今日、あなたはChatGPTに「ありがとう」と言ったか? 冗談のように聞こえるが、その瞬間に毎年「数千万円規模」の電気代が消費されているかもしれない。これは一体どういうことなのだろうか?
最近、あるネットユーザーがXでOpenAIの最高経営責任者(CEO)サム・アルトマン氏に質問した。ChatGPTとのやりとりで「お願いします」や「ありがとう」と言うことで、OpenAIの電気代は増えるのだろうか?
アルトマン氏は半分冗談で次のように答えた。
「これらの礼儀正しい言葉だけで、毎年『数千万ドル規模』の電気代がかかるかもしれない」
ケイト・クロフォード(Kate Crawford)氏は著書『AI地図集』で、AIは無形の存在ではなく、エネルギーや水、鉱物資源のシステムに深く根ざしていると指摘している。
調査機関Epoch AIの分析によると、約500トークンの回答を生成するには約0.3ワット時の電力が必要で、一見少ないように思えるが、ChatGPTが毎日数十億回のリクエストを処理することを考えると、その数字は驚異的だ。
国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、2024年には世界のデータセンターの年間消費電力が415テラワット時に達し、これは世界全体の電力消費量の1.5%を占める。2030年までにはこの数字が倍増し、2035年には1300テラワット時を超え、現在の日本全体の年間電力消費量を上回る可能性がある。
しかし、AIの「胃袋」は電力だけではなく、大量の水資源も消費する。高性能サーバーは多くの熱を発生させるため、冷却システムによる安定した稼働が不可欠だ。研究者の推計によれば、GPT-3の訓練に必要な水の量は、原子炉の冷却塔を満たすのに必要な水量に匹敵し、一部の大型原子炉では数千万から億ガロンもの水が必要になることもある。言い換えれば、ChatGPTと25~50回やりとりするたびに、500ミリリットルの水を冷却のために消費することになる。
技術的な観点から言えば、ChatGPTはあなたが「ありがとう」と言っても喜ぶことはない。それは意識がなく、冷静で無感情な機械に過ぎない。しかし不思議なことに、私たちはそれでも「ありがとう」と言ってしまう。この行動の背後には心理学的な理由があり、人間は本能的に人間らしい行動特性を持つ非人間的なものを「擬人化」しがちだ。
さらに、AIモデルはしばしば使用者の入力スタイルを模倣する。穏やかで明確、かつ論理的に質問すれば、その返答もより「人間味」を感じさせるものになるかもしれない。
最後の「ありがとう」は、機械に対してではなく、テクノロジーが急速に進歩してもなお、私たちが温かい人間でありたいと願っていることを私たち自身に思い出させるために言うのかもしれない。
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