FRB、量的引き締め遅らせる 債券メルトダウン懸念

2024/05/08
更新: 2024/05/08

持続的なインフレは、偶然ではなく、それは、ポリシーだった。米国のマネーストック(M2)は2023年3月の水準を上回り、連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシート上の財政赤字を縮小して相殺した。

(M2)は2023年3月のレベルに回復し、昨年10月以降ほぼ毎月上昇している。さらに、米国政府のバランスシート上の赤字は、連邦準備制度理事会(FRBの意思決定機関)の減少予想を上回るものとなっている。バランスシートの支出はピーク時から1.5兆ドル(約233兆1082億円)縮小したが、赤字は依然として年間1.5兆ドルを超えている。

米連邦準備制度理事会が金利を据え置いたことは驚きではない。FRBのパウエル議長は利上げの可能性はないとの見解を示し、市場参加者は安堵した。しかし、パウエル氏が量的引き締めを延期すると発表したとき、最も驚かされたメッセージがもたらされた。

FRBは声明の中で、「6月から、委員会は財務省債務の月次償還上限を600億ドル(約9兆2721億円)から250億ドル(約3兆8633億億円)に引き下げることで、米政府は借金を増やして、国債の元利金を期日通りに支払うことなどが可能になり、債務不履行(デフォルト)を回避できる」と説明した。同委員会は、政府機関債および政府機関モーゲージ担保証券(不動産担保付き証券)の月間償還上限を350億ドル(約5兆4396億 円)に維持し、この上限を超える元本支払いはすべて財務省証券に再投資する。

連邦公開市場委員会(FOMC)の声明は、楽観的な経済見通しを示しているが、このメッセージとは矛盾している。失業率、消費、成長率が堅調な強い経済の中で、なぜFRBはバランスシートの縮小(保有債券を減らす)のペースを遅らせる必要があるのか。

答えはおそらくトレジャリーイールドカーブ(国債の利回り曲線)にあるかもしれない。FOMCは、2年米国債の利回りが危険な5%レベルに達した週にこの声明を発表した。以前は、国債利回りがこのように上昇すると、市場は大幅な調整を余儀なくされた。しかし、FRBが懸念しているのは市場の調整ではなく、政府の財政赤字と公的債務が持続不可能なほど増加している中で、債券市場の安定を維持することである。

FRBはインフレ率を下げることよりも、国債バブルを維持することを優先している。

新たな通貨を刷っている政府の赤字が、コントロールできないままでは、インフレ率を目標の2%まで下げることは不可能だ。FRBがバランスシートの正常化を遅らせ、毎月の償還額が以前の半分以下になっているのだから、なおさら難しい。

この動きで、2年国債利回りが4.8%、10年国債利回りが4.5%と、4月末の4.7%から低下したのは驚くことではない。

FRBは2つのことを認めたがらない。財務省の債務発生量が民間部門の需要を大幅に上回っていること、そしてFRBはインフレ率の上昇よりも、債券市場のメルトダウンを懸念していることだ。

債券のメルトダウンとは、債券の価格が急落、利回りが急上昇ということ。これはFRBにとって極めて危険だ。なぜなら、メルトダウンは米国とヨーロッパの債券指数が2022年の低迷から回復していないときに起こるからだ。さらに、債券価格の暴落は、ファースト・リパブリック銀行が救済を必要としている。連邦預金保険公社(FDIC)によると、銀行部門の企業収益が2023年第4四半期に44%減少したことが3月に判明した。米国の地方銀行のさらなる問題を引き起こすだろう。

2年債利回りが5%を超え、10年債利回りが急騰すれば、FRBがすべてを救済するという期待の下で、高騰したリスクを積み上げ続ける市場に、劇的な調整が起こるかもしれない。

債券市場の低迷は、自己満足的な市場のカードデッキ全体を崩壊させるだろう。

FRBの決定は、世界の国債需要が疑問視されているときに下された。外国人の国債保有高は史上最高を記録したが、この数字は誤解を招く。新規国債の供給量に対して、需要が弱まっているのだ。実際、財務省による新規国債発行の急増は、FRBにとって頭痛の種となっている。公的債務の利払いが1兆ドル(約152兆5087億円)に達し、投資家の需要が堅調に推移しているにもかかわらず、コントロール不能な財政赤字に追いつくには十分でない場合、借入金は著しく割高になる。

米財務省によると、中国の米国債保有高は2か月連続で減少し、7750億ドル(約119兆6700億円)に達している。円安は、日銀は円買い介入・米国債売却する必要があるかもしれない。

もしFRBの経済見通しが公表されているように堅実で、公的資金の支払い能力もしっかりしていれば、正常化路線の大幅な縮小を発表することはないだろう。インフレが高止まりしていることを考えれば、正常化を加速させていただろう。

FOMC声明文が世界に発信するメッセージは、米国の財政は完全にコントロールされておらず、新規国債の異常な供給増加に対する需要が不足しているということだ。

FRBが金利を据え置き、バランスシートの正常化を遅らせることは、2つのマイナスをもたらす。利上げの悪影響はすべて民間部門、家庭、企業の肩にのしかかり、バランスシート管理は公的債務バブルを人為的に膨らませ続け、インフレをより持続させる。

まとめると、今回のFRBの決定は、政府の誤った財政政策を存続させ、その代償としてインフレ率の上昇と長期金利の上昇によって家庭や中小企業をより貧しくさせるという危険なものだと言える。パウエル氏は、政府がインフレを煽る一方で、インフレに対して慎重かつ厳格であろうとしている。
 

この記事で表明された見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。