【プレミアムレポート】犯罪傾向の追跡困難 10大都市の犯罪率で分析

2024/07/06
更新: 2024/07/06

ニュース分析

アメリカ全土で犯罪は増加しているのか、それとも減少しているのか?  警察は FBI に統計を報告する方法が変更されたため、近年、全国的な犯罪傾向を追跡することが困難になっている。

しかし、大規模な警察署の犯罪データを個別に検討すると、より明確なパターンが浮かび上がる。

大紀元は数年前のデータを分析したところ、アメリカの大都市を悩ませた犯罪の急増は緩和したものの、犯罪率は2020年夏の抗議活動や暴動(BLM)以前の数字を上回っていることが分かった。

特に自動車窃盗は高止まりしている。一方で、強盗は一部の大都市で大幅に減少している。

この分析は、人口が最も多い上位10都市と、殺人、強盗、加重暴行傷害(武器の使用によって、又は死亡若しくは重い傷害を伴うような同種の手段によって,重い傷害を加える目的でなされる他人に対する違法な攻撃)、自動車窃盗の4つの犯罪に焦点を当てている。これらの犯罪は、国勢調査局が実施した全国犯罪被害調査によると、警察に最も確実に報告される傾向がある。

ニューヨーク市(人口820万)

アメリカ最大の都市は、2020年中頃から暴力の急増に見舞われた。これは、米ミネソタ州ミネアポリスで警察に拘束されていたジョージ・フロイドの死を受けて、全国で抗議や暴動の波が押し寄せたためである。

同年の銃撃事件は倍増し、1850人以上が負傷または死亡した。ニューヨーク市警察のデータによると、自動車窃盗は数十年減少していたが、66%増加した。

犯罪は2021年も増加を続け、殺人事件は488件と、過去10年間で最多となった。

2022年に殺人事件は約10%減少したが、他の重大犯罪の件数は引き続き増加した。自動車窃盗は2019年から150%以上増加した。1千ドル以上の価値のある物品の窃盗や重罪の暴行が、1990年代以来見られなかった数値に達した。

暴力犯罪は2023年にはさらに減少した。また殺人事件は11%減少したが、それでも2020年以前の数値を20%以上上回っている。一方で、自動車窃盗や重罪の暴行は再び増加した。

今年に入ってからは、殺人事件はさらに減少しているようだが、それでも2019年の同時期の数値を20%以上上回っている。強盗や重罪の暴行は昨年よりも増加し、2019年の水準を40%以上上回っている。自動車窃盗はやや減少したものの、依然として2019年の2倍だ。

殺人事件数

ロサンゼルス(人口380万人)

ロサンゼルスはニューヨーク市と似たような軌跡をたどっている。2020年に犯罪が急増し、殺人事件を除いて2022年まで増加を続けた。殺人事件は2021年に401人の死者を出し、2006年以来最大となった。

不完全なデータに基づくと、2023年の犯罪は若干減少しているようだが、殺人は依然として2019年より30%高く、重罪暴行は約17%増加し、自動車窃盗は70%以上増加している。

今年、ロサンゼルス市警察は毎週の犯罪報告書を発表していないようだ。広報担当者は、同署が新しいシステムに切り替えるため報告書は入手できないと語った。

同局は今年6月22日までの数字を発表した。暴力犯罪は2023年の同時期と比べて3.5%増加し、殺人も同様だった。強盗は18.5%増加し、窃盗は4.2%増加した。財産犯罪(財産権を侵害する犯罪・窃盗、詐欺、横領、賍物および背任の総称)は減少した。

シカゴ(人口270万人)

シカゴでは2016年に殺人事件が急増した。しかし2019年までに、なんとか抑え込むことができた。その後2020年に他の都市と同様に暴力事件が再び爆発し、2021年も増加し続け、殺人事件は811件に上り、1995年以来最多となった。

2022年以降、殺人は減少しているが、その他の犯罪は増加し続けている。今年に入ってから、殺人は2019年の同時期と比べて20%増加し、強盗は40%増加、加重暴行は4%増加し、自動車窃盗は150%増加している。昨年、シカゴでは約3万台の自動車が盗まれた。これは少なくとも2000年以降で最多の数字だ。

強盗件数

ヒューストン(人口230万人)

ヒューストンは2015年に始まった暴力の波をまだ抑え込もうとしていたが、2020年に新たな波が襲った。翌年の2021年、同市では471件の殺人事件が記録され、1994年以来最高の殺人率を記録した。

それ以来暴力は緩和されているが、昨年の殺人事件は依然として2019年を20%以上上回っている。

今年1~4月の4か月間で殺人事件は減少したようだが、加重暴行事件は2019年の同時期より20%近く多く、自動車窃盗は50%近く増加している。

一方、強盗事件は2019年以降着実に減少しており、2023年には25%減少。

フェニックス(人口160万人)

フェニックスは2016年に暴力事件が急増し、2020年にも再び増加した。2022年には217人が殺害され、2007年以来の最高の殺人率となった。

2023年には暴力事件がやや減少したが、自動車窃盗は22%増加した。

今年の第1四半期には、特に3月に殺人事件が5件と減少したため、殺人事件の減少が見られた。しかし、自動車窃盗や加重暴行はほとんど変わらず、強盗は2023年の第1四半期と比較して17%増加している。

加重暴行の件数

フィラデルフィア(人口150万人)

フィラデルフィアは2021年に562件の殺人事件という記録的な数になった後、驚異的な回復を見せている。今年これまでのところ、125件の殺人事件が記録されており、2021年の同時期の265件と比較すると大幅に減少している。これにより、フィラデルフィアは数十年ぶりに最も死亡率の低い年の一つになる見込みだ。

強盗や加重暴行は、昨年と比較してだけでなく、2019年と比較しても減少している。

しかしながら、この改善は自動車窃盗の大幅な増加(160%増)や小売窃盗の186%増加という大きな問題によって汚されている。これらは共に2019年と比較した数値である。

サンアントニオ(人口150万人)

サンアントニオはよく知られたパターンをたどった。2016年に暴力事件が増加し、2019年までに減少、2020年に再び増加し、2022年には230件の殺人事件でピークに達した。これは1994年以来最悪の殺人率である。

2023年には殺人事件が大幅に減少したが、自動車窃盗はさらに急増した。その年には1万9千台以上の車両が盗まれ、1992年以来最悪の率と思われる。

今年の最初の5か月間では、殺人事件は依然として22%増加しているが、強盗は2019年と同じだった、加重暴行は13%減少し、自動車窃盗は2019年同期比で117%増加している。

サンディエゴ(人口140万人)

サンディエゴの犯罪率は全国平均とほぼ同水準で推移しており、同規模の都市としては驚異的な成績だ。それでも2020年には暴力事件が急増した。殺人事件は2022年にピークを迎え、記録上はわずか65件だった。

今年最初の5か月間に報告された殺人事件は17件で、2019年の同時期の15件を上回っている。加重暴行は約27%増加している。一方、強盗は14%減少し、自動車窃盗は2019年のレベルをわずか8%上回る程度である。

自動車窃盗の件数

ダラス(人口130万人)

ダラスには独自の物語がある。殺人事件は2019年に増加し、2020年にピークに達した。その後、2年間減少したが、昨年再び増加し、自動車窃盗も40%急増した。

今年の最初の5か月間では、昨年と比較して殺人事件は再び減少したが、それでも2019年の水準を28%上回っている。自動車窃盗も約25%減少したが、それでも2020年の水準を約50%上回っている。

過去の数年との比較は、ダラス市が2020年以前の月別犯罪データを提供していないため、複雑である。エポックタイムズは、2019年の月別自動車窃盗データをダラス警察に求めたが、テキサス州情報公開法に基づいて請求するように指示された。エポックタイムズはこれに従ったが、記事の発行時点ではデータを受け取っていなかった。

ジャクソンビル(人口98万6千人)

フロリダ州の人口増加に伴い、ジャクソンビルは今や国内で10番目に大きな都市となっている。しかし、ジャクソンビル保安官事務所は、年間殺人件数を除き、近年犯罪統計を発表していない。

2016年から2020年の間にFBIと州の犯罪データプログラムに提出されたデータによると、殺人と加重暴行は徐々に増加しているが、強盗は減少し、自動車窃盗はほぼ横ばいとなっている。

同市では昨年、殺人事件が121件発生し、前年の135件、2019年の129件から減少した。

エポックタイムズは、欠落している犯罪統計に関する公的記録の請求を提出したが、記事掲載時までにそれを受け取っていない。

 

Petr Svab
ニューヨーク担当記者。以前は政治、経済、教育、法執行機関など国内のトピックを担当。