コロナウイルス 訴訟は損害賠償と、ファイザーが州との協定に違反したという宣言を求めている。

カンザス州、ファイザー社を提訴、コロナワクチンで国民を「誤解させた」と主張

2024/06/18
更新: 2024/06/18

カンザス州は6月17日、製薬大手ファイザー社に対して、新型コロナワクチンに関する「誤導」行為で公衆を欺いたとして訴訟を提起した。訴状では、ファイザー社がワクチンの安全性と効果について虚偽の情報を提供し、カンザス州民を誤導したと主張している。

 訴訟の背景と主張

訴訟によれば、2021年4月1日にファイザー社は、「2回目の接種後6か月間に重大な安全性の問題は確認されていない」と発表した。

しかし、訴訟により公開された文書によると、2021年2月28日時点で、ファイザー社の不良事象データベースには15万8893件の不良事象が記録されていた。

カンザス州のクリス・コバック(Kris Kobach)司法長官は訴訟で、「ファイザーのコロナワクチンに関する安全性に問題はないという主張は、ファイザー自身が保有する不良事象データと一致していない」と述べた。

また、ファイザー社は自社のコロナワクチンに関連する重大な安全上の懸念を示す重要な事実を隠蔽、抑制、または省略したとしている。

効果に関する疑義

訴訟ではさらに、ファイザー社が同じプレスリリースで、接種者が2回目の接種後6か月以内に91.3%の予防率を維持すると主張したことを問題視している。

後に公開された文書によれば、ファイザー社は2回目の接種後4か月以内の有効性を83.7%と記録しており、6か月後にはさらに効果が低下している。

ファイザー社は、2021年7月28日に査読前の論文で効果の低下を公表したが、同日に発表したプレスリリースで、別の研究の肯定的な結果を強調した。それには査読前の論文や予防効果の低下に関する言及はなかった。

訴状には、「ファイザーはコロナワクチンの効果の低下を隠蔽し、カンザス州でのワクチン接種から利益を得た。もしカンザス州民が効果の低下を知っていれば、ファイザーのワクチンを選ばなかったかもしれない」と記載している。2021年第2四半期に、ファイザー社はコロナワクチンから約80億ドルの収益を上げた。

ファイザーの声明

ファイザー社のアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は、2023年初めに「私たちはデータを常に審査し分析している。何十億回分ものワクチンを配布したが、ワクチンの安全性に関する警告は見られない」と述べた。

しかし、アメリカおよび他の国々は、2021年に心筋炎の兆候が初めて検出された後、ワクチンが心筋炎を引き起こすことを示唆する証拠があると述べていた。これに基づき、アメリカのコロナワクチンには2021年以降、心筋炎のリスクに関する警告が追加されている。

コバック司法長官は69ページに及ぶ訴状のなかで、ファイザー社が虚偽、誤導、詐欺的な声明を行ったと主張した。2008年にカンザス州や他の州との和解に基づく同意判決に違反したとしている。この和解の一環として、ファイザー社は2種類の処方薬のプロモーションに関して6千万ドルを支払い、今後の情報提供に注意を払うことに同意していた。

コバック氏は声明で「アメリカ国民が真実を必要としているときに、ファイザーは何度も誤解を招くような声明を発表し、ワクチンについて公衆を欺いた」と述べた。

同氏は裁判所に対し、ファイザー社の主張が同意判決に違反していると宣言するよう求めている。なお、違反ごとに2万ドルの賠償を要求している。

ファイザー社はメディアに対して、この訴訟が成功する見込みはないとの声明を発表した。

ファイザー社は「我々は世界的なパンデミックの中で記録的な速さでコロナワクチンを開発し、多くの命を救ったことを誇りに思う。ファイザーのコロナワクチンに関する声明は正確で科学的根拠に基づいている。この訴訟には法的根拠がないと考えており、適切な時期に対応する」との見解を示している。

「ファイザーは患者の健康に深く尽力しており、治療およびワクチンの安全性と有効性を最優先している」と強調した。

ファイザー社のコロナワクチンはアメリカで最も多く接種されており、2020年末からこれまで、3.67億回以上接種されている。

カンザス州の訴訟は、ワクチンの安全性や有効性に関する問題を巡る新たな争点となっており、今後の展開が注目される。