ニュース分析
前大統領ドナルド・トランプ氏の刑事裁判について、弁護団は6月4日に最終弁論を行う予定。陪審員は週の半ばに審議を開始する準備を進めるなか、この裁判が無罪判決、有罪評決、あるいは評決不一致で終わるかどうかについて憶測が飛び交っている。
ある法律専門家によれば、トランプ前大統領が有罪判決を受けた場合、証拠上の問題やフアン・マーチャン判事の行為、弁護側が追及すべき実質的な問題を、控訴審で提起する可能性が高いという。しかし、他の専門家は、裁判の公正さを評価しようとするのは時期尚早だとし、異論を唱えている。
オハイオ州シーダービル大学の法学および憲法理論の教授、マーク・クラウソン氏は、裁判を当初から綿密に研究してきた。同氏は、マーチャン判事は検察側の異議を一貫して支持し、政府に譲歩をしながら、弁護側の多くの申し立てを却下したと述べた。
さらに、今週の法廷で、弁護側証人のロバート・コステロ元連邦検察官が証言したように、マーチャン判事はコステロ氏に見苦しい言動をした。クラウソン教授は、判事の言動は自身を弱体化させると考えている。また、政府がトランプ前大統領の起訴について明確な法的根拠を示せなかったことは、上訴審での適正手続きに関する問題を引き起こすと述べた。
クラウソン教授は大紀元に応じて、このように語った。「私はこの裁判の全ての詳細と微妙な点に注目してきた。地方検事のアルビン・ブラッグ氏は(トランプを『捕える』)という意向を公に表明しているから、これは明らかに政治的な色合いが強いと感じている。さらに、判事の数々の誤った行為が上訴審で問題視されるだろう」
法廷での出来事
5月20日、コステロ証人が証言台に立った際の事件が、大きな話題となった。
コステロ証人の証言が始まって数分後、スーザン・ホフィンガー検察官は、コステロ証人とトランプ氏の元弁護士マイケル・コーエン氏との関係に関する質問の関連性や誘導性について異議を唱えた。トランプ氏の弁護士、エミル・ボーヴ氏の直接尋問を何度も中断した。コステロ証人はこれにいら立ち、「ったく!」と声を上げた。
これを受けて、判事は傍聴席を空け、証人に激しく詰め寄った。
「コステロさん、法廷での礼儀について話し合いたいのですが、いいですか? 証言台に立つ証人として、私の裁定が気に入らなければ、『じぇじぇじぇ(ビックリした時に使う言葉)』とは言わないこと。質問が却下されても、『取り消せ』とは言わないこと。私の裁定が気に入らなくとも、私を横目で見たり、目を丸くしたりしてはいけない。わかりましたか?」
判事は、コステロ証人が単に自分を見ているのではなく、明らかに威嚇の意図を持って見つめている印象を受けたようだ。
「私をにらんでいるのか? 法廷を空けろ!」と叫んだ。
法廷を空にした後、判事は弁護側の弁護士に対して激しい言葉を交わし、コステロ証人を侮辱罪で拘束し、証言を全て取り消すと脅した。
多くの報道でこの事件をクラウソン教授が無礼の一例として取り上げた、クラウソン教授は、これはマーチャン判事の偏見を示すものだと主張している。
同氏は「マーチャン判事は、コステロ証人がマイケル・コーエン氏との関係についてポイントを述べようとする際、検察側がそれを中断するのを許可し続けた。これらの異議は非常に重要な発言だった。判事はそれらの異議をすべて認めるべきではなかった」と指摘している。
「また判事は、これらの問題に個人的な感情を持ち込むべきではない。それは判事としてふさわしくはない」と付け加えた。
判決
クラウソン教授は、判事が検察側に有利な立場をとっている例がしばしばあるとみている。裁判の過程で、特に過去1週間にわたり、マーチャン判事は検察側に有利で、弁護側に不利な一連の判決を下していると述べた。
2024年5月21日、ボーヴ弁護士は、陪審員に選挙法の詳細と、政府がトランプ前大統領が違反したと主張する連邦選挙運動法がカバーする範囲を理解させるため、元連邦選挙委員会委員長ブラッドリー・スミス氏の証言が必要だと訴えた。
ボーヴ弁護士は、スミス元委員長が法の細かな点を説明しないと、陪審員が誤解に基づいてトランプ氏に誤った判決を下す可能性があると説明した。
弁護側は、告発された罪の1つである「ビジネス記録の偽造」は、被告がその偽造を意図的に行った証拠ではないと指摘した。ボーヴ弁護士は政府が不正な帳簿操作の証拠を示しても、それはニューヨークのビジネス法175.10条の基準に達していないと述べた。弁護側は繰り返し、すべての候補者が当然選挙の結果に影響を与えたいと考えており、1つの犯罪が別の犯罪を助長したことを証明するためには、高いハードルを越えなければならないと主張している。
「彼らが指摘しているのは民事上の陰謀であり、これは企業法上の罪の前提にはなり得ない。米国最高裁は繰り返し、犯罪共謀が存在するには犯罪目的がなければならないと判断を下している」
「裁判官、問題点は陰謀罪における故意が、その罪の目的に対する最も重要な故意と一致していなければならないということだ。さもないと、それはただの民事共謀で、トランプ氏を有罪にするためには使えない」
とボーヴ弁護士は強調した。
専門家同士の対立
しかし、マーチャン判事は、弁護側がスミス元委員長を証言台に立たせたいのは、事件に関連する具体的な事実を問うためではなく、一般的な法的見解を求めるためだと主張した。
「スミス元委員長がこれらの話題について証言するなら、検察側も専門家の証言を求める機会を得るべきです。これは専門家同士の対立を引き起こし、陪審員を混乱させるだけで、啓発にはならないだろう」と述べた。
ボーヴ弁護士は判事を説得しようと試み、裁判官が陪審員に与える指示の言葉、「選挙に影響を与える目的で」という表現を明確にすることが、政府が証明しなければならない証拠の重みを陪審員に理解させる上で「非常に重要」だと強調した。
ボーヴ弁護士は、法廷で質問するのは弁護士としては望ましい立場ではないのはわかっているが、これらの問題について陪審に指示を出すかどうか、何かご見解をいただけないだろうかと述べた。
弁護側をいらだたせたのは、判事は提出のタイミングと裁判官自身の哲学的な見解の両方を理由に、この要請を退けたこと。マーチャン判事は、ボーヴ弁護士はもっと早くこれらの問題を提起する機会があったにも関わらず、政府が証拠を提示し終えた時点でそれを行ったと指摘した。
マーチャン判事は「私は、指導を提供した。何か月も前からこれが新しいことではなく、私の立場がどうなるかを知っていた。これらの特定の判決について懸念があれば、もっと早く私に相談することができたはずだ。今、検審はほぼ終わりに近づいている」と述べた。また、「このような問題については、少ない方が良いと私はよく思っている。検審はこれらの告訴を、合理的な疑いの余地なく証明する必要はない。それがすべての言葉やフレーズの負担を軽減する」と付け加えた。
公平中立性の問題
メリーランド州のフランシス・キング・キャリー法科大学院のマーク・グラバー教授は、トランプ前大統領が公正な裁判を受けたと考えている一人である。判事は自分の政治的見解に基づいて、自由に判決を下す権限を持っておらず、マーチャン判事もその例外ではないという。
グラバー教授は「民主党にせよ、共和党にせよ、大半の判事は公正である。もし公正でなければ、上級審によって、判決が覆されることを彼らは承知している」と述べている。
セントポールのハムライン大学で、法学および政治学の教授であるデビッド・シュルツ氏は、審理の公平性について意見を述べるのは、時期尚早だと指摘している。
シュルツ教授は大紀元に「公正な裁判の問題は、ニューヨーク市がどれだけ民主党的であるかではなく、事件について公平な心を持って判断できる12人の陪審員を選ぶことができるかどうかだ。陪審員による不正行為、公表されていない陪審員の偏見、手続き上の誤りがない限り、公正な裁判が行われることを前提とすべきだ」と語っている。
「公正な裁判は不可能だったと今結論するならば、彼が無罪になった場合、どのように反応すべきだろうか?」
(トランプを『捕える』)という意向を公に表明している 地方検事のアルビン・ブラッグ氏の事務所にコメントを求めたが、返答はなかった。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。