米海軍 法外なドローン迎撃コスト 費用対効果の改善が急務

2024/12/08
更新: 2024/12/08

艦船に深刻な損害を与える安価なドローンの普及を前に、ドローン防衛のコストパフォーマンス改善が急務となっている

米海軍がその防衛・戦闘能力をいっそう向上させるには、より費用対効果に優れた迎撃ミサイルと先進的火砲の配備が必要になる。

現状、米海軍はミサイルに多額の予算を注ぎ込んでいる。2万ドル(約300万円)をはるかに下回るコストで船舶に甚大な被害を与えられるドローンの普及を前に、防衛面での費用対効果の見直しが急務となっている。

ドローン1機では駆逐艦一隻を沈めるには至らないが、重要な通信システムやレーダーなどにダメージを負わせ、破壊する殺傷力を備えている。この種のドローンが集団で迫ってきた場合、艦隊のいかなる艦船にとっても重大な脅威となる。

問題は、現状の主要なドローン迎撃手段として、1発当たり90万〜400万ドル(約1億4千万〜6億円)の高価なミサイルしか保有していない点にある。仮に、これらのミサイルがドローン迎撃に100%有効であっても、数百ないしは数千のドローンを長時間にわたって発射できる敵に対し、高価なミサイルへの依存は現実的ではない。

幸いなことに、高コストのミサイル問題を解決できる方法は存在する。その名は「Tamir(タミル)」ミサイルだ。タミルはイスラエル軍が運用する対空迎撃ミサイルで、迎撃システム「アイアンドーム」を艦載化した「Cドーム」防空システムに搭載されている。

タミルは1発当たりわずか5万ドル(約750万円)でいかなるドローン攻撃にも対応でき、巡航ミサイルの迎撃も可能だ。紅海でドローンやミサイルの迎撃を行う米海軍は、それまでの高価なミサイルに代わってタミルを運用することで、大幅にコストを削減できる。

しかし、費用対効果の高いミサイルの採用は、殺傷能力の高いドローン攻撃に対処するための一要素に過ぎない。

もう一つの重要な要素は、先進的な火砲技術を活かすことだ。ミサイルよりもはるかに安価な火砲は、迫り来る数十のドローンを容易に迎撃できる性能を備えている。その代表例が、イタリア企業が開発したオート・メラーラ 76ミリ砲だ。同砲は通常砲弾のみならず、GPS誘導砲弾およびレーダー誘導砲弾を発射できる仕様になっている。

特に、セミアクティブ・レーダー・ホーミング方式のDART誘導砲弾はミサイルおよび小型ボートの破壊目的で設計されているため、速度が遅く脆弱なドローンの迎撃には非常に効果的だ。紅海で任務にあたるイタリア海軍は実際に同76ミリ砲を用いてイエメンの反政府武装組織フーシ派が発射したドローンを撃墜している。

正式な数字は公表されていないが、時速320キロメートルを下回る鈍足さで一般的な巡航ミサイルよりも脆弱な低コストドローンに対し、76ミリ砲であれば一度に十数機を補足・撃墜できると推測される。これにCドーム防空システムを加えれば、自艦にとどまらず半径50〜60キロメートル範囲内の味方艦艇さえも防衛が可能だ。

費用面で、76ミリ砲は圧倒的に安価だ。価格にして300万ドル(約4億5千万円)の同砲は、紅海で使用されてきた430万ドル(約6億4千万円)のSM-6ミサイル1発よりも調達コストが低い。DART誘導砲弾の購入価格は公表されていないものの、仮にそれらを数万発単位で購入できれば、一発当たり数千ドル以下、すなわち敵ドローンの調達コストを下回る費用で迎撃が可能となる。

当然、火砲やミサイルといった物理的な防衛手段のほかに、電子戦による対処も怠ってはならない。敵ドローンに対する電波妨害、電子攻撃、ハッキングなどがそれに該当する。ただし、そうしたソフト面での防衛は補助的なものに過ぎず、火砲やミサイルの重要性が揺らぐことはない。

Cドームや76ミリ砲システムの導入には多額の初期投資が必要だが、1機5千ドル(約75万円)のドローンを1発数百万ドル(数億円)のミサイルで迎撃している現状を鑑みれば、投資回収に時間はかからない。むしろそれは、より費用対効果に優れたドローン防衛が実現することを意味する。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
国防改革を中心に軍事技術や国防に関する記事を執筆。機械工学の学士号と生産オペレーション管理の修士号を取得。