警備員たる者が、また居眠りしてる──そんな市民の声が、今や北京のバス内では、日常の一幕だ。
中国・北京市内のバスに導入された「バス警備(公交保安)」制度が、市民の間で大きな反発を呼んだ。
「不潔」「よく居眠りしてる」「やる気ゼロ」といった批判がネット上にあふれ、制度の廃止を求める声も高まった。
一方、警備員側は「長時間労働」「制服1着」「休みなし」といった過酷な労働環境を訴え、双方の不満が爆発する形となった。
元々、北京のバスには、チケット販売を行う乗務員が配置されていたが、1995年の乗客刺傷事件を契機に「バス警備制度」が導入された。当初は若年層が多かったが、今では高齢者が多く、勤務中に座って居眠りする様子が多くのSNSで拡散されるほどだった。
元バス保安の馮さんは、エポックタイムズの取材に対し、「1日14時間勤務が当たり前、支給される制服は1着だけ。月給はわずか200元(約4千円)休日もほぼない」と告白し、最低賃金レベルの過酷な生活を強いられている実態を訴えた。

だが、この制度の本質は「安全」とは別のところにあるようだ。運行会社は、かつての乗務員よりも安価で雇える警備員を導入することでコストを削減。その一方で、外部委託先による中抜き構造が存在し、実態は「利権ビジネス」との指摘もある。
「安全を名目に、地元の正規職を切って、外注の安上がりな人材を入れただけ。腐敗の縮図だ」と市民の憤りは強まるばかりだ。
こうした批判の高まりを受け、バス会社や警備会社は、ついに運用体制の見直しを開始し、警備員の削減にも着手し始めているというが、失われた信頼は簡単には戻らない。

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