米SNSが標的に 中国共産党による法輪功迫害の新手口

2024/08/20
更新: 2024/08/20

中国共産党(中共)は、米国政府、メディア、インフルエンサーを標的にし、信仰を持つ人々を「根絶」しようとしているとの情報が入った。

中共政権内部とのパイプを持つ関係者の話によれば、中共の法輪功に対する国際的な抑圧キャンペーンが特に米国で激化しているという。

その新しい手口は、米国のソーシャルメディアやマスコミを利用して誤った情報・主張を拡散し、世論の扇動および米法執行機関による対法輪功取り締まりを狙うものだ。

米国に暮らす反体制派の華人は長い間中国共産党の標的となってきた。一方、法輪功に関する情報分析団体「法輪大法情報センター(以下、FDIC)」は8月7日、中共のそうした手口がこれまで以上に大規模かつ洗練されたものになってきていると指摘する。

「中共政権は世界規模での法輪功迫害を強化すると決定した。具体的には、プロパガンダや偽情報の拡散を推し進め、中国以外、特に米国での法輪功弾圧を拡大するとしている」

「中共による法輪功弾圧が最終局面に入ったとみられる」

内部告発者によれば、中国共産党の工作員は法輪功に関して否定的かつ悪意のある情報をマスコミやSNSのインフルエンサーに流している。

その狙いは、米国当局が法輪功関連組織を対象とした調査を行うよう仕向けるための主張をでっちあげることだ。

以前、中国人2人がアメリカ合衆国内国歳入庁(日本の国税庁に相当)の職員と思われる者に5万ドル(約700万円)の賄賂を渡して法輪功学習者の運営する組織の監査情報の開示を求めたところ、その職員の正体はFBI捜査官だった。2人は賄賂行為で有罪となり、中共の作戦は失敗に終わった。

中国公安部が今年6月に開催した地方会議では、スパイを動員して法輪功内部の対立を生成、増幅させ、法輪功を標的とするSNSのインフルエンサーの強みや厚さ、その影響範囲を絶え間なく強化・拡大する方針が定められた。告発者の会議メモによって明らかになった。

中国共産党の25年にわたる迫害によって亡くなった法輪功学習者に追悼の意を表すため、キャンドルナイトに集まった法輪功学習者たち(Madalina Vasiliu/The Epoch Times)

メモには、「米国社会から広く関心を集め続け、米国政府にあらゆる方面で法輪功を攻撃させることで、法輪功の力を排除する必要がある」と記されている。

内部告発者によって提供された2つのメモには、6月に開かれた異なる会議の内容が詳細に記録されていた。

メモによれば、中国共産党職員には、法輪功学習者のコミュニティに潜むスパイを利用して米国政府に対する反対・抗議運動を引き起こす権限が付与されている。また抗議活動中に「何かしらの事件」を起こす指示もあり、米当局に対する挑発を狙っている。

米シンクタンク・安全保障政策センターの上級フェローで対中戦略分析アナリストのブラッドレイ・セイヤー氏は、「憂慮すべき進展だ」と警告する。

「米国政府に中共による工作活動を見分ける能力があるかどうかが懸念される」

中国シンクタンク・中信改革発展研究基金会の内部報告書を記録したメモによれば、中国共産党は今後、「国営メディアや大学の研究機関などのリソースを動員し、法輪功を中傷する情報を海外メディアと積極的に共有していく」としている。

中信改革発展研究基金会は中信グループの傘下にあり、中国最大の国有複合企業の1つだ。中信グループは多数の海外企業を有し、中国共産党による工作が巨大な民間企業にまで浸透していることを示唆している。会議メモはFDICに提供され、エポック・タイムズが検討を重ねた。

北京で開かれた全国人民代表大会に出席する中国共産党軍の代表ら(Frederic J. Brown/AFP via Getty Images)

告発者によれば、中国公安部は迫害に関する情報がこれ以上海外に漏れないよう、国内外の法輪功学習者のコミュニケーション手段を完全に断ち切るように命令された。

法輪功はゆったりとした5式の功法と「真・善・忍」という道徳的な原則をもち、1992年に中国社会に伝えられた。90年代の終わりには、およそ7000万〜1億人が法輪功を修煉していたと言われる。

当時の中共トップ・江沢民は中国共産党の統制下にないあらゆる集団を許容できなかったため、1999年に法輪功根絶キャンペーンを開始した。

人権団体の報告によれば、それ以来数百万の法輪功学習者が刑務所、強制収容所、留置所に入れられ、信仰を放棄させるための洗脳や拷問を受けた。複数の独立調査団も、中国共産党は臓器移植産業を拡大するために法輪功学習者を中心とした良心の囚人を殺害してきたと結論づけている。

告発者は、中国共産党は海外の法輪功コミュニティ内部に膨大な数のスパイを送り込んでいると警告した。具体的な数は明らかではない。

昨年、1人の欧州出身の法輪功学習者が親戚を訪ねる際に中国で拘束され、FDICはその者の証言を入手した。その者は拘束期間中、欧州にある法輪功学習者の組織で仕事を見つけた後に組織内部から中国共産党に情報提供を行うよう当局から勧められたという。かなりの好待遇で、身分を偽るためにSNS上で反中共の投稿を続けるようにも言われたという。証言の内容は、エポック・タイムズが検討を行った。

中信改革発展研究基金会の内部報告では、中国共産党は海外に送り込んだスパイを駆り立て、「米大統領選挙および2大政党の対立を利用して法輪功弾圧を推進する」としている。

FDICは、法輪功に関するでたらめな主張について綿密に調べるよう米国社会および政府に呼びかけている。

「一見無関係な評論家や事件なども中国共産党の公安当局が背後にいる可能性が高い。それを、米国政府および世間一般が広く認識することは喫緊の課題であり、極めて重要である」とFDICは指摘した。

2024年2月8日のワシントン米国議会議事堂(Madalina Vasiliu/The Epoch Times)

FDICはさらに米国政府に対し、「法輪功を標的とした偽情報の拡散を検知、制限するために」外国代理人およびSNSサービスを提供する企業に対して登録を義務付ける法律を制定するよう促した。

米政府内において、中国共産党による法輪功迫害に反対する動きがますます活発になっている。近頃、法輪功学習者を狙う中共スパイが複数人逮捕された。米国務省は声明を発表し、投獄されている法輪功学習者を解放するよう中国当局に求めている。6月には、中国での「臓器狩り」に関与した外国人に対して制裁を科すことを定めた「法輪功保護法案」が米下院で可決された。

神韻芸術団が標的に

「神韻芸術団(以下、神韻)」はニューヨークを拠点とする中国古典舞踊と音楽の芸術団で、2006年に法輪功学習者らによって設立された。中国共産党の神韻に対する妨害行為とその手口は多くのリーク情報が明らかにしている。

神韻は中国共産党によって汚される前の伝統的な中国文化を表現する。そこで中共は、神韻の存在は統治を脅かすものと考えるようになった。

FDICの報告書では、「神韻はたった1回の舞台で、共産主義以前の中国文化がいかに壮麗かを描き出す。そして、中国共産党の存在しない中国がいかに素晴らしいものかを予見させる」と述べている。

神韻芸術団は、失われかけた中国伝統文化の美しさを描き出す(Courtesy of Shen Yun Performing Arts)

演目の中には、中国で迫害に直面する法輪功学習者を描写する現代劇もある。

神韻は文化復興の大きな力となり、現在8つの芸術団を抱えるまでに成長した。それぞれが自前のオーケストラをもち、毎年100万人の観客に向けてツアーを行う。エポック・タイムズは神韻のメディアスポンサーを務めている。

米コンサル企業「BlackOps Partners」のCEOで、サイバーセキュリティ、経営リスクの専門家であるケイシー・フレミング氏は、神韻が中国共産党の主要な標的となってきたと指摘する。

「中国共産党は神韻の存在自体が許せないのである」とフレミング氏は語る。

中国共産党の新しい手口とは、でたらめな主張をでっちあげることで米国政府が神韻に対して調査を行うよう誘導するというものだ。

2018年10月4日、サイバー脅威に対処するための戦略・技術に関する国際会議「Borderless Cyber conference in Washington」に出席するケイシー・フレミング氏(Samira Bouaou/The Epoch Times)

そのプロパガンダ発信元は、SNSのインフルエンサーだ。ここ数年、特に2人のインフルエンサーがYoutube上で反法輪功、反神韻の動画を投稿、拡散している。

1人は某中国国営メディアの日本支部で以前記者を務めていた。もう1人は米国に住む中国系移民で、自身の動画チャンネルで神韻団員に対する脅迫的な投稿をしてきた。

昨年、ニューヨークにある神韻トレーニング施設の近くに1人の男が出没し、米連邦捜査局(FBI)はニューヨーク当局に対し、その者が「武器を携帯している可能性があり、危険だ」とする警告を出した。警察が家宅捜査したところ、男の違法な武器所持が発覚した。

中共の内部メモには、「全ての地方政府は(インフルエンサーらを)バックアップし、法輪功に対する攻撃を徹底的にサポート(しなければならない)」とあり、「公安当局の収集した法輪功を貶める情報を全て提供するように」との命令も下っている。

インフルエンサー2人は、ルール違反または技能面での脱落によって神韻を離れ、不満を持った元ダンサーたちにインタビューを行っている。FDICが報告書で指摘した。

報告書によれば、「神韻に反感をもっていると思われる元ダンサーらは、神韻のイメージを汚すために明らかな嘘と歪曲した事実を混在させている」

「でっちあげのナラティブが米国世論を扇動し、神韻と法輪功に対する反感を生じさせる」

中国共産党は米国メディアでの嘘情報の拡散において一定の成功を収めてきたようだ。米大手紙「ニューヨーク・タイムズ」は、不満を持つ元神韻ダンサーの主張に基づくと思われる記事を出している。

2024年2月5日、ニューヨーク・タイムズ・ビルディング(Samira Bouaou/The Epoch Times)

FDICは、「Youtubeに出演した元ダンサーとニューヨーク・タイムズ紙の取材を受けた元ダンサーの間には共通点があるようだ。ニューヨーク・タイムズ紙の報道が中共によるキャンペーンの影響を受けている可能性がある」と指摘する。

神韻を標的とした事件は近年増加傾向にある。X(旧ツイッター)では元神韻職員に扮したアカウントが出現し、荒唐無稽な発言を繰り返した。

報告書は、「訴えが受理されたのちに運営側が当該アカウントを削除したが、これは中国人を標的とした中共の世論誘導キャンペーンが背後にあることを示唆している」とした。

中共の策略

FDICの調査によれば、中国共産党による妨害行為のうちの多くは「中国との良好な関係を維持したいなら神韻の舞台をキャンセルしろ」と劇場および政府に圧力をかけるものだ。

ニューヨーク・神韻キャンパスへの不法侵入や器物損壊も複数確認され、神韻ダンサーの家族は中国で迫害を受けている。他に、神韻芸術団ツアーバスのタイヤが刃物で切られ、破裂寸前に至る事件も発生した。

タイヤの側面が約7インチ(18cm)切られた跡(地元警察調べ)。2024年3月15日(Courtesy of Shen Yun security)

偽のIRS(国税庁)職員(実際はFBI職員)を買収しようとした中国共産党の工作員2人は、5月にも神韻芸術団の成長を阻害する目的で神韻トレーニング施設および学校を相手取って環境訴訟を起こした。

他方、中国ビジネスに携わる1人のアメリカ人が、近年神韻を相手取った環境訴訟を起こしている。

3月、神韻キャンパスおよび舞台を主催する米国と台湾の劇場に一連の爆破予告と銃乱射予告の脅迫メールが届いた。

エポック・タイムズがメールのメタデータを調べたところ、一部は台湾法務部の公式アカウントから発信されたものだった。専門家は、脅迫メールの犯人はハッキングで乗っ取りをしたか、なりすましアカウントを作成したとみている。

フレミング氏は、「神韻との間でちょっとした問題を抱えるにすぎない者にとって、これはあまりにも度が過ぎている」と指摘する。

ニューヨークのトレーニング施設で稽古を行う神韻ダンサーたち(Courtesy of Shen Yun)

フレミング氏の専門家チームによれば、中国共産党が実行犯である可能性が最も高い一方で、最終的な判断を下すには数か月におよぶ地道な検証作業が必要だとした。

「表面的には、誰が最も利益を得ているか、誰にとって最も都合が良いのかを見る必要がある。それが中国共産党だということだ」

米国土安全保障省の創設メンバーでサイバーセキュリティの専門家のゲイリー・ミリエフスキー氏も同様の見解を示した。

「アヒルのように歩き、アヒルのように鳴き、アヒルのような見た目をしているなら、おそらくそれはアヒルだろう」「国際政治に口を出すつもりはないが、発信源が台湾の外にあるのは明らかだ」

Petr Svab
ニューヨーク担当記者。以前は政治、経済、教育、法執行機関など国内のトピックを担当。
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