5月22日、ノルウェー、スペイン、アイルランドの3か国がパレスチナを国家として正式に承認すると発表した。これを受け、イスラエルは、3国の大使をただちに召還した。
ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ首相によると、正式な承認は5月28日に行われる見込みである。
ストーレ氏は声明で「何万人もの犠牲者が出ている戦争のただ中で、私たちはイスラエル人とパレスチナ人に政治的解決をもたらす唯一の選択肢を守り続けなければならない、 二つの国家が共存し、平和で安全に暮らすこと」と述べた。
また、スペインのペドロ・サンチェス首相は議会での演説で、イスラエルのネタニヤフ首相には「パレスチナに対する平和構築の計画がない」と批判し、ガザ地区でのイスラエルによる攻撃が二国家間解決の可能性を損なっていると述べた。
また、「10月7日以降、ハマスと戦うことは正当だが、ネタニヤフ氏は非常に多くの反感を買っている。攻勢は憎しみを増大させ、イスラエルと地域全体の安全保障の見通しを悪化させるだけだ」と付け加えた。
サンチェス氏は「二国家、イスラエルとパレスチナがお互いに安全保障を約束し合うことが唯一の解決策だ」と強調し、ハマスを「排除すべきテロ組織」と位置づけ、パレスチナ国家の承認が「ハマスに対抗するパレスチナ自治政府に力を与える」と主張した。
アイルランドのサイモン・ハリス首相は、他国もパレスチナ国家の承認に続くことを期待していると述べた。
同氏は「アイルランドの夢は、2024年5月28日に、イスラエルとパレスチナの子供たちが平和に隣り合って暮らすことだ」と表明した。
「スペインやノルウェーの友人たちと同時にパレスチナを認めることができ、感謝の意を表す。次の機会に他の国々も同じ行動を取ることを期待している」と綴った。
アイルランド政府はまた、ハマスが拘束している人質の無条件解放と、ガザへの「完全かつ安全で妨げのない」人道的アクセスを求めた。
イスラエル、「厳しい結果」を警告
声明に対する抗議として、イスラエルは5月22日に、ノルウェー、アイルランド、そしてスペインの大使を召還すると発表した。
スペインの声明が公表される前に、イスラエルのカッツ外相は「アイルランドとノルウェーへ、はっきりとしたメッセージを送る。イスラエルはXで、自国の主権を侵害し、国の安全を脅かす行為に対して、黙っていない」と書き込んだ。
「これらの国々によるこの歪んだ動きは、[10月7日の侵攻]の犠牲者らに対する冒涜であり、128人の人質を取り戻すための努力への打撃だ。ハマスとイランのイスラム過激派を助長し、平和への道を閉ざし、イスラエルの自衛権に疑問を投げかけるものだ」
カッツ氏はまた、他国が同様な行動を取らないよう警告した。
「イスラエルは黙らない。スペインがパレスチナ国家を承認する意向を実行に移せば、スペインに対しても同様の措置が取られるだろう」
「アイルランドとノルウェーの愚行は、われわれを躊躇させるものではない。われわれは、市民の安全を回復し、ハマスの解体を進め、人質を帰還させるという目標を達成する決意を固めている。これ以上の正義はない」
2014年の10月に、スウェーデンはEU加盟国として初めてパレスチナを国家として認めた。その後10年の間に、ブルガリア、キプロス、チェコ、ハンガリー、マルタ、ポーランド、ルーマニア、スロバキアも追随した。
オスロ合意の見直し
5月22日の声明を主導したノルウェーは、1990年代初めのイスラエルとパレスチナの平和交渉にも大きな役割を担った。
この和平交渉は、パレスチナの国家承認が和平合意に続くというストーレ氏の言う戦略によって進められ、最終的にオスロ合意に至った。。しかし、それ以来、オスロ合意は徐々に崩壊している。
オスロ合意によってパレスチナ自治政府が設立され、西岸地区とガザ地区の一部を統治する権限を得た。しかし、2007年の内戦の結果、ガザはハマスの手に渡り、現在パレスチナ自治政府が実際に統治しているのは西岸地区の約40%に過ぎない。残りの部分はイスラエルが支配している。
イスラエル国内では、オスロ合意の主要な調印者だったラビン首相が裏切り者の烙印を押され、1995年に暗殺された後、合意が大きく頓挫した。ラビン首相の後任者、暫定首相ペレス氏は次の選挙で敗北し、ネタニヤフ氏が首相になった。ネタニヤフ氏は、イスラエルと並ぶパレスチナ国家の構想にはほとんど関心を示していない。
オスロ合意の手法が失敗に終わったことを認めたストーレ氏は、ノルウェーを含むヨーロッパ諸国が紛争の二国家解決を目指す際には、「異なる考え方とそれに応じた行動」が必要だと訴えた。
「パレスチナの国家承認を、紛争解決の完了を待ってから行うわけにはいかない」と強調した。
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