今年9月上旬、上海市に住む袁さん(女性)は4歳の子供と共に市内のホテル「上海金橋海昌企鵝万信酒店」に泊まった。ホテルはオープンして間もないため、内装の臭いが非常にひどかったという。
袁さんは滞在中からホテル内はホルムアルデヒドの濃度が基準値を上回っているのではないかと気が気ではなかった。
すると、なんとホテルに泊まった翌日、一緒に宿泊していた子供が高熱を出し、胸が苦しいと訴え、リンパも腫れたという。子供はそのまま入院治療することになり、医師からは、主に小児に発症する血管炎疾患の「川崎病の可能性」と診断された。
「やっぱりあのホテルに泊まったせいだ」と確信した袁さんは市民サービスホットライン(12345番)に連絡した。事情を伝えると、問題のホテルは9月4日に衛生監督当局が行ったホルムアルデヒドの簡易検査でひっかかっていたことを知らされたという。
袁さんは続けて衛生監督当局に電話をして確かめると、「問題のホテルは、この前の検査でホルムアルデヒドの濃度が、基準値を少しだけ上回っていたが、その後委託した第三者による検査で、合格との結果が出た」と告げた。
腑に落ちない袁さんは調査を続けると、問題のホテルに関するクチコミやレビュー(評価)で、案の定「内装のにおいがひどかった」「滞在後体調不良になった」「胸が苦しかった、目の痛みなどの不快感があった」など、過剰なホルムアルデヒドの吸入による症状を訴える人も少なくないことが判明した。なかには「絶対ホルムアルデヒドが基準値超えている」と断言する人もいる。
袁さんはSNSに訴え、「事件」は中国SNSのトレンド入りし、複数の中国メディアも取り上げた。しかし、メディア報道ではいずれも「ホテルの問題ではない」とする公式結論を伝えているだけだった。
いっぽう、世論では依然として「ホルムアルデヒドの濃度が基準値を上回っていた可能性」を信じる声は多く、「新築・リフォームしたてのホテルへの宿泊は控えるよう」呼びかける声が広がっている。
現在この件は「官製による判定」が出て、また中国メディアもそれに追随しているがために、表向きでは「子供の川崎病発症とホテル滞在の関係性はない」という事になり、「事件」は迷宮入りした。しかし、少なくとも母親は「関係ない」とは信じてはいない。
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