「中国では10分で臓器手配」豪で臓器取引防止に向けた法改正へ

2024/04/03
更新: 2024/04/22

豪上院委員会では、中国における強制臓器収奪問題に関する新たな法案の審議が行われている。同法案は、豪州に入国する者に対し、海外での臓器移植に関する質問への回答を義務付けるものだ。中国共産党による臓器収奪の実態について相次ぎ証拠が明るみになるなか、豪政治家間でもこの問題への関心が高まっている。

3月25日、上院外務・防衛・通商立法委員会で証言に立ったのは、国際人権弁護士で「中国での臓器移植濫用停止国際ネットワーク」(ETAC)の代表を務めるマデリーン・ブリジット氏だ。同氏は、中国から臓器を調達することがいかに迅速かつ容易であるかを明らかにした。数年前、ある教授が同僚とのプレゼンテーションで、オンラインチャットプラットフォームを通じてわずか10分で中国から臓器を確保できたことを示したという。

「同僚はプレゼンテーションでワッツアップ(WhatsApp)のメッセージを見せました。10分で臓器を手配できたのです」とブリジット氏は委員会で述べた。「合法的な任意の臓器提供システムではこんなことは不可能です」

ブリジット氏は、これほど迅速に臓器が調達できる唯一の方法は、中国に「強制収容所」が存在し、そこで需要に応じて人々が臓器のために殺害されているからだと指摘した。「私は『労働キャンプ』ではなく、実際には『強制収容所』と呼んでいます」と同氏は述べた。

また同氏は、中国における強制臓器収奪を調査した英国の非政府法廷「中国法廷」の調査結果にも言及した。同法廷は、精神修養法である法輪功の学習者とイスラム教徒のウイグル人が、中国共産党による臓器収奪の主な標的となっていると認定している。

「中国法廷は、中国全土で長年にわたり大規模な強制臓器収奪が行われており、法輪功の学習者が臓器提供源の一つ、そしておそらく主要な提供源となっていると結論付けました」とブリジット氏は述べた。「ウイグル族に関しては、臓器バンクになり得る規模の医療検査が行われていたという証拠がありました」

いっぽう、豪州では現在、海外で臓器移植を受けた人の実態把握が不十分だ。ブリジット氏は「海外での移植に関する医療情報が豪州に転送されることはない」と述べ、帰国者の移植状況を把握する必要性を訴えた。「豪州は、誰かが海外で移植を受けて帰国した場合、それを把握する必要があります。移植を受けたという事実だけでなく、どこで誰が手術を行ったのか、そして通常の医療行為のような紹介状も必要です」

また、ETAC委員長のウェンディ・ロジャース教授も、豪州では海外移植が過小報告されていると指摘した。同教授によると、数年前に行われた自主回答式の調査(回答率43%)では、オーストラリア人の腎臓移植手術540件が報告された。しかし、1980年から2018年までの腎臓移植の公式登録簿には279件の海外移植しか記録されておらず、調査で把握された49件は登録簿に含まれていなかったという。

「この調査は任意のものだったことを忘れてはいけません」とロジャース教授は述べた。「豪州が把握していない臓器を持ち帰っている患者が相当数いるという有力な証拠があります」

同教授はまた、国際的な臓器移植の少なくとも10%が闇市場で行われており、中国共産党は産業規模で臓器売買システムを運営していると警鐘を鳴らした。

なお、豪州では現在、臓器売買を連邦法で規制する法律がない。臓器摘出を目的とした人身売買の罪は刑法に規定されているが、これまで一度も訴追されたことがないとブリジット氏は指摘する。

「豪州は国家として、こうした犯罪の訴追に失敗しているのです。あるいは、特定して訴追するのが本当に難しいのかもしれません」と同氏は述べた。

イスラエルや米国、英国など他国では近年、臓器売買を取り締まるための法改正が行われている。これらの国に言及しつつ、ブリジット氏は豪州の法整備の遅れを批判した。

「豪州は法改正で他国に追いつく必要があります。実際のところ、かなり遅れていると感じます」と同氏は述べた。ETACは2018年、臓器売買の犯罪化などを盛り込むよう刑法を改正することを政府に勧告していたが、具体的な進展は見られていない。

中国の臓器収奪問題について国際社会が目を向ける中、豪上院での審議には期待が高まっている。

メルボルンを拠点とするオーストラリア人記者。ローカルニュースやビジネスニュースを中心に担当