中国のネット検閲体制が驚異的な規模で拡大していることがアメリカの非営利団体による調査で明らかになった。
「これは習近平政権の政治安全への執着と不安感を反映している」と専門家たちは指摘する。
中国国民の自由を犠牲にして維持されているその検閲体制、その効果については、専門家からは疑問の声も上がっている。
監視国家に突き進む中国
世界のネットユーザーが圧制下の検閲と闘うのを支援する米国の非営利団体「オープン・テクノロジー・ファンド(OTF)」が3月16日に公表した「沈黙の産業:中国で拡大する手動検閲市場」と題する調査報告書の中で、「2015~22年の7年間で、中国国内で173万人のネット検閲員が新たに雇用された」と明かした。
中国当局は国内企業に対して厳格な「情報管理」を義務付けており、検閲が失敗した場合、企業は窮地に追い込まれる。
報告書では、企業による「検閲の失敗」をきっかけに企業が被る被害や危機に関して、複数例を挙げた。
例えば、2016年には新疆の官製メディア「無界新聞」は、習近平の退陣を求める記事を掲載したことで、十数人の社員が逮捕され、会社は操業停止に追い込まれた。
また、2017年6月4日、北京のシェア自転車企業「小藍単車」は、「自転車と戦車は相性抜群」という、天安門事件を連想させる活動を発表したがために、警察の調査が入り、融資の面で影響を受けた。
このような過去の事例もあり、企業側はこうしたプレッシャーにより、審査人員を大幅に増やすことを余儀なくされている。

大規模検閲は「反撃の火種」を生む可能性も
いっぽうで、一部専門家の間では、「このような大規模な監視体制が必ずしも中共政権の安定に寄与するとは限らない」との見方を示している。
台湾の国防部系シンクタンク「国防安全研究院」の沈明室・研究員はエポックタイムズに対し、「大規模なネット検閲は必ずしも効果的ではない」と指摘している。
「国民が抑圧され続ければ、わずかな突破口や不満のはけ口でも、大きな反発となるだろう、そうすれば政権を揺がしかねない、また、仮にこれらのネット検閲員が中共に反旗を翻した場合、内部からの情報漏洩が政権の不安定化を加速させるだろう」と沈氏は警鐘を鳴らす。

監視強化は限界に達しつつある
過去に中共は「天安門事件」や「大飢饉」など、自身にとって不都合な歴史を抹消してきた。しかし、デジタル時代の監視国家には情報の完全な封鎖は難しい。
習近平政権は情報統制と政治安全を最優先に掲げているが、その維持には膨大なコストと人員が必要だ。
いまや中国のどの地方政府も深刻な財政難にあえぐ中、安定維持に回せるだけの資金をどうやってつくるのか。そして、とうとう資金がなくなった時にはどうするのか。
最近の中国共産党(中共)は針の穴ほど些細な出来事でも何でも封殺し、不穏な出来事など何事もないかのように装っている。
中国共産党政権下の中国は、経済はガタガタ、大学生も卒業しても職にありつけず、党内では粛清が続き、習近平自身が推薦した部下でさえ失脚するという熾烈な権力争いを繰り広げている。
最近の当局の神経質ともいえるほどネットの言論を封殺しているのは、ただただ自党の存続のみを考えているからで、国民の生活苦など顧みることなどしていないように思える。
しかしご存知だろうか、政権を取る前は中共も民主政治を叫んでいたのだ。
「共産党についての九つの論評【第九評】 中国共産党の無頼の本性」には次のような檄文が引用されている。
「民主国家にとって、主権在民は普遍の原理である。民主国家を自称する国で主権が人民の手中になければ、それは偽りであり、異常であり、民主国家ではない。党支配を止めず、人民による普通選挙も行わずして、何が民主と言えるのか? 人民の権利は人民に渡さねばならない!」
この宣言は、1945年9月27日付の中国共産党機関紙『新華日報』に掲載されたものだそうだが、この文章の通り、民主主義に邁進していいたら、中国も今のような現状ではなかっただろう。これは14億の人民を騙した史上最大の詐欺ではないだろうか。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。