【専門家コラム】中国共産党の戦略 世界覇権への道

2024/09/02
更新: 2024/09/02

アメリカの共和党と民主党の多くの分析家は、中国共産党(中共)がさまざまな手段を通じて全球的な覇権を求めていることを共通認識としている。

『ブリタニカ百科事典』によれば、覇権は一般的に「ある集団が別の集団を支配すること」と定義されている。これはまさに中共の目標であり、その影響は地球上のすべての人々に及び、男女や年齢を問わず、最終的には中共が地球上のすべての人を支配しようとしていることを意味している。

中共は段階的に目標を達成する傾向があり、まずは以前に征服したチベット族やウイグル族などの少数民族に対して民族浄化を実施し、時機が整った際に国外にその触手を伸ばし、グローバルな覇権を実現し、全世界を災厄に陥れることを目指している。

中共の破滅的な経済政策はすでに飢饉を引き起こしており、中国の一人当たりGDPはアジアの他の国々、特に日本、韓国、台湾よりも低い水準にある。

中共のこれらの政策は、ドイツのカール・マルクスや旧ソ連のウラジーミル・レーニン、ヨシフ・スターリンの共産主義思想に基づいており、習近平はこれらの思想を利用して中国を統治している。

ドナルド・トランプ前大統領の在任中、華人学者のマイルズ・ユー(Miles Yu・余茂春)氏は、当時のマイク・ポンペオ国務長官の重要な中国政策首席顧問として活動していた。

共産主義の覇権

ユー氏は大紀元時報で習近平の統治について次のように説明している。

「マルクスは統治の経験がないが、共産主義の枠組みを築いた。レーニンはプロレタリア独裁とプロレタリア先鋒隊(つまり党)の最高の地位を利用して政権を握った。スターリンは『私が党であり、私が革命である』という個人崇拝を通じて権力を掌握した。習近平の統治スタイルはマルクス主義、レーニン主義、スターリン主義の集大成であり、『新時代中国の特色ある共産主義』と呼ばれている」

スターリンは極権主義者であり、習近平もまた同様に極権主義者と見なすことができる。二人は世界革命と共産主義の覇権を追求しているが、そのアプローチは異なる。

今年の4月、ユー氏はスタンフォード大学フーバー研究所に『共産党の重要性:中国の正統なイデオロギーの進化とその世界的支配のビジョン』というタイトルの論文を寄稿している。この中で、ユー氏は中共がロシア、イラン、北朝鮮といった「代理人」を利用して、アメリカに対する「世界的な戦略的干渉と転移」を生み出していることを指摘している。彼はまた、中共が「アメリカとの最終的な軍事対決に向けて積極的に準備を進めている」と考えている。

ユー氏は、中共が勝利を確信していると述べ、「これはアメリカの世界的リーダーシップの終焉を示し、中共の世界的覇権の出現を意味する。これは、マルクス、レーニン、毛沢東、そして習近平が意識形態的に実現しようとした最初の目標、すなわち世界共産主義体制の確立にますます近づいている。疑いなく、この体制は世界で唯一残る共産主義国の主要な影響と支配の下に覆われることになる。この国は、永遠に意識形態的に正しい中共の指導の下にある」

ユー氏はここで皮肉を込めて、中共が常に自らを完璧だと考えていることを指摘している。これは中共に自己検証の機会を与え、文化的にその「完璧性」に脅威を与える可能性のある集団や個人を排除することを可能にする。国連の定義に従えば、この排除は技術的には一種の民族浄化にあたる。

中共の「二重基準」

米民主党員たちも中共の覇権的行動に対して同様の懸念を抱いている。ラッシュ・ドシ氏は『長期競争:中国の大戦略がアメリカの秩序を置き換える(The Long Game: China’s Grand Strategy to Displace American Order)』を執筆し、2023年にオックスフォード大学出版局から出版している。ドシ氏はビル・クリントン氏とジョー・バイデン氏の大統領選挙チームでアジア政策顧問を務めていた。

ドシ氏はその著書の中で、「中国は地域的および国際的なレベルで、アメリカと置き換わるためのさまざまな戦略を推進している」と述べている。この二つの主要な戦略には、アメリカの政治、経済、軍事力と機関を「鈍化」させ、中共の力と機関を確立して取って代わることが含まれている。

覇権のいくつかの定義には、覇権者や支配者への脅迫や説得を合法化する規範や理念の支持が含まれる。

北京には国際共産主義に基づく一連の規範があり、中共の覇権を正当化しようとしている。しかし、スターリンの極権主義的な行為が広く知られるようになった後、これらの基準はその影響力を失った。特に、彼が飢饉をウクライナ人に対する民族浄化の手段として利用したとされることが含まれている。

中共は自らの民族浄化や覇権の追求を否定しているが、これらの主張は基本的に検証や反論に耐えられない。

例えば、2022年の中共の文書によれば、「習近平は、中国はあらゆる形態の覇権主義と強権政治に断固反対し、冷戦思考に断固反対し、他国の内政への干渉に断固反対し、二重基準に断固反対する」と述べている。

しかし、中共の行動はその公の発言と矛盾している。まず、中共は全中国を代表していると主張しているが、中国の国民は自由で公正な選挙を通じて中共にその権限を許可していない。

次に、中共は「強権政治」と「冷戦思考」に反対すると主張しているが、米ソ冷戦を終結させるための核兵器制限協定に署名することを拒否している。

第三に、中共は他国の内政への干渉に反対すると主張しながら、TikTok(中国本土では「抖音」と呼ばれる)を通じて、全世界で10億以上、アメリカで1.7億のユーザーに対して政治的影響を及ぼしている。それに対して、中共はアメリカのソーシャルメディアが中国に進出することを禁止している。

最後に、中共は「二重基準」に反対すると言っているが、国際法を利用してハワイ近海の海底採掘権を主張しつつ、南シナ海に関する国際法の裁定を無視している。

中共のこれらの発言は、その二面性と不誠実さを完全に表しており、全く信じることができない。似たような誤った論理が中共のプロパガンダに溢れており、その目的は中共の独裁的な支配を世界的な覇権の最終目標に拡大することを助けることに他ならない。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。