社会問題 消えた4億人は死んだのか?

塩の消費データが示す、中国の人口急減(中)

2024/05/28
更新: 2024/05/28

2022年に漏洩した中国警察のデータが示唆する、中国の実際の人口が14億ではなく、約10億人である可能性がある。本記事では、新型コロナウイルスの流行が、中国の人口に与えた影響と、消費の統計から見え隠れする事実について、三回に分けて解説する。

二、中国人の1日の食塩摂取量

中国人の1日の食塩摂取量は、人口統計において非常に重要な指標である。

1. 中国人の1日の食塩摂取量に関するデータ

公開情報によると、食塩摂取量の推奨値は機関によって10.5グラムから21.9グラムと幅広い。例えば、マクドナルドのポップコーンバケツには約10グラムの塩分が含まれており、10.5グラムの摂取量がどれほどかが想像しやすいだろう。中国国内外の中華料理店ではこの量を超えることは容易で、中国人にとっては10.5グラムは簡単に超えてしまう。例えば、高速道路で突然60km/hの制限が設けられた場合、多くのドライバーが罰金を科されることになる。中国人の一般的な食塩摂取量が10.5グラムであることは、このような状況に似ている。一方、世界保健機関は健康な成人の1日の食塩摂取量を5グラム以下に抑えることを推奨しているが、これは中国人にとって非常に厳しい目標である。

◎2019年8月19日、中国国家衛生健康委員会が発表した食品安全基準とモニタリング評価報告によると、「中国住民の塩分摂取削減のための10のポイント」の第一項目では、健康な成人は1日の塩分摂取量を5グラム以下に抑えるべきである(1グラムの塩は約400ミリグラムのナトリウムに相当)。しかし、現在の中国の住民の平均塩分摂取量は10.5グラムである。

◎塩産業の上場企業、雪天塩業は2018年の株式公開時に、中国人1人の年間塩消費量が約5キログラムから8キログラムであると報告している。上場企業のデータは通常信頼性が高いため、これを基にすると、中国人一人の1日あたりの塩分消費量は13.7グラムから21.9グラムと推定される。

◎2019年の研究で、イギリスの健康研究機関の支援を受けたロンドンのクイーンメアリー大学が、アメリカ心臓協会のジャーナルに成果を発表している。この研究によると、1980年代に平均12.8グラムだった中国北部の人々の1日の塩摂取量が、11.2グラムに減少し、南部では8.8グラムから10.2グラムに増加している。この調査は、24時間収集した尿サンプルを分析して、塩摂取量を測定したものである。

◎2019年、中国健康教育センターは北京で「減塩健康教育マニュアル」を発表した。2012年の中国国内栄養状況調査によると、18歳以上の中国人の平均的な1日の調理塩摂取量は10.5グラムであるが、加工食品や食品自体の塩を含めると約12グラムに達する。中国人が摂取する塩の76%は家庭料理から、6.4%は醤油から、残りは外食や加工食品からである。

◎2012年、世界高血圧連盟の会長劉力生氏によると、中国南部の住民は1日に10〜12グラム、北部の住民は15〜22グラムの塩を摂取している。

◎2022年の調査によると、中国北部の住民は1日に16〜18グラム、上海の住民は10〜12グラム、広東省の住民はそれより少し少ない塩を摂取している。

2.中国人の味覚はより濃厚になる傾向がある

健康意識の向上により、特に高齢者を中心に塩分摂取の削減が注目されている。そのため、高齢者が多い家庭では塩の使用量が減少している。しかし、食品加工用の塩や若者、農村地域の家庭では塩の消費が増加している。中国では都市化が進み、都市化率は約60%に達しており、多くの人々が農村から都市へ移住している。さらに、2億4千万人の農民工がおり、彼らは濃い味を好む傾向がある。

「996勤務制(朝9時に出勤し、夜9時に退勤し、週6日働く)」の導入により、テイクアウトの需要が急増し、2021年には200億件を超える注文があり、市場規模は9340億元(約20兆6148億円)に達し、2020年のGDPの約1%に相当する。テイクアウト料理は味が濃いことが多く、これは食材の品質が低いためや、密閉包装と配送時間の長さから鮮度を保つために塩分を多用するためである。塩は基本的な調味料であり、適切な塩分が美味しさを引き出す。中国では、レストランや社員食堂でも塩分が多い食品が一般的であり、2021年の市場規模は4兆6895億元に達する。

中国人が塩辛い味を好むことの一例として、塩分の過剰摂取による健康問題が増加している。「塩分を取り過ぎると体に悪い」と言われる通り、塩分を多く摂ると高血圧、脳卒中、胃がん、骨粗鬆症、腎臓病のリスクが増加する。2022年の統計で、中国の高血圧患者は2億4500万人にのぼる。医学研究によると、塩分の過剰摂取は脳卒中や心臓病の主な原因であり、中国人の死因の約40%がこれらの疾患に関連しているという。

3.中国各地の1人当たりの食塩摂取量

インターネットで公開されているデータによると、食塩摂取量は2000~14年、2015~22年の期間に分けて調査され、地域別には北部と南部に分類されている。

(1)2000~14年の中国人の1人当たり食塩摂取量は、2019年のイギリス調査に基づいている。この調査は24時間尿サンプルを用いた塩分摂取の測定で、結果の信頼性が高く、比較的低い数値が示されたため採用された。各省ごとに異なる基準値が設定されている。

表1. 中国の各地域の1人当たり食塩摂取量

 

表1. 中国の各地域の1人当たり食塩摂取量

(2)2015~22年の間、人々の好む塩分量の増加を考慮し、塩分摂取量を10グラムと13.7グラムの2レベルに分けた。広東省、天津市、成都市、浙江省では1日あたり10グラム、他の地域では13.7グラムが標準である。

この記事では、日常の塩分摂取が全て個別包装された塩に由来するという前提で議論を進める。食品加工に使われる塩の量は統計的に扱いにくく、塩分濃度が高い食品に多用されるため、人口統計に基づいた1人当たりの食塩摂取量の見積もりは実際よりも低く見積もられている。そのため、食品加工に使われる塩のデータが不明瞭であることの影響は無視しても問題ないとされる。

三、塩分摂取量に基づく中国の各地域の人口減少率の推定

中国の実際の人口を隠蔽する目的で、中国共産党国家統計局のウェブサイトでは、年間の食塩販売量の情報は掲載されていない。しかし、地方の塩業会社や政府が時々一部のデータを公開することがある。以下に示す情報は、中国共産党の公式サイトから得た各地域の食塩消費量と在庫量に関するもので、この研究のデータサンプルとして使用されている。

中国国内で不安定な状況が発生すると、人々は生活必需品、特に食塩を急いで購入することがある。2003年のSARS、2011年の日本の原発事故、2020年の新型コロナウイルスの流行時には、中国で食塩の買いだめが行われた。このような時、地方の塩会社や政府は市場を安定させるために、保有している塩の量や、その塩でどれくらいの期間消費を支えられるかを公表することがある。この記事では、これらの塩業会社や政府が公表した塩の情報と、保有期間が正確であると仮定し、その情報をもとに地方の小包装塩の消費量を計算し、1人当たりの日常的な塩摂取量を用いて、地方の人口を推定する方法を紹介している。

塩産業の企業が在庫情報を公表する際、食用塩の残量はトン単位で報告される。「食塩」とは、市販されている小包装の塩(輸入塩も含む)と業務用の大袋入り塩を指すが、企業によっては小包装の塩の正確な量を別途詳細に報告することがある。また、報道で「食塩」という言葉が使われる場合、それが小包装の塩を指すこともあるため、文脈を正しく理解することが重要である。

次に示すのは、中国国内のウェブサイトに掲載された、様々な地域と時期における食塩のデータである。表2は、2000~14年までの特定地域のデータをまとめたものである。

1. 2000~14年の集計データ

国内の各地域における推計された人口統計と中国共産党の公式統計との比較は、以下の図に示されている。

 

図4:2000~14年の中国共産党の公式人口統計と塩消費量に基づく推測人口統計の比較

 

2000~14年の地域別人口減少率は以下の通りである。
 

図5:2000~14年の各地域の人口減少率

 

2. 2015~22年の集計データについて:

国内の各地域の推定人口と中国共産党の公表人口データの比較は、次の図に示されている。

 

図6:2015~22年の中国共産党の公表人口データと塩消費に基づく推定人口データの比較。

 

2015~22年の地域別人口減少率は、以下の通りである:

 

図7:2015~22年の中国地域別人口減少率

 

3. 結論

先に述べたデータによると、2000~14年にかけて、中国で実際に減少した人口と公表された人口の差は、平均で約19.29%である。2015~22年の間、この差は平均で約30.79%になると推定されている。

中国共産党が地域ごとの食塩販売量や正確な人口統計を隠しているため、インターネットで得られる情報は限られており、その信頼性に疑問がある。このため、地域ごとの人口減少を見積もる際には誤差が生じ、地域によって人口減少の割合に大きな違いが見られる。データの不完全さが原因の一つであるが、実際には、中国共産党が公表する数字よりも、各地域の人口は明らかに少ないという事実がある。 

 

(つづく)

古嘯
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