日米同盟強化 核戦力を含む「拡大抑止ガイドライン」策定

2024/12/30
更新: 2024/12/30

日米両政府は、アメリカの核を含む戦力による日本防衛に関する「拡大抑止」についての初めてのガイドライン(指針)を作成した。この重要な進展は2024年12月27日に防衛省および外務省によって発表された。

日米政府間の拡大抑止に関するガイドライン

ガイドライン策定の目的は、日米同盟の抑止力強化であり、東アジアの厳しい安全保障環境を踏まえて、2010年から続けられてきた「日米拡大抑止協議」を通じて蓄積された議論に基づき策定された。

ガイドラインの詳細は公表されていないが、ガイドライン策定の発表を伝えた防衛省および外務省の文書では、「同文書(ガイドライン)は、拡大抑止に関連する既存の日米同盟における協議及びコミュニケーションに係る手続を強化するものだった。 同文書はまた、抑止を最大化するための戦略的メッセージングを取り扱うとともに、日本の防衛力によって増進される米国の拡大抑止のための取組を強化するものです」と述べ、「日米同盟は、拡大抑止が強固かつ信頼できるものであることを確保する最善の方法を探求し続けます」と結んでいる。

日米拡大抑止協議

令和6年度版の防衛白書によると、日本は戦後最も厳しい安全保障環境に直面しており、周辺国の核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急速に進んでいる。中国は2030年までに1千発以上の核弾頭を保有する可能性があり、北朝鮮は既に日本を攻撃できる核ミサイル能力を持つとみられる。ロシアはウクライナ侵攻を続けながら核威嚇を行い、2023年2月には米露間の戦略核戦力の上限を定めた新戦略兵器削減条約(新START【Strategic Arms Reduction Treaty】)の履行停止を発表しており、今後、ウクライナに対する侵略で通常戦力を大きく損耗したことを背景に、さらに核戦力への依存を深めていく可能性も考えられる。こうした状況下で、日本の安全保障にはアメリカの核抑止力を中心とした拡大抑止が不可欠となっている。

日米拡大抑止協議(EDD:Extended Deterrence Dialogue)は、2010年以降、東アジア地域におけるアメリカの拡大抑止に関する最初の定期的な協議として実施された。この協議には、両国の安全保障政策部局、軍備管理担当部局、自衛隊、アメリカ軍関係者が参加し、核抑止を含む拡大抑止の維持強化に向けた取り組みについて議論している。

EDDでは、インド太平洋地域の安全保障環境評価、通常戦力や米国の核能力の検討、同盟の戦力態勢の最適化などが話し合われ、二国間協力の向上策や軍備管理アプローチについても協議されている。また、机上演習の実施や重要な軍事アセットの相互視察(アメリカではB-2戦略爆撃機を、日本では陸自水陸機動団の水陸両用車・AAV7などを視察)を通じて、両国の能力や南西防衛の重要性についての理解を深めている。2023年1月の日米「2+2」では閣僚レベルでも拡大抑止について議論が行われ、今後もEDDや様々なレベルでの協議を通じて、アメリカの拡大抑止の強化に向けた取り組みを継続していく方針だ。

今回のガイドライン策定は、今後の日米間の安全保障協力の深化に重要な役割を果たすものと考えられる。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。