【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

能動的サイバー防御法案が閣議決定 警察と自衛隊が攻撃元を無害化

2025/02/07
更新: 2025/02/07

政府は2月7日、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた関連法案を閣議決定した。警察や自衛隊が攻撃元のサーバーにアクセスし機能を停止させる「無害化措置」を実施可能にするとともに、通信情報の収集や重要インフラ事業者への報告義務化が柱となる。  

政府は電気・水道・鉄道など「重要インフラ」事業者と協定を結び、サイバー攻撃の兆候を監視するため通信情報を収集・分析できるようにする。事業者には攻撃被害の発生時に政府への報告を義務づけ、違反時には30万円以下の罰金が科される。  

重大な被害が予測される場合、警察や自衛隊は新設される独立機関「サイバー通信情報監理委員会」の事前承認を得て、攻撃元サーバーへの侵入や無害化措置を実行する。ただし、外国政府が関与する高度な攻撃や緊急時は、首相の判断で自衛隊が直接対応する。  

憲法が保障する「通信の秘密」に配慮し、情報収集の適正性を監督するため、内閣府の外局として、サイバー通信情報監理委員会(委員長1名・委員4名)を設置。委員は裁判官や情報通信の専門家から国会の同意を得て首相が任命し、任期は5年となる。情報漏えい時には関係者に最大4年の拘禁刑または200万円以下の罰金が科される。  

政府は2024年末の国家安全保障戦略で能動的サイバー防御の必要性を明記し、与党・自民党が法案策定を主導した。石破首相は「サイバー空間の脅威は極めて深刻」と述べ、今国会での成立を目指す方針を示している。法案は今後、通常国会で審議される見込みだ。

※令和6年版防衛白書の資料「国家安全保障戦略について」のなかで「サイバー安全保障分野での対応能力の向上」について、以下の記載がある。

サイバー安全保障分野での対応能力の向上

サイバー空間の安全かつ安定した利用、特に国や重要インフラ等の安全等を確保するために、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる。

具体的には、まずは、最新のサイバー脅威に常に対応できるようにするため、政府機関のシステムを常時評価し、政府機関等の脅威対策やシステムの脆弱性等を随時是正するための仕組みを構築する。その一環として、サイバーセキュリティに関する世界最先端の概念・技術等を常に積極的に活用する。そのことにより、外交・防衛・情報の分野を始めとする政府機関等のシステムの導入から廃棄までのライフサイクルを通じた防御の強化、政府内外の人材の育成・活用の促進等を引き続き図る。

その上で、武力攻撃に至らないものの、国、重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃のおそれがある場合、これを未然に排除し、また、このようなサイバー攻撃が発生した場合の被害の拡大を防止するために能動的サイバー防御を導入する。そのために、サイバー安全保障分野における情報収集・分析能力を強化するとともに、能動的サイバー防御の実施のための体制を整備することとし、以下の(ア)から(ウ)までを含む必要な措置の実現に向け検討を進める。

(ア)重要インフラ分野を含め、民間事業者等がサイバー攻撃を受けた場合等の政府への情報共有や、政府から民間事業者等への対処調整、支援等の取組を強化するなどの取組を進める。

(イ)国内の通信事業者が役務提供する通信に係る情報を活用し、攻撃者による悪用が疑われるサーバ等を検知するために、所要の取組を進める。

(ウ)国、重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃について、可能な限り未然に攻撃者のサーバ等への侵入・無害化ができるよう、政府に対し必要な権限が付与されるようにする。

能動的サイバー防御を含むこれらの取組を実現・促進するために、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を発展的に改組し、サイバー安全保障分野の政策を一元的に総合調整する新たな組織を設置する。そして、これらのサイバー安全保障分野における新たな取組の実現のために法制度の整備、運用の強化を図る。これらの取組は総合的な防衛体制の強化に資するものとなる。

また、経済安全保障、安全保障関連の技術力の向上等、サイバー安全保障の強化に資する他の政策との連携を強化する。

さらに、同盟国・同志国等と連携した形での情報収集・分析の強化、攻撃者の特定とその公表、国際的な枠組み・ルールの形成等のために引き続き取り組む。

大紀元エポックタイムズジャパン記者。主に軍事・防衛、安全保障関係を担当。その他、政治・経済・社会など幅広く執筆。