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ブラックロック パナマ運河の港を買収 香港企業から経営権獲得へ

2025/03/05
更新: 2025/03/05

米投資会社ブラックロックを中心とするコンソーシアムが、香港に本社を置くCKハチソン・ホールディングスから、パナマ運河の主要港湾事業を取得することで合意した。

この取引は3月4日に発表され、トランプ大統領が中国の影響力拡大に懸念を示し、アメリカがパナマ運河の管理権を取り戻すべきだと主張する中で成立した。

ブラックロック、グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)、ターミナル・インベストメントからなるコンソーシアムは、CKハチソンと合意し、パナマ港湾会社の株式90%を約142.1億ドル(約2兆1千億円)で取得する。

パナマ港湾会社は、パナマ運河の太平洋側と大西洋側の主要な港であるバルボア港とクリストバル港を所有・運営している。今回の取引には、パナマの港湾事業に加え、CKハチソンが世界23か国で運営する43の港の経営権の80%が含まれる。

一方で、CKハチソン傘下の「ハチソン・ポート・ホールディングス・トラストが運営する香港、深圳、華南地域の港は売却対象外となり、CKハチソンが引き続き保有する。

CKハチソンの共同マネージングディレクター、フランク・シックス氏は「この取引は、多くの入札や関心が寄せられた競争力のあるプロセスを経て成立した」とし、「合意された取引評価額は非常に魅力的であり、当社の株主にとって最善の選択である」と強調した。

今回の取引総額は228億ドル(約3兆4500億円)で、ブラックロックとそのパートナー企業は約190億ドル(約2兆8700億円)を現金で支払う予定。

買収は、パナマ政府の承認や規制当局の審査、企業精査(デューデリジェンス)を経て正式に完了する見込み。CKハチソンは、今後145日間、買収側との独占交渉を行うことで合意した。

中国共産党の影響力拡大に対する懸念

パナマ運河は独立機関である「パナマ運河庁」が担っているが、中国共産党(中共)の影響力が近年増していることがアメリカ政府の懸念材料となっている。

パナマ運河の両側には5つの主要港がある。そのうち2つはCKハチソンの子会社が運営しており、中共の影響が拡大しているとの見方が強まっている。

CKハチソンは今回の取引について「純粋な商業取引」と説明しているが、そのタイミングは米政府が中国の影響力拡大を警戒し、貿易ルート上の中国系インフラを厳しく監視する動きと一致する。

取引発表前、パナマ政府がCKハチソンとの契約を見直し、バルボア港とクリストバル港の運営契約を取り消す可能性があると報じられていた。

パナマ運河の戦略的重要性と安全保障リスク

パナマ運河は、大西洋と太平洋を結ぶ要衝であり、アメリカの軍事・経済の両面で極めて重要な役割を果たしている。
軍艦や貨物船が行き交うこの航路は、アメリカの国益にとって極めて重要だ。

一部の専門家は、運河の両端に中国系企業が関与するインフラが存在することで、事実上、中国が運河をコントロールする立場にあると警告。これがアメリカとパナマの「中立条約」に違反する可能性や、安全保障上のリスクを高める懸念が指摘されている。

米シンクタンク・ヘリテージ財団の上級政策アナリスト、アンドレス・マルティネス=フェルナンデス氏は、中国が台湾をめぐる紛争時に軍隊を派遣せずとも、運河の機能を妨害できると指摘した。

以前、フェルナンデス氏は大紀元に「パナマ運河はあらゆる破壊工作に対して非常に脆弱だ。中国がそれを実行するのに、軍艦を派遣する必要すらない」と語った。

(イラスト:大紀元、Google Earth、Shutterstock)

世界貿易の要衝としての役割

パナマ運河は年間2700億ドル(約40.5兆円)相当の貨物を取り扱い、世界の海上貿易の5%を占める。そのうち70%以上がアメリカの港と関係しており、アメリカ経済にとって不可欠な航路となっている。

アメリカは運河完成後から支配権を持っていたが、1977年に当時のジミー・カーター大統領がパナマへの経営権譲渡を定めた条約に署名し、1999年にパナマへ主権が移管された。
トランプ氏は、この決定を「愚かな判断」だと批判している。

アメリカとパナマの条約では、パナマ運河の永久的な中立が保証されているが、アメリカは必要に応じて軍事力を行使し、この中立性を守る権利を有している。

今回のブラックロック主導の買収により、世界の港湾所有構造が大きく変化。パナマ運河の主要港2つの管理権が、中国系企業からアメリカ主導の企業へ移った。

ラックロック史上最大のインフラ取引

今回の取引は、ブラックロックにとって過去最大のインフラ投資案件となる。同社のラリー・フィンクCEOは声明で、「この合意は、ブラックロックとGIPの強固な投資基盤を示すものであり、独自の投資機会を提供できることを証明するものだ」とコメント。

さらに、「私たちは、長期的な資本投資を求めるパートナーにとって、ますます最適な選択肢となっている」と述べた。

欧亜グループ(Eurasia Group)ラテンアメリカ部門ディレクターのリサ・グレイス=ターゴウ氏は、「この取引はパナマにとって前向きな動きだ」と評価し、「ムリノ大統領にとって、中国(中国共産党)の影響力を抑えつつ、トランプ氏との関係を安定させることにつながる」と述べた。

The Epoch Times上級記者。ジャーナリズム、マーケティング、コミュニケーション等の分野に精通している。