中国で“未来の移動革命”と謳われていた無人タクシーや無人配送車。だが今、そのAI車両たちが「逆走・譲らない・避けない・話が通じない」と、“道路の厄介者”と化し、各地道路で立ち往生する事例が続発している。
5月28日、江蘇省の町で2台の無人宅配車が道で鉢合わせし、互いに一歩も譲らず“口論”を始める様子を捉えた動画が中国SNSで話題になった。
「ちょっとどいてよ!」「どいて!」「あんた運転免許証持ってんの?」「バックしろ!バック!バック!」とまさかの無人車同士が音声で“ケンカ”を始めたのだ。
あげくには両車は道路のど真ん中で立ち往生、駆け付けた交通警察も「話が通じず」に困惑、野次馬に来た市民は笑うしかない事態となった。
いっぽうで、SNS上では大盛り上がりを見せた。「どおりで荷物届くのが遅いと思ったらこんなところで道草喰ってたのか!」「無人宅配車同士が道でけんかして渋滞起こして、それで遅刻したと会社に言い訳したところで到底信じてもらえそうもない」といった楽しいツッコミが殺到した。
(道の真ん中で鉢合わせし、互いに一歩も譲らず“口論”を始めた2台の無人宅配車、2025年5月28日、中国・江蘇省)
中国ではここ数年、無人運転技術による宅配車両やロボットの導入が急速に進められているが、技術面での未熟さや運用上の不備によるトラブルも多発している。
完全無人の自動運転タクシーの普及が最も進んでいる中国・武漢市では2台の無人タクシーが出会い頭で対峙し続けたり、道に落ちていた「障害物(袋)」にビビっていつまでも停止したりして大渋滞を引き起こす事例が相次いでいる。
武漢の無人タクシーは渋滞の元凶のみならず、時には街を逆走して路線バスの停留所に入り込み、停留所にいたバスを追い詰めて、ついには停留所から追い出すといった「凶悪事件」も起こしている(2024年8月)。「こっちは絶対譲らんぞ」といわんばかりのただならぬ覇気を発しながら、終始有無を言わせぬ形相で強引に迫りくる「無人タクシー」。その勢いに押されて「勝てる見込みなし」とあきらめた路線バスのほうが妥協をすることになったそうだ。
このほか、広東省深圳市では無人配達車が交差点でバスと接触(2025年5月9日)、北京では無人配送車が自動車(有人)と衝突後に“逃走”する事件(2025年4月8日)も起きている。
AIが人間の労力を補うどころか、道路に新たな“混乱”を生んでいるこの現状、笑いごとでは済まされない。

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