臓器狩り、中国巨大ゲノム企業BGIのデータ利用か

2024/03/27
更新: 2024/04/04

世界最大のDNAデータベースを構築し、中国人民解放軍に協力しているとされる中国の大手ゲノム企業、華大基因(BGI)。その遺伝子情報が、臓器狩りに利用されている可能性があるーー。米議会の超党派で構成される米中経済・安全保障調査委員会(USCC)では21日、中国における強制臓器摘出問題に関する公聴会が開かれ、こうした指摘がなされた。

公聴会に参考人として出席したマサチューセッツ工科大学の研究者マヤ・ミタリポヴァ氏は「中国の臓器移植に使われるDNAデータの多くは、法輪功やウイグルなど少数派から不当に収集されたものだ」と証言。「彼らの遺伝情報は、臓器狩りというグロテスクな目的のために利用されている」と警鐘を鳴らした。

臓器移植では、ドナーとレシピエントの組織適合性が重要な要素となる。HLA(ヒト白血球抗原)型と呼ばれるタンパク質の型が一致していないと、拒絶反応が起きるリスクが高まるためだ。この組織適合性を調べるには、ドナーとレシピエントのDNAを分析し、HLAの型を突き合わせる必要がある。

中国の臓器移植件数が増加した背景には、こうしたDNAのマッチングを可能にする「精密な移植医療」の存在があるとみられている。BGIを始めとするバイオテック企業は、HLAの型判定に必要な検査キットを開発。それを臓器移植の現場に提供してきた。

なお、BGIは新型コロナ検査キットの大手でもあり、コロナ禍初期には日本にもPCR検査キットを供給している。

ミタリポヴァ氏によれば、新疆ウイグル自治区では2016年以降、「無料の健康診断」と称して約1500万人もの住民から血液サンプルが集められ、DNAデータが管理下に置かれているという。こうして集められた遺伝情報は、臓器狩りのための巨大なデータベースとして利用されている可能性が高いというのだ。

一方、人権団体の報告によれば、中国では1999年に始まった法輪功弾圧以降、多数の学習者が臓器摘出を強いられてきた。投獄された法輪功学習者には、臓器の適合性を調べるための血液検査が行われ、また多くの人々が行方不明になったという。

公聴会に参考人として出席したジャーナリストのイーサン・ガットマン氏は、「中国の臓器移植件数の急増は、法輪功やウイグルなどの少数派に対する弾圧と驚くほど一致している」と指摘。「臓器移植のために行われる遺伝子プロファイリングは、単なる医療目的ではなく、国家による人権侵害の一環だ」との見方を示した。

ガットマン氏はさらに、法輪功学習者に対する残虐な臓器摘出の実態について証言。「法輪功学習者には、臓器摘出前に麻酔を十分に使わないなどの非人道的な扱いが報告されている」と述べ、「臓器狩りは、政府にとって異議を唱える者を沈黙させるための手段の一つだ」と訴えた。

米議会調査委員会のスミス委員長は「遺伝子情報は個人のプライバシーに関わる極めてセンシティブなものだ。それが臓器狩りという非人道的な目的に使われるなど、あってはならない」と憤りを示した。

公聴会に出席した専門家や議員からは、「中国によるDNA収集の実態解明と、その悪用への対策が急務だ」との指摘が相次いだ。「遺伝情報という個人の尊厳に関わるデータを、強制臓器摘出の道具にするような蛮行は断じて許されない」との声が、議場に響いた。

米議会では、こうした中国の非人道的な行為に対し、超党派で非難の声が上がっている。トム・スミス下院議員は「中国での強制臓器摘出は、バイオテクノロジーという新たな手法を用いた、想像を絶する人権侵害だ」と糾弾。「法輪功とウイグルへの迫害を止めるため、制裁を含むあらゆる手段を講じる必要がある」と訴えた。

また、議会では「中国の移植医療の透明性を高め、国際基準への適合を迫るべきだ」との意見で一致。「中国への渡航移植を制限する法案の早期成立が求められる」との認識も共有された。

さらに専門家からは、「中国との医療分野での連携を見直すことが重要だ」との指摘も相次いだ。「欧米の医療機関は、中国の臓器移植にノウハウを提供してきた面がある。臓器移植に関わる国際学会でも、中国への対応を協議する必要がある」との問題提起がなされた。

議員からは「バイオテクノロジーの発展を歪めたこの残虐行為を、断固として止めなければならない」との決意表明が相次いだ。「法輪功とウイグルへの弾圧を放置することは、人類の良心に対する裏切りだ」

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。