二病院を超える中国全土に広がる生体臓器収奪ネットワーク

羅帥宇氏が命を落とした理由は、彼と両親が対峙していた相手が湘雅第二病院にとどまらず、中国全土に張り巡らされた生体臓器収奪産業のネットワークだったからである。この犯罪は、その規模の大きさと邪悪さにおいて、常識を超えていた。

調査によれば、中国で臓器移植が最も盛んだった時期には、1千を超える病院が移植に関与していた。2006年に生体臓器収奪の実態が国際的に暴露されたことをきっかけに、中共は、移植許可病院を169か所にまで縮小したが、その後200か所以上にまで増加した。病院の数は減ったものの、各施設での移植件数は、数倍に膨れ上がった。

天津第一中心医院(通称:東方臓器移植センター)は、中国最大級の移植センターである。同院の公式データによると、年間の肝移植数は平均1千件を超え、世界最多の実績を持つ。特徴は、移植規模の巨大さと、極端に短い臓器の待機時間にある。2006年にはアジア最大の移植センターが完成し、臓器の待機期間はわずか2週間に設定されていた。

韓国の「朝鮮日報」の記事では、天津第一中心医院が2004年12月の1週間で44件の肝移植を実施したと報じた。さらに患者の家族からの証言によると、同院では、1日に最大で24件の肝臓および腎臓移植を行ったことがあるという。

同院には韓国人だけでなく、日本、マレーシア、エジプト、パキスタン、インド、サウジアラビア、オマーン、さらには香港・マカオ・台湾など、アジアの20近い国・地域から患者が訪れて、報道では、病棟4階のカフェが「国際会議クラブ」の様相を呈しており、人種の異なる患者同士が闘病体験を語り合っていたと記されている。

院内の描写も生々しい。移植外科の医師たちは病棟と手術室をひっきりなしに行き来し、挨拶すら交わす暇もない日々を送っていた。彼らの口癖は「この数日、特に忙しい。一日に十数件の手術がある」というもので、ある医師は、手術に徹夜で対応し、一睡もせずに勤務を続けたという。

この過密な勤務状況そのものが、異常事態の証左である。

2006年以降、同院では移植専用の病床数が500〜700床に達していた。肝臓や腎臓の移植患者の平均入院期間は30日未満であり、1床あたり年間12人の受け入れが可能である。2014年には、移植センターの稼働率が病院全体の病床使用率を131.1%も上回ったため、追加の病床が割り当てられた。計算すると、年間の移植件数は8千〜1万例に達していたことになる。これは、中国全土の死刑囚数をも上回る数字である。

では、その臓器は一体どこから来たのか?

結論として、生体臓器収奪は中国全体にまたがる系統的な犯罪である。羅帥宇氏が湘雅第二病院を告発した行動は、この巨大な犯罪構造の核心に踏み込むものであった。

4.事件の進展発酵とその背後にある動機――新たな権力者による打破の試みか?

羅帥宇事件は2025年6月に突如として注目を集めた。過去1年間にわたる情報統制とは対照的に、今回の事件は一気にネット上で拡散され、抖音での再生数は20億回を超えた。しかも、生体臓器収奪に関する議論が完全には封殺されず、一部で残されたことは、当局による言論統制が緩和された兆候と読み取れる。

この動きは、温家宝元中共首相や張又侠元中共軍副主席といった新たな権力層が、闇に覆われた臓器収奪問題の全貌を明らかにしようと動いている証拠ではないか、という見方が広まった。

臓器収奪問題は、前中共党首 江沢民体制下で構築された中共の負の遺産であり、軍・医療機関・高級幹部など多くの利権集団が関与する。習近平は江派の排除を試みたが、最終的には権力の維持を優先し、妥協に踏み切った。

現在、温家宝や張又侠が実権を握り、政権の正統性を再構築する一環として、この問題の暴露に踏み出したとすれば、対立勢力の根を断つ意図があると見てよい。ただし、これは極めて危険な行動であり、世論の後押しが不可欠である。

しかしながら、羅帥宇事件が世論の力で可視化された一方で、当局は調査を継続しながらも、真相を隠蔽し続けている。この現実は、世論の力だけではこの闇を突き崩せないことを示し、生体臓器摘出には、中共の多くの高官が関与しており、象徴的な首謀者の逮捕に踏み込まなければ、問題の根本解決には至らず、体制内部からの反撃によって、計画は崩れる恐れがある。

数日前、筆者は番組内で、習近平が権力を失った現在、温家宝と張又侠が歴史の岐路に立ち、三つの難題に直面していると指摘した。これらを解決する最も迅速かつ重要な手段は、法輪功の名誉回復と生体臓器摘出の真相解明である。今回の動きが、すでにその一歩を踏み出している兆しであれば幸いである。

歴史の審判は必ず下される。悪行を重ねた中国共産党は、最終的に人類から拒絶される運命にある。羅帥宇氏の犠牲が、変革の火種となり、正義の光が深い闇に覆われた中華の大地を照らすことを心より願う。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
秦鵬
時事評論家。自身の動画番組「秦鵬政経観察」で国際情勢、米中の政治・経済分野を解説。中国清華大学MBA取得。長年、企業コンサルタントを務めた。米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)、新唐人テレビ(NTD)などにも評論家として出演。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。