米疾病予防管理センター(CDC)元所長のロバート・レッドフィールド博士は、科学者たちが鳥インフルエンザウイルスをいじくり回して感染力を高めることが、次の「大規模なパンデミック」の引き金になると予測し、機能獲得研究の危険性について厳しく警告した。
過去にレッドフィールド博士は、中国のウイルス研究所での機能獲得研究にアメリカの税金が使われたことを厳しく非難した。その研究所は、新型コロナウイルスの起源をめぐる論争の中心となった。博士は今回、この手の危険な科学実験が悪い方向に進む危険性について、再び警鐘を鳴らしている。
最近のNewsNationのインタビューで、レッドフィールド博士は、自身がウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿した最近の論説について振り返った。論説の中で博士は、機能獲得研究の一時停止を求めている。機能獲得研究では、病原体の人体への潜在的な影響を研究するために、その病原性などの特性を変化させる。
賛成派は、この手の研究によって科学者はウイルスの振る舞いや感染経路についてより知ることができ、より効果的な対策が打てると主張している。いっぽう反対派は、このような研究はウイルスをより致死性の高いものにするため、潜在的な利益よりもリスクが大きいと述べている。
レッドフィールド博士はNewsNationに以下のように語った。「この手の研究はすべきではない。これこそが真の脅威、真のバイオセキュリティー上の脅威だ」
「大学の研究室では、ウイルスを故意に改変するバイオ実験が行われている。研究者たちはウイルスにどうやって人間への感染力を高めるかを教えている。私は鳥インフルエンザが大規模なパンデミックの原因になると考えている」
レッドフィールド博士によるこれらの発言と時を同じくして、米国の複数の州で、一般的に「鳥インフルエンザ」として知られる、H5N1亜型ウイルスによる高病原性鳥インフルエンザの乳牛へのアウトブレイク(集団感染)が発生していた。米国農務省によれば、このウイルスは5月13日時点で9つの州の42の乳牛群から検出されており、人への感染は1例のみ報告されている。
鳥インフルエンザの機能獲得研究とは
レッドフィールド博士によれば、このウイルスが自然突然変異を乗り越えてヒトに感染するようになるには、かなり大きな種の壁(遺伝子に基づく異種間の障壁)があるが、人間がいじくることでその障壁が簡単に消える可能性があるという。
そのことが懸念される事例について、心臓専門医のピーター・マッカロー博士の同僚であるジョン・リーク氏とニコラス・ハルシャー氏がブログで投稿している。レッドフィールド博士が警告を発する数週間前のことだ。
投稿によれば、米国農務省は2021年から中国科学院と共同で、マガモを介した鳥インフルエンザウイルスの「連続継代」などの研究を行っていた。(「継代」とは、培養した細胞の一部を採取し、新たな別の培養容器に移す操作のこと。)
リーク氏とハルシャー氏は以下のように述べている。
「連続継代は、自然な人獣共通感染症のジャンプ(動物だけに感染するウイルスがヒトにも感染すること)を加速度的に模倣し、異種間での伝染性を高めることから、機能獲得研究と見なされる。この方法が新たな病原体を人為的に野生に持ち込んだ歴史がある」
リーク氏とハルシャー氏によれば、鳥インフルエンザウイルスに関する米国農務省の研究の大部分は、ジョージア州アセンズにある米国国立家禽研究センターの南東部家禽研究所(SEPRL)の施設で行われているという。
米国農務省と中国科学院が共同で進めている鳥インフルエンザウイルスに関する研究プロジェクトのひとつに、SEPRL施設での「生体内抗原投与作業」がある。この作業では、鳥インフルエンザウイルスを生体(通常は動物)に導入し、その振る舞いや、ウイルスによって引き起こされる免疫反応、複製動態や病原性を観察する。
リーク氏とハルシャー氏は、「この機能獲得の試み」が2021年に開始されてから数ヵ月後に、アメリカの野鳥に新たな鳥インフルエンザウイルスであるH5N1亜型(Clade 2.3.4.4b)が現れ、現在の爆発的な流行につながったと主張している。
「現在のH5N1亜型はアジアからの野生の渡り鳥によって北米に持ち込まれた」と多くの研究者が示している一方で、リーク氏とハルシャー氏は、その説が「疑わしい」と述べ、SEPRL施設で漏洩があったかどうかを調査するよう強く促している。
「ジョージア州アセンズのSEPRL施設、あるいはその他の施設において、実験室で改変されたH5N1亜型鳥インフルエンザウイルス株の流出につながるような漏洩がなかったことを確認するために、緊急の調査が必要だ」
レッドフィールド博士の警告について、リーク氏とハルシャー氏の主張について、そしてSEPRLでの鳥インフルエンザウイルスに関する研究を機能獲得研究とみなすかどうかについて、エポックタイムズは米国農務省にコメントを求めている。
機能獲得研究と新型コロナ研究所流出説
コロナウイルスに関する中国での機能獲得研究に米国の税金が使われたのか、という問題がこれまで注目を集めてきた。何が機能獲得研究にあたるのかという定義の問題もあり、論争はいまだに続いている。
レッドフィールド博士は、武漢ウイルス研究所(WIV)で行われていた危険な機能獲得研究に、結果として米国の納税者が知らず知らずのうちに資金を提供していたと主張している。WIVは、新型コロナ研究所流出説の焦点となった研究所だ。
2023年3月8日、新型コロナのパンデミックに関する下院特別小委員会での質疑応答で、レッドフィールド博士は「米国立衛生研究所(NIH)が機能獲得研究に資金提供していたことは間違いない」と述べている。
新型コロナが武漢研究所から流出したという説について、ニコール・マリオタキス議員が、「このウイルスを作り出した機能獲得研究にアメリカの税金が投入された可能性はあるのか」と質問すると、レッドフィールド博士は肯定的に答え、「資金はNIHやその他の連邦政府機関から提供されたと考えている」と繰り返した。
米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ前所長やNIHのフランシス・コリンズ前所長らは異論を唱えている。
ファウチ博士は2021年5月11日、上院での公聴会で、「NIHは武漢ウイルス研究所における機能獲得研究に資金を提供したことはないし、現在も提供していない」と述べた。
コリンズ博士は2023年5月19日付の声明で、「NIHもNIAIDも、コロナウイルスのヒトへの伝染性や致死性を高める『機能獲得』研究を支援するような助成金を承認したことはない」と述べた。
レッドフィールド博士は議会証言の中で、新型コロナのパンデミックは機能獲得研究の潜在的危険性を示す実際の事例であると述べ、そのような研究は中止するよう求めた。
「多くの人が、ワクチン開発によってウイルスに先手を打つために機能獲得研究が不可欠であると考えている一方で、私は今回の事例ではそれが正反対だったと思っている。止める手段もなく新たなウイルスを世界に解き放ち、何百万人もの人々を死に至らしめてしまった」
「したがって、より広範な議論がなされ、機能獲得研究の価値について科学界のコンセンサスが得られるまで、機能獲得研究の一時停止を求めるべきだと私は考えている」
いっぽうで、米食品医薬品局(FDA)は、鳥インフルエンザがヒトの間で流行し始める事態に備えてる。
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